いにしえの人たちの死生観に思いを馳せ、形づくる新たな境地-
初挑戦となる版画や立体作品にも注目! 黒宮菜菜の新作展主に人物像をモチーフとして、流動性の高い画材によって作られる油彩作品と、重ねた和紙に染料を滲ませて描く紙作品、いずれも独自に研究を重ねた2タイプの技法を使い分けて作品を制作し、その独創的な技法と幻想的な作風で注目を集めている画家、黒宮菜菜。
コントロールのしにくい画材を敢えて使用し、さらに描画を加えることでイメージの曖昧さを現実に引き寄せる描き方は、その綱引きのような微妙な行為自体が作品のコンセプトとも繋がっています。画中に現れる透明で不確かな輪郭となった身体像を通して、私たちは日常の知覚や認識の希薄さ、曖昧さに気付かされるだけでなく、そこに「曖昧な世界」のリアリティを感じ取ることが出来ます。
近年は日本の神話や古代史などからインスパイアを受け、そこから人間の死生観や自然との関わりをテーマとした作品制作に取り組んでいる黒宮。技法の変化としては、これまで油によって絵具にもたらされた流動性から、前回2022年の個展からは、蜜蝋を用いた物質の封印という表現が新たに現れています。
今回の展覧会では、「たま(たましい)」という抽象度の高いイメージを題材に、技法的にはより画面上を重層化させた物質性の強い作品制作にチャレンジしています。描かれたイメージは、蜜蝋や分厚い絵具層の中でおぼろげに抽象化され、象徴としての”うつわ”を得て、再び眼前に表出します。ドライフラワーなどの物質が積層された作品は、視覚/触覚の境界を越えて見る人に忘れ難い印象を与えるでしょう。
また今展では、ノマルの工房とのコラボレーションで自身初の版画作品に挑戦。さらには立体作品の制作も試みるなど、見どころ満載の展覧会となります。
同時期の12月9日からは尼崎市(兵庫)のアートスペース「A-LAB」で大規模な個展を開催中(〜1月28日(日)まで)。近年高まる評価にも驕らず、新たなイメージの獲得や様々な技法へのチャレンジと合わせて、精力的に活動を続ける黒宮菜菜の新作展。ぜひともご高覧くださいますよう、よろしくお願いいたします。
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Artist Statement
「たま」とは、簡単にいうと霊魂のことで、近現代では「たましい」と同義の意味で使われます。もともと、「たま」と「たましい」には別の意味があり、使い分けされていたようですが、その違いについては未だいろいろな見解があり完全には解明されていないもののようです。ですが、「たま」も「たましい」も霊魂や神といった非常に抽象的な概念に関わる言葉として広義に捉えられ、日本で古くから使われてきました。
「たまのうつわ」は、そういった「たま」、もしくは「たましい」が寄り来るもの(容れ物)ということをあらわしています。眼で見ることのできない抽象的なイメージである「たま」を内包する容れ物とはどのようなものか。それを具体的な形で表現するとしたら、わたしはどのように描くだろうか。古代の遺跡や考古学、民俗学のテキストなどをインスピレーションの源流に、形、色、情景、マテリアル、さまざまな観点からわたしなりに模索していきます。
黒宮菜菜
(Webサイトより)
会期:2023年12月23日(土) ~2024年1月27日(土)
時間:13:00 ~19:00 ※1月13日(土)のみ13:00~18:00
休廊:日曜、祝日、12月29日(金) ~ 1月8日(月・祝)
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関連プログラム
“Utsunomia MIX – 004「森の創造物」+ 005「HUMANKIND」ダブルレコ発Live!”
日時: 2024年1月13日(土)19:00開場、19:30開演
出演: sara (.es), piano, perc.
ナカタニタツヤ tatsuya nakatani from USA, perc.
大友良英 Otomo Yoshihide, guitar
磯端伸一 Shin’ichi Isohata, guitar
ゲスト:美川俊治 T.Mikawa, electronics料金:前売 5,000円、当日5,500円.(アルバム2枚付き)
定員:40名、要予約
※予約はこちら または 06-6964-2323
大阪府大阪市城東区永田3-5-22