関西を拠点とする演劇創作ユニット、極東退屈道場の新作公演『コンテナ』が、山本能楽堂で2023年6月9日(金)から11日(日)にかけて上演される。過去作『ジャンクション』『LG20/21クロニクル』『クロスロード』でも描かれた、どこか大阪のような架空の水没都市(ソコハカ)にまつわるアナザーストーリーである。
今回は、その「ソコハカの町」の向かいに浮かぶ小さな島=夢洲が舞台。夢洲の「洲」は「しま」と読み、舞洲、咲洲とともに埋め立ててつくられた人工の島である(極東退屈道場は、2014年にもフンデルトヴァッサー建築の舞洲スラッジセンター[下水汚泥処理場]、ゴミ処理場を中心的に取り上げた『ガベコレ』も上演している)。
夢洲は長く荒廃したままで、中央に広い駐車場のコンビニエンスストアがたつのみだった。北側は荒れた湿地が広がり野犬の姿も見えるが長く放置された功罪か多くの野鳥や昆虫の生息場所となっている。
一転、南側は堆くコンテナが積み上げられたターミナルがある。コンテナは20世紀最大の発明と言ってもよく、物流に革命を起こしグローバリゼーションにはなくてはならないものとなっている。コロナ禍でのコンテナ不足による混乱も記憶に新しく、コンテナの荷動きそのものが世界経済の推移と連動して行っているとも過言ではない。世界共通の規格であることは、輸送以外の使用への転用にも便利で仮設住宅やホテルなどでも使われている。カラオケボックスの始まりがコンテナであったことを記憶する人も多いだろう。あの規格化された箱の中には、多くの物語が詰まっている。港湾都市、砂上都市”大阪”を、このコンテナの目線から記録してみようと思っている。奇しくも、負の遺産として長く放置された島は、万博、IRというビッグマネーを利用して強引に蘇生させられようとしている。積み上げられたコンテナの向かい側に立つ、パビリオン。その言葉の語源は仮設建設である。
(極東退屈道場『コンテナ』特設サイトより)
大阪はかつては難波潟と言われ、和歌にも詠まれるように葦の群生する海であった。会場は『クロスロード』と同じ山本能楽堂であるが、能の道行のようにして、シテがたどり着くのはコンテナという、異質なものが積み上げられた湿原のコンビニエンスストアとなる。能であれば、ここに鬼が現れるのだ、とはっきりわかるように、異形の者が現れ、「何かが起こる」予感のする景色が広がる。極東退屈道場の、今が現在なのか過去なのかわからなくなる世界線の上で、俳優たちがどのように能楽堂の空間に立ち現れるのか楽しみだ。
なお、新たに新設された、劇団のLINEアカウントでは、新作『コンテナ』に関連する、観劇の前に見ておきたい情報を定期配信している。ぜひ登録してみてほしい。
期間:
2023年6月9日(金)19:00
6月10日(土)14:00
6月11日(日)14:00会場:山本能楽堂
料金:一般前売3,500円、一般当日4,000円、ペアチケット6,000円、ユース割引(22歳以下)2,000円、2回目以降の観劇0円(要事前予約)
※日時指定・全席自由予約:
カルテット・オンライン(当日受付精算)
カンフェティ(別途手数料有。予約前にチケット購入サイト「GETTIIS」への無料会員へ要登録)作・演出:林慎一郎
出演:石原菜々子(kondaba)、小竹立原、加藤智之(DanieLonely)、桑折現、小坂浩之、橋本浩明舞台美術デザイン:柴田隆弘
照明:魚森理恵
音響:あなみふみ
舞台監督:古谷晃一郎
衣装:大野知英
宣伝デザイン:酒井昌子
WEBデザイン:佐藤由典制作協力:さかいひろこworks
制作:奈良歩主催:極東退屈道場
助成:芸術文化振興基金助成事業
共催:公益財団法人 山本能楽堂問合:極東退屈道場(090-1248-1838[ハヤシ]/askto@taikutsu.info)
大阪市中央区徳井町 1-3-6