「芸術文化を、大阪から考える」といった際に、まずは大阪、ひいては都市について改めて考えたいと思いました。これはコロナ禍で、わたしたちの暮らしを成り立たせている社会の仕組みや経済について再考するときが来ていると実感したからです。プラネタリー・アーバニゼーション(地球の都市化)という言葉もありますが、わたしたちはロジスティクスというスムーズな流れによって、常に有形無形の商品を消費し続けることで、あるいはリモートを加速させるコミュニケーション技術によって、物理的な出会いがもたらす関係性や、使ったり食べたりしているものの連関への想像力が奪われているようにも思えます。その異様とも言えるスムーズさのなかに、どのように亀裂やひっかかりを見つけ出していくのか。そこから、文化や芸術が醸造されるのだと思います。  今回の特集では、猪瀬浩平さんとの対談では、私たちの生き方や、コロナ禍において顕在化した感染させる/させないの二元論に回収される違和感と、リモートによるコミュニケーションによってこぼれ落ちる「巷」的なひっかかりについての大切な視座と経験を、有家俊之さんにはロジスティクスと反対側にあるものの調達とその楽しみとおいしさを教えていただきました。また、北川眞也さんとの対談で都市のパースペクティブとそのなかで行われている実践をお聞きしながら、いかに私たちは行動できるのかというヒントを与えていただき、合わせて、櫻田和也さんとともに大阪という都市を成り立たせている住之江の物流拠点、港湾地帯をフィールドワークすることで改めて私たちの暮らす都市を実感することができました。一見、つながらないようなこれらの経験や知見は、どこでもすぐにつながれる現在において、私たちに物事を編み直す想像力を与えてくれます。今回、対談やフィールドワークをともにした4者は、みなアーティストだと思います。家成俊勝 Toshikatsu Ienari ー 建築家。1974年兵庫県生まれ。2004年、赤代武志とdot architectsを共同設立。京都芸術大学教授。アート、オルタナティブメディア、建築、地域研究、NPOなどが集まるコーポ北加賀屋を拠点に活動。
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2020.08.18
#ARCHITECTURE#松原

建築設計:MARU。architecture+鴻池組
「読書の森(松原図書館)」

20202月にオープンした松原市民図書館「読書の森(松原図書館)」。水面に浮かぶコンクリートの重厚な外観と自然光を取り入れたスキップフロアによる、これまでにない独創的な図書館になりました。

設計を手がけたのは、高野洋平さんと森田祥子さんが主宰する建築設計事務所「MARUarchitecture」。東京と名古屋を拠点に、文化施設や集合住宅、個人の邸宅など、さまざまな空間を手がけてきたおふたりですが、松原図書館はどのようにつくられたのでしょうか。今回は、高野さんにプロジェクトの裏側をお伺いします。

建築設計:MARU。architecture+鴻池組「読書の森(松原図書館)」
©︎Kai Nakamura
建築設計:MARU。architecture+鴻池組「読書の森(松原図書館)」
©︎Kai Nakamura

ーー水のなかに建つ図書館という構想はどこからきたのでしょうか?

松原市民松原図書館プロジェクトの最大の特徴は、敷地がため池の一画だったことです。この場所に建つ建築は、どのようなものかーー。まずは、まちのコンテクストから考えはじめました。

松原市には、古墳やため池が散在していて、その風景が日常となっています。 古墳は人間の手でつくられた人工物でありながら、長い時間を経ることで、あたかも自然界のものであるかのように振る舞っている。また、まちに暮らす人々も、それをごく当たり前のこととして受けとめて暮らしている。いわば「超人工物」が「超自然物」になっていると考えられます。

ため池の一画に建つ新しい松原市の図書館が、永くまちのなかに立ち続ける姿を想像したときに、この「超人工物」→「超自然物」というイメージがしっくりきました。そこで、私たちは、ため池を埋め立てるのではなく、池のなかに力強く土木的に建つ図書館を構想していきました。

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ーープロジェクトはどんなプロセスで進行していきましたか?

