古来より奄美群島では海岸に流れ着いた漂着物のことをユリムン(寄り物)と呼ぶ。
海の彼方の理想郷、ネリヤカナヤから豊穣や豊漁がもたらされるという信仰があるそうだ。
ユリムンはネリヤカナヤの神からの贈り物とされてきた。流木や椰子の実などに加え、時には鯨なども流れ着いたという。古代は自然由来のものだけだったが、現代はプラスチックなど海洋汚染の原因となる様々な物も流れ着く。いわゆる漂着ゴミが豊穣の贈り物になったとすれば何とも皮肉なものだが、それでもあらゆるユリムンから美を見出し価値観を創出できる感性は人類の宝物だと言える。
ひと昔前まではビーチコーミングという言葉は日本では一般的ではなかったが、
近年は漂着ゴミで美しいランプなどを作ったヨーガン・レールなどの影響もあって、
多くの蒐集家や芸術家が漂着物を用いて各々の視点で海の恵みを活かし始めた。
ここでは漂着物を扱いながら創作を続ける新しい世代の作家たちをご紹介したい。
漂着物は偶然に出逢う一期一会の存在である。
その日その海でその時間に各々の審美眼で選んだ物が蒐集され手を加えられる。
それを加工する技術はもちろんだが、何より出逢う技術も大事な要素なのだ。
そんなユリムンに魅せられた作家たちが集まったこの場もまたユリムンであり、
ここにご来場いただく皆様もまたユリムンだと言える。
海から放たれた出逢いの連鎖が、ここでまたそれぞれの生活の中に光を放ちますように。gallery yolcha イルボン
会期:2023年9月2日(土)〜24日(日)
会場:gallery yolcha FLAT space
出展:石好きだ|雨氣|guse ars|Boku.|MITSUHOSHI(五十音順)
時間:13:00〜19:00(日曜のみ12:00〜19:00)
休廊:火〜木曜、9月9日(土)
料金:yolcha運賃制(300円で乗車券を購入/同金額分カフェ利用可)
大阪市北区豊崎1-1-14