
此花区梅花のシェアスペース「旭荘」1階のギャラリースペース「ASAHISONOMA」にて、韓国のグラフィックデザインスタジオ・Shin Shinによる個展が開催される。
Shin Shinのデザイナーである、シン・ヘオクとシン・ドンヒョクが、それぞれ異なるメディアを用いた作品を制作・発表する。
シン・ヘオクは本という構造のなかでテキストとイメージ、ページと空間が交差する瞬間を織りなし、その内なる関係性を探究している。読んだり見たりしたものを収集し並べなおす彼女のデザイン方法論は、本を用いて事物とコンセプト、視覚と言語の絡まり方を探究することから繰り広げられる。朗読パフォーマンス、インスタレーション、本から成る〈이음말 渡り言葉 Catchword〉は、ジョン・ロックの『備忘録の新方法』(1706)の英文初版を翻案したものである。この本でロックは、コンセプトと情報の体系的な収集法・整理法を提示し、知の記憶法・活用法とその可能性を考察している。シン・ヘオクは、ロックによる収集方法論を模倣と解釈の素材としてとらえ、翻訳し書き直す。さらに、キーワードを新たに収集し書き加えることで、朗読と動きのヒントにしている。最後まで続く空白のページは、この先に書かれる備忘録のために残された空間である。
シン・ドンヒョクはデザインの歴史や様式、慣習や由来を探究し、伝統的なデザインに由来する物質性と物理的条件を試行錯誤している。本展では、視覚情報を伝えるもっとも古いメディアであるポスターに注目する。ポスターによるインスタレーション・シリーズ〈12색 선언문 12色宣言文 12 COLORS MANIFESTO〉では、印刷術の発達とポスターのはじまり、韓国社会の時代を象る標語と絵画教育を再考し、ポスターの未来のあり方を考える。展示では、ポスターカラーの基本12色に各々異なる立体性が与えられ、特定の場所においてポスターが物理的に機能する条件を提示している。
シン・ヘオクとシン・ドンヒョクは2014年からグラフィック・デザイン・スタジオ「シンシン」を共同運営しており、デザインが考え方に結び付く可能性をこれまで試行錯誤してきた。二人の作品が一緒に公開される本展では、本とポスターという互いの探究対象をクロスさせることで、「シンシン」としてのこれまでの活動と個別の作品がどのような接点を持ちうるかが明らかになるだろう。
二人の制作は、それぞれ個人的な経験に由来する。シン・ヘオクは幼少期、弟と本を一緒に並べながら橋を作ったことが思い出に残っている。シン・ドンヒョクは、はじめてポスターというものにふれて、自分で描いてみたあの頃を回想する。二人の記憶は、本とポスターに初めてふれた感覚的体験をそれぞれ物語っており、会場ではこの二つの素材を中心に展示が構成される。シン・ドンヒョクのポスターは壁と柱にそってインストールされ、シン・ヘオクの本は床と読者の手に渡り、朗読パフォーマンスへつながる。一つの空間に、二人はそれぞれ別の流れを作り出す。本の読まれ方とポスターの見せ方、記録と印刷の形式、静止した構図とフレキシブルな解釈がクロスする。それによって、本とポスターは互いを照らしあい、広く展開される動きを生み出すようになる。
(イ・ミジ)
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プロフィール
신해옥 シン・ヘオク SHIN HAEOK
グラフィック・デザイナー。本という構造のなかでテキストとイメージ、ページと空間が交差する瞬間を織りなし、その内なる関係性を探究している。2014年からシン・ドンヒョクと共同でグラフィック・デザイン・スタジオ「シンシン」を運営しながら、デザインが考え方に結び付く可能性を試行錯誤している。本を用いて事物とコンセプト、視覚と言語の絡まり方を探究し、その方法を大学で学生たちと一緒に意見交換している。신동혁 シン・ドンヒョク SHIN DONGHYEOK
グラフィック・デザイナー。2014年からシン・ヘオクと共に「シンシン」の名義で活動している。グラフィック・デザインの歴史や様式・慣習・伝統・理論を素材ととらえ、「今ここ」の文脈に適したアウトプットとして書き換えてゆくことに興味を抱いている。
신해옥 シン・ヘオク Shin Haeok
이음말 渡り言葉 Catchword신동혁 シン・ドンヒョク Shin Donghyeok
12색 선언문 12色宣言文 12 COLORS MANIFESTO会期:2025年4月4日(金)〜5月11日(日)
会場:ASAHISONOMA ※窓から覗く鑑賞方法
時間:10:00〜21:00
※4月4日(金)・5日(土)にオープニングパフォーマンスを実施予定。詳細は後日発表 https://www.instagram.com/asahisonoma/
※本展は、福岡の本屋青旗でも同時期(4月1日〜22日)に開催
大阪市此花区梅香1-15-8