「超人工物」→「超自然物」というコンセプトを考えはじめたときに浮かんだのが、「水から守られた、とても厚みのある土木的な粗いコンクリートの外壁」というイメージです。

これは、事業スキームとの親和性も高いアイデアでした。今回のプロジェクトは、設計事務所と施工会社がひとつの共同企業体として提案するという「設計・施工一体型」の事業スキームで、土木分野も手がける鴻池組さんとの協働。厚く、粗いコンクリートの外壁のイメージには、共同企業体の特性をうまく生かすことができるという感覚もありました。

さらに、アイデアをドライブさせていくにあたっては、構造や環境分野の高度なエンジニアリングが重要だと考え、伊東豊雄さん設計の「みんなの森 ぎふメディアコスモス」なども手がけている、Arupの金田さん、荻原さんと協働することに。施工やエンジニアリングと設計を一体として考えることで、「厚い壁」に、構造的な耐震要素、断熱性能の確保、工期短縮・ローコスト化などの多重の意味が重なっていくと同時に、厚い壁がさまざまな機能を負担することによる「自由で立体的な内部空間」、ため池や周辺環境を生かした「光や風をとりこんだ空間」といった建築の構成が次々に浮かび上がってきました。

水のなかに建つ図書館というイレギュラーにも思われる提案でしたが、結果、公募型プロポーザルで最優秀をいただき受託。設計から竣工まで約2年という、公共図書館としてはかなり短い期間のプロジェクトだったものの、コンセプトをクライアントと強く共有できたことで、ブレることなく建築の実現に至りました。

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    ©︎Kai Nakamura
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    ©︎Kai Nakamura
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    ©︎Kai Nakamura
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    ©︎Kai Nakamura

ーープロジェクトのなかで苦心したのはどんなところですか?

やはり、コストや工期が非常に限られていたことです。今回のプランは、コンクリート壁の造形や素材感が重要なポイントでした。限られた要素でつくっていくにあたって、設計・施工チームが一体となって取り組めたことが、実現の鍵になったと思います。

 

ーープロジェクトを振り返って、記憶に残るエピソードはありますか?

なかなか、赤裸々にはお伝えできないのですが(笑)。プロジェクトメンバーのなかでは、たくさんのぶつかり合いがありました。もちろん辛い面もありましたが、互いに「ものづくり」という目標が共有できていたので、ぶつかり合いがものを良くする方向に向かったと思います。今回は大阪での仕事でしたが、土地柄もあり、思いの丈をぶつけながら理解し合うことの大切さを学びました。

建築設計:MARU。architecture+鴻池組「読書の森(松原図書館)」
©︎Kai Nakamura
建築設計:MARU。architecture+鴻池組「読書の森(松原図書館)」
©︎Kai Nakamura

ーーこれから図書館のなかでどんな光景が見らることを想像していますか?

竣工後に印象的だったのは、建築を通して、日常の風景や自然の移ろいが、意識化される感覚です。窓の外の、水のゆらぎ、自転車で行き交う人々、光の移り変わりなど。

動物で言えば「ゾウ」のように雄大な存在としての図書館が、まちの日常のなかで永い時間をゆっくりと刻んでいく存在になることを願っています。

「読書の森(松原図書館)」施工時の様子

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    2019.01 工事前に池の魚を捕まえる
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    2019.02 RC外壁の試作品
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    2019.05 斜めの外壁が立ち上がる
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    2019.07 何度も手摺の試作品をつくる。写真中央が高野さん
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    2019.07 外壁の細部を決定する
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    2019.07 1F現場内観
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    2019.09 毛細血管のような床配管
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    2019.10 1F現場内観
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    2019.11 外観竣工直前

「読書の森(松原図書館)」

竣工:2019年12月
所在地:大阪府松原市
施主発注者:松原市
構造:RC造一部S造
規模/面積:地上3階延床2,987.33㎡
共同設計:鴻池組
構造設計/電気設備設計/機械設備設計/照明デザイン:Arup
サイン計画:MARUYAMA DESIGN
植栽計画:GAヤマザキ
図書館計画支援:アカデミック・リソース・ガイド
施工:鴻池組
写真
撮影:中村絵

松原市民図書館「読書の森(松原図書館)」http://www.trc-matsubara.jp/

松原市田井城3-1-46
072-334-8060

営業時間:9:00〜21:00
定休日:3月・8月・12月をのぞく第3木曜日、年末年始

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