本特集の共同編集者である家成俊勝さんが、この特集に寄せておすすめの本・音楽・映画を紹介。各記事を読む前、読んだ後に、ぜひあわせて楽しんでもらいたい。
BOOKS
ジェントリフィケーションと報復都市 新たなる都市のフロンティア
「都市開発」や「都市再生」の取り組みとして認知が広がるジェントリフィケーション。本書は、都市への投資とその引揚げがもたらす機制を理論的に解き明かすと同時に、世界各地の事例を取り上げた、21世紀の「都市開発」の光と闇に迫るジェントリフィケーション研究の古典的一冊。都市がどういう力学のもとに形成されていくかを知ることで、私たちが住んだり、働いている場所の見え方が変わるかも。(家成)
『ジェントリフィケーションと報復都市 新たなる都市のフロンティア』
ニール・スミス 著、原口 剛 訳 ミネルヴァ書房(2014)
ウォールデン 森の生活
湖畔に自ら建てた小屋で自給自足し、わずか44歳でこの世を去った孤独な思考家、ヘンリー・ソロー。彼が100年以上前に書いた本書は、現代社会の危機と人間の生き方を示唆し、今わたしたちにとって大切な生活の実践を教えてくれます。本特集の取材で山中を歩きながら、日々、何時間も森を歩いたソローの思考世界に思いを馳せました。(家成)
『ウォールデン 森の生活』
ヘンリー・ソロー 著 原著:『Walden; or, Life in the Woods』Ticknor and Fields(1854) 翻訳:小学館文庫(今泉吉晴 訳)、岩波文庫(飯田実 訳)、講談社学術文庫(佐渡谷重信 訳)ほか
MUSIC
Solo Monk
異端とも言われたジャズ・ピアニスト、セロニアス・モンクの1964〜65年に録音されたソロアルバム。本特集で「capitolo3:l’arca(キャピトロ・トレ:ラルカ)」のオーナーシェフ・有家俊之さんが、自然の強さをシンプルに味わう一皿に添えてくれたBGMです。一台のピアノがつくり出す、都会の夜のような音の重なりを、本特集で観察した都市の地層に重ね合わせて聞いていただけたら。(家成)
「Solo Monk」
セロニアス・モンク
Columbia/Legacy(1965)
nova musicha. n.1 JOHN CAGE
イタリアの名門クランプス・レーベルによる前衛音楽シリーズ「nova musicha」。第一弾としてリリースされたのが、現代音楽の巨匠、ジョン・ケージのベスト盤とも言えるこの1枚。イタリアン・ミュージックを代表するアーティストたちによる、トイ・ピアノやサンプリングを用いた5つの楽曲が収録されています。ジョン・ケージはきのこ研究家でもありました。ケージときのこの即興性が、森や経済、都市のなかを生き抜いていく知恵を授けてくれるかもしれません。(家成)
「nova musicha. n.1 JOHN CAGE」
Cramps Records Imp(2002)
MOVIE
ある船頭の話
明治期から大正期、山あいの農村にも文明開化の波が押し寄せるーー。柄本明演じる主人公は、村と町をつなぐ渡し舟を生業とし、変わりゆく村を複雑な心境で見守ります。ひとりの船頭の目を通して、都市の移り変わりを淡々と描く本作。近代化によって手放されたものを再び現前させるかのようです。(家成)
「ある船頭の話」
脚本・監督:オダギリ ジョー 撮影監督:クリストファー・ドイル 衣装デザイン:ワダエミ 音楽:ティグラン・ハマシアン 製作総指揮:木下直哉 制作プロダクション:RIKIプロジェクト 配給:キノフィルムズ/木下グループ 制作・公開年:2019
『ある船頭の話』Blu-ray&DVD発売中
Blu-ray:5,800円+税 DVD:3,800円+税 発売元:キノフィルムズ/木下グループ 販売元:キングレコード