本特集では、ドキュメンタリーとフィクションの関係やその境界について向き合いました。それは、「事実」「作為」「理解」というような言葉の定義や、それらに付随する葛藤の輪郭をなぞっていくような作業であり、あらためてドキュメンタリーとフィクションの境界というものがいかに流動的で、相互的関係にあるかを感じています。 人が食べるという行為をインタビューを通して観察・分析してきた独立人類学者の磯野真穂さんとの対談では、他者を理解することについて言葉を交わしました。また、現代フランス哲学、芸術学、映像論をフィールドに文筆業を行う福尾匠さん、同じく、映画や文芸を中心とした評論・文筆活動を行う五所純子さん、そして、劇団「ゆうめい」を主宰し、自身の体験を二次創作的に作品化する脚本&演出家・池田亮さんの寄稿では、立場の異なる三者の視点からドキュメンタリーとフィクションの地平の先になにを見るのかを言葉にしていただきました。 対岸の風景を可視化していくこと、まだ見ぬ世界を知覚すること、その先に結ばれた像が唯一絶対の真実から開放してくれることを信じて。そして、今日もわたしは石をなぞる。 小田香 Kaori Oda ー 1987年大阪生まれ。フィルムメーカー。2016年、タル・ベーラが陣頭指揮するfilm.factoryを修了。第一長編作『鉱 ARAGANE』が山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波部門にて特別賞受賞。2019年、『セノーテ』がロッテルダム国際映画祭などを巡回。2020年、第1回大島渚賞受賞。2021年、第71回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。
Event
2022.11.25
#TRA-TRAVEL#千鳥文化#ART#EXHIBITION#北加賀屋#大阪市

トルコ人アーティスト、ギョクチェン・ディレク・アカイの
大阪滞在制作の成果発表展「More Than Human」、
千鳥文化にて。TRA-TRAVELが主催。

トルコ人アーティスト、ギョクチェン・ディレク・アカイの大阪滞在制作の成果発表展「More Than Human」、千鳥文化にて。TRA-TRAVELが主催。

トルコ人アーティスト、ギョクチェン・ディレク・アカイ(Gökcen Dilek Acay)の大阪滞在制作の成果発表展「More Than Human」が、北加賀屋の千鳥文化にて開催される。

アカイは1983年イスタンブール生まれのミュージシャン兼アーティスト。
今回の滞在制作においては、金継や金襴、藍染など日本の手工芸を技術的に学ぶだけでなく、それらの手法の再解釈を試みた。その独自に解釈した技法には、作家がこれまで会得してきた古今東西の技術がさらに織りこまれ、視覚的にも技術的にも新たな視点を提案するものだ。
想像上の世界と実世界という2つの世界が共存する「More Than Human」には、今日の政治・社会状況に対するオルタナティブな思考のもと、フィクション/ノンフィクションの人物が登場。幼少期の絵日記のような、作品群に内在する遊び心が、現在起こっている恐ろしい出来事を想像/創造的に融和し、世界の別の在り方を私たちに提示するかのように感じられる。

本展開催にあたって、主催者であるTRA-TRAVELが行ったアカイへのインタビューが届いたので、以下に掲載する。インタビュアーはTRA-TRAVELゲストコーディネーターの勝冶真美。

勝冶真美(以下MK): 今回初めての日本滞在だそうですね。日本や大阪の印象を教えてください。

ギョクチェン・ディレク・アカイ(以下GA):日本はずっと行きたいと思っていた国で、来日前から日本の文化に興味を持ち色々と見聞きしていたので、来日してもそんなに驚きはありませんでした。もちろん滞在中に日本の新たな美学を発見する喜びは毎回あります。
実は滞在中最も難しいと感じたのは食生活で、私はヴィーガンなので日本の伝統的な食文化とは合わない部分が多く、いわゆる日本の食べ物ではないものを探さなくてはならないのが大変です。

