
無理せず続けるには。
自分を忘れずに暮らすには。そんな問いを胸に、この催しをひらきます。
展示やパフォーマンスを眺めながら、誰かが手を動かしていることや、自分のすぐそばにあるものごとに、ふと目が向くような時間になればと思います。
ただ観に来るのではなく、そっと見つけ出されるような、そんなひとときを。珈琲とおやつと一緒にお待ちしています。
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企画によせて
今回の―暮らし的創造、その延長「円と周」―は、シンバル演奏者であり日本図案館、四三館の管理人でもある山田さんと岡本さんと話していた時に生まれた企画で、その後、アニメーション作家である午菴クルミさんとの雑談の中で実現が決まりました。良いものを拵えている芸術家はいつも変わらず至るところに存在して、ただ孤立しているだけというのが今の私の考えです。今回の企画ではそういう人たちとゆるやかな繋がりをもつことが目標です。チームみたいなものは苦手だけど、存在を認識し、何かしら共有できる関係をつくりたいです。また、内輪になりがちなコミュニティではなく、ジャンルを横断しながら他の世代とも繋がれたらいいなと思っています。
同世代の多くが仕事に追われる中、私たちは制作を続けています。しかし、制作を続けるためには生活の延長線上にない労働が必要な場合もあると実感しています。制作には色んな面で余裕が必要ですから、生きていくためには兎にも角にもお金を稼がなければなりません。そのような環境でも無理せず続けるにはどうすればいいのか。そして自分の存在を忘れず生活していくにはどうすればいいのか。そんなことを考えながら、催しを行ないます。来場者の方々も一緒に、この催しを外側から見つめる存在としてではなく、自分がその場所でなんとなく見つけられている存在として、珈琲とおやつを片手に空間を共有できたらと思います。(五月女侑希)五月女侑希さんとは『円と周』が開催されるちょうど一年ほど前に出会った。
きっかけは、私が作品につける音を作ってくれる人を探していたところ、友人が五月女さんを紹介してくれた、というものだ。
何はともあれまずは相手のことを知りたい。大阪からわざわざ横浜に足を運んでくれた彼女と街中を隣に並んでおしゃべりしながら、長い距離を歩いた。
「制作や活動をずっと続けるためにはどうしたらいいのか。」よくある問いだけど難しい。思えばアニメーションという技法を選んだのも「なんかこれなら続けられそうだな。」という感じだった。そこからずっと「作り続けるための、”わたしなりの方法”とは何か?」ということについて考えている気がする。今回の催しはその考えを試すための場でもあり、いわば途中段階にある。
内輪の狭い世界に留まらないこと。アートが一部の人の特殊な出来事ではなく、とても身近な存在であることを忘れないこと。生きるためにも、制作をするためにもお金が必要であること。
今回の催しではそこに焦点をあてて、他ジャンル間の横断や、いわゆるギャラリーではなく社宅という空間を使うこと、無料ではなくお金をしっかりもらうことを挑戦としている。
家の中で、絵が飾られていたり、映像が流れていたり、楽器を演奏したり、あるいは人が動いていることは、特別なことのようには不思議と感じない。今回のさまざまな領域を包み込んでくれるうってつけの場所だ。家の中には生活を立てていくための衣食住があり、そこで人が暮らしている。私たちのそれぞれの活動は、生きるために必要なことではないけれどその延長線上にあると考えている。
この住居の中で、ある人は、衣服を繕う/絵や映像を鑑賞する/コーヒーを飲んだりお菓子を食べる/楽器を演奏する/悠々自適に身体を動かす/本を読む。奏でられた音楽や建物に響く足音、話し声、擦れた音はモノとモノの間を満たしていく。こうして聞くとアートは日常にあたかも溶け込むかのようなものごとに感じることができるのではないだろうか。
五月女さんと2人で横浜の街を歩いたあの時から、たった1年でこんなに盛りだくさんな催しになっており、いつの間にか人の数も増えていた。どうなるんだろうという不安と楽しみが胸の奥でギュッと共存している。
最後に、今日この建物へ来てくれた人へとりあえず「いらっしゃい」という言葉でこの空間を共有したい。
私たちの、日々行っている活動で彩られ装飾されたこの家の中で、私たちが向いている方向を一緒に見てくれたら、幸いです。
(午菴クルミ)
暮らし的創造、その延長『円と周』
日時:2025年5月3日(土・祝)〜5日(月・祝)14:00〜18:00
会場:四三館
参加作家:
空函出版(五月女侑希/五月女桜子/長谷川彌)
午菴クルミ(アニメーション)
寺平花(ドローイング/油絵/オブジェ)
大喜多馨(文芸)
蛭田絵里香(パフォーマンス)
川島瑠保(版画)ゲスト:
零度の珈琲(喫茶)
日本図案館(展示)
七円体(シンバル演奏)チケット:一般4,000円(当日4,500円)※おやつと珈琲付
※予約フォームはこちら
大阪市浪速区戎本町2-1-20