本特集では、ドキュメンタリーとフィクションの関係やその境界について向き合いました。それは、「事実」「作為」「理解」というような言葉の定義や、それらに付随する葛藤の輪郭をなぞっていくような作業であり、あらためてドキュメンタリーとフィクションの境界というものがいかに流動的で、相互的関係にあるかを感じています。 人が食べるという行為をインタビューを通して観察・分析してきた独立人類学者の磯野真穂さんとの対談では、他者を理解することについて言葉を交わしました。また、現代フランス哲学、芸術学、映像論をフィールドに文筆業を行う福尾匠さん、同じく、映画や文芸を中心とした評論・文筆活動を行う五所純子さん、そして、劇団「ゆうめい」を主宰し、自身の体験を二次創作的に作品化する脚本&演出家・池田亮さんの寄稿では、立場の異なる三者の視点からドキュメンタリーとフィクションの地平の先になにを見るのかを言葉にしていただきました。 対岸の風景を可視化していくこと、まだ見ぬ世界を知覚すること、その先に結ばれた像が唯一絶対の真実から開放してくれることを信じて。そして、今日もわたしは石をなぞる。 小田香 Kaori Oda ー 1987年大阪生まれ。フィルムメーカー。2016年、タル・ベーラが陣頭指揮するfilm.factoryを修了。第一長編作『鉱 ARAGANE』が山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波部門にて特別賞受賞。2019年、『セノーテ』がロッテルダム国際映画祭などを巡回。2020年、第1回大島渚賞受賞。2021年、第71回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。
News
2021.02.18

大阪府・市が文化振興計画案へのパブリックコメントを実施中。
2021年度から5年間の文化政策の方向性や具体的取組について意見募集。

文: 北村智子[paperC運営事務局]

2021〜2025年度の大阪府・市の文化政策の方向性を決定する、「第5次大阪府文化振興計画(案)」ならびに「第3次大阪市文化振興計画(案)」が公表された。2021年3月8日(月)まで、一般(府民・市民以外も可)からの意見・提案を募集するパブリックコメントを実施している。

両計画は、学識経験者、芸術文化の専門家などにより構成される大阪府市文化振興会議からの答申を踏まえて策定される。「目指す将来像」や「基本理念」、「施策の方向性」は府・市で共通。
「目指す将来像」は、『「文化共創都市 大阪」~文化芸術が未来を切り拓く~』とされ、行政のみならずさまざまな立場の人々が、大阪の文化芸術を「共に創る」点が強調されている。
「施策の方向性」としては、「文化にかかわる環境づくり」「文化が都市を変革する」「文化が社会を形成する」の3つを提示。それぞれに沿って大阪府と大阪市が具体的な取組を提案している。

新型コロナウイルス関連の施策については、大阪府は具体的な取組として、「活動場所や出演の機会を創出するなどの継続的な支援」、「新型コロナウイルスの影響下でも実施可能な、ICT技術を活用した文化芸術活動の普及」などを挙げている。
大阪市は、具体的な取組としては記載はないが、大阪市を取り巻く状況の1つに「新型コロナウイルス感染症」を挙げ、「今一度、文化芸術の役割を再認識し、その価値をより一層高めていくとともに、地域の文化力の向上や、観光、まちづくりなど、関連する分野における施策との有機的な連携を通じて、都市全体の魅力のさらなる向上を図る必要がある」などと記述している。

また前回の計画にはなかった要素として、大阪・関西万博に向けた取組も組み込まれた。
大阪府の計画案では「文化芸術活動を通じて、大阪と国内外の様々な文化や歴史、言語、習慣などが交流する機会を創出し、他文化理解、異文化交流の促進に取り組む」としている。
一方の大阪市は、①大阪の文化資源を活用した観光振興や地域経済の活性化につながる取組み、②産官学民が連携して芸術文化の多様な価値を高める取組み、③大阪の歴史と文化が集積するエリアからの芸術文化の発信・交流、の3項目を挙げている。

今回の計画案作成に携わった、大阪府市文化振興会議委員で大阪アーツカウンシル統括責任者の中西美穂氏に話を聞いた。

中西:はじめにひとこと、本計画は、大阪で文化芸術活動をする皆が、これをもとに方針を確かめ、受け身にならずに、主体的に、対話や議論を重ねて、大阪の文化に関わっていくためのガイドブックです。どうぞこのガイドブックを発行するにあたって、これでいいのか、ここはもっと伸ばして欲しいのか、ここはどうして欲しいのか、など、「パブリックコメント」という仕組みを通して、意見を届けていただきたいと思います。

 

ーー今回の計画策定にあたって、どのような点を重視しましたか?

