関西を中心に活動するももちの世界が、2021年7月にリニューアルした新生インディペンデントシアター2ndの杮落しシリーズとして、9月に新作『華指1832』を上演する。
本作は、上演時間1時間45分のうち、9割が日本手話で演じられ、出演する聴覚障害者、手話通訳士たちとともに試行錯誤しながら演出に取り組んだものである。あらすじは下記のとおりで、日本手話が第一言語でない人にも内容を理解してもらえるよう、全編に字幕が付けられるという。
京都駅から南東に伸びる京阪沿線の高架下に、ポツリと佇むダイナー「water lily」。経営者の桐野京子は、コーダである20歳の息子、ひかると静かに暮らしていた。
ある日、ひかるは恋人である森田優子をダイナーに連れてくる。すぐに意気投合する京子と優子であったが、次第に、優子に隠された過去が明らかになる。
COVID-19が猛威を振るう中、宙に描く、あなたの指先が燃える時、悲劇が起こる。(ももちの世界Webサイトより引用)
2021年9月現在、本作の予告編が3編公開されているが、1つ目の動画には、音楽が流れる商店街のなかを歩きながら話している2人が登場する。字幕には、関西弁のやりとりが綴られる。手話がわからない筆者は、その字幕と2人の身振り、表情からその状況、語られる内容を推察することになる。その日の晩御飯の話をする和やかな様子は伝わるが、手話でなされたコミュニケーションの細かなニュアンスは、もしかすると字幕に翻訳されたものとはまた異なるのかもしれない。画面上の俳優は目の前にいる俳優に手話で語りかけ、その感情を伝え合うが、私は手話という言語で伝え合う世界の外側に立つような感覚をおぼえる。
一方で、手話劇ではない演劇の「伝えられる範囲」はどこまでなのかとも想像した。声を発する演劇のなかにおいても、交わされる対話シーンの台詞の意味を理解できなかったと思うことはある。どんな演劇でも、その劇世界を十全に理解できるかはもちろんわからない。では、私たちはなにを体験したくて、演劇を観に行くのか。手話によって紡ぎ出される会話劇、指で表現される感情の機微に、そのヒントが見出せるかもしれない。
※日本手話/日本語字幕 上演
日時:2021年9月9日(木)~13日(月)
9日(木) 19:00※終了
10日(金) 14:00、19:00
11日(土) 14:00(完売)、19:00
12日(日) 11:30、15:30
13日(月) 14:00
全8ステージ予定(2021年9月8日現在)
※詳細はももちの世界Webサイトを参照料金:事前予約 3,300円、障がい者割引 2,500円、U-25(25才以下割引)2,500円、当日 3,500円
チケットぴあにて発売中
Pコード|506-795
こりっちチケットにて発売中
問合:momochinosekai@yahoo.co.jp作・演出:ピンク地底人3号
出演:岡森祐太、木下健(短冊ストライプ)、しもさかさちえ、中村ひとみ、橋本浩明、薮田凛、山口文子、白木原一仁(プロデュースユニットななめ45°)
※必要に応じ、事前に戯曲データを無料で送付。問合先へメールにて要申込
※車椅子、補助犬ユーザーの方、妊娠されている方、怪我をされている方などへ、出入りのしやすい座席を確保。詳細は問合先へ
in→dependent theatre 2nd
大阪市浪速区日本橋4-9-5