中西:これまで11年間使っていた「文化自由都市、大阪」という、自由という意味から問い直さねばならないちょっと抽象的なテーマから、「文化共創都市 大阪」にビジョンを変更しました。府民・市民、芸術家、文化団体、企業、行政、その他の大阪に関わる全ての人々と「共に創る」という意味です。

今回は文化芸術基本法が改正されてから初めての計画なので、改めて基本法にある地方公共団体の責務をしっかりと押さえつつ、府条例、市条例の内容と関連させました。新しい文化に関する法律(障害者による文化芸術活動の推進に関する法律)にも十分に留意しました。

また、広域自治体の大阪府の役割と、基礎自治体の大阪市の役割の違いも明確にしています。具体的には、大阪府は広域自治体であり府文化振興条例にあるとおり「市町村連携」の役割があります。また市は基礎自治体として文化芸術活動に寄り添い、かつ都市機能を充実させるような独自色を出して行けばよいと考えています。

 

ーーコロナ禍は大阪の文化芸術関係者にも大きな影響を与えていますが、その点は今回の計画にどのように反映されていますか?

中西:大阪府、大阪市ともに、策定にあたっては「新型コロナウイルス感染症」の項目を設けて実情を明記しました。これはつまり、計画全体にコロナの実情を考慮する前提ということです。
引き続き、コロナの感染状況を踏まえつつ、文化振興と感染対策の両立を図り、大阪にある多彩で豊かな文化芸術の灯が途絶えることがないよう、必要に応じて柔軟かつ迅速な施策の推進に積極的に取り組むこととしています。
具体的な点については、例えば、調査(*)等で必要性が指摘された文化芸術に関するワンストップ窓口について、大阪府立江之子島文化芸術創造センターにおいて、その機能を確立すると明記しています。
大阪における文化芸術関係者への新型コロナウイルスの影響に関する実態調査

 

ーーこの計画の期間内に大阪・関西万博が開催される予定ですが、大阪府・市の文化施策として万博に向けた具体的な事業のイメージはあるのでしょうか?

中西:まず、大阪の文化も含む大きな都市魅力の創造・発信に関する計画に「大阪都市魅力創造戦略2025(案)」(現在パブリックコメント実施中)があり、そちらに「文化芸術を創造し、支える人材の育成・支援」や「文化芸術拠点の充実や機能強化」なども盛り込まれています。具体的な事業は未だ決まっていないので、ぜひ今回のパブリックコメントでご提案いただければと思います。
以前、万博推進の中心になる公益社団法人2025年日本国際博覧会協会がアイディア募集等を行っていましたが、積極的に問い合わせるなど、府民や市民、芸術団体の側から動いてもいいのではないでしょうか?
※参考:People’s Living Lab促進会議 万博会場で実現したい「未来社会(技術・サービス)」アイデア提案集の公開 https://www.expo2025.or.jp/news/news-20200217-02/

 

ーーパブリックコメントで提出した意見は、どのように扱われますか?計画の内容を変えることもできるのでしょうか?

中西:大阪府、大阪市とも、いただいたご意見とそれに対する考え方等については、府・市のホームページ等により一定期間公表します。
重要な案件については検討する可能性があります。コメントが何もなければ、計画案に同意したということになります。ぜひ忌憚ないご意見を、そしてあなたの大阪のアートに関する夢を、大阪の未来のためにお寄せください。

大阪府「第5次大阪府文化振興計画(案)」パブリックコメント

http://www.pref.osaka.lg.jp/bunka/bunkashinkoukeikaku/index.html

 

大阪市「第3次大阪市文化振興計画(案)」パブリックコメント

https://www.city.osaka.lg.jp/hodoshiryo/keizaisenryaku/0000370808.html

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