MK:ギョクチェンさんは、映像やパフォーマンスのほか、刺繍やニッティングなどいわゆる手仕事の技術を用いて作品を作られていますね。このような技法にいきついた経緯を教えていただけますか。

GA:新しい技術と古い技術の両方を取り入れることは私の中で非常に重要なことです。古来のイメージを古い技法で表現するだけではなく、現代的なイメージや私の想像したもの、ファンタジーとして作り上げたものを表現するために、最適な技法が何なのかをいつも探っています。(今回の展示作品でも使われている)タフティング*1は新しい流行の技法で、近年多くのアーティストが取り入れています。私もそういったアーティストと同様に、この技法でどのように自分らしく芸術的な方法で表現できるかを探っているところです。

MK:今回の滞在成果発表の展覧会に「More than Human」(=人間を超える)というタイトルを付けた理由について教えてください。

GA:私は人間の世界ではないもう一つの世界に近づきたいと思っています。「人間とは何なのか」がこの展覧会での私の問いかけですが、「人間ではないもの」を私のイメージにおける主人公として多く用いています。動物のイメージを用いるのはこれが初めてという訳ではなく、異なる種の関係についてこれまで長く扱ってきました。その関係性を問いかけ、新たな役割を引き出そうと試みています。
この展覧会では、たくさんの生き物が登場します。基本的にはこれらの作品は私の日記のようなもので、訪れるみなさんは、日本にいる間に私が知覚したもの-良いも悪いも含めて見聞きした物語、日々のニュース、子どもの頃のできごと-などを見ることになるでしょう。

MK:人間や動物、あるいはイマジナリーな生き物も、それぞれに奇妙なジェスチャーだったりシチュエーションだったりしていて、見ていると想像が膨らみます。これらの寓話的なモチーフはどこからやってくるのでしょうか。

GA:動物は私にとって子どものころから重要な意味を持つものだったのですが、そのうち動物たちは私の作品でも主要な登場人物になっていきました。動物だと物語を語りやすい、ということもあります。語り手としての動物です。日本でもそれぞれの動物に象徴的な意味があったりしますよね。今回の制作において日本での動物の象徴性ついて考慮に入れた訳ではありませんが、象徴的な意味というのはイメージを喚起する機能があります。
私はいつも動物たちの素晴らしいキャラクターを借りて、異なる小さな物語を繋ぎ合わせて大きな物語を作っています。どういうキャラクターを登場させるのかは、時と場所、あるいは私の感情のムードによるのですが、彼らは不思議と現れてきて物語をつくるのです。

*1 タフティング(Tufting)は、ベースとなる布に毛糸を束ねた房を縫い込む技法で、北欧で防寒具のために考案された。現在ではラグやカーペットのための技法として知られる。

ギョクチェン・ディレック・アカイ(Gökcen Dilek Acay)
1983年イスタンブール生まれ。ミュージシャン兼アーティスト。ユルドゥズ工科大学(イスタンブール)でヴァイオリンを専攻し、バウハウス大学ワイマールMFAプログラムを修了する。2015年には、Macka Art Gallery Istanbul が主催する「Young Generation Turkish Artist」の第3回Mansion Prize を受賞、また同年にミラノで開催されたヨーロッパと地中海の若手アーティストのためのビエンナーレ(BJCEM)に参加した。
2021年には、テューリンゲン州視覚芸術家フェローシップを受け、2022年にStiftung Kunstfonds Neustart Kulturを受賞する。また今年は、Museum Arter Istanbul、Erfurt Kunsthalle、Acc Gallery WeimarのKunstfest 2022で展示を行う。

More Than Human
ギョクチェン・ディレク・アカイ(Gökcen Dilek Acay) / AIRΔ vo.2

会期:2022年11月25日(金)〜12月11日(日)

会場:千鳥文化

時間:11:30~18:00

休室:火・水曜

アーティストトーク/ギャラリーツアー
日時:12月3日(土)14:00〜(1時間ほど)
参加無料

刺繍のワークショップ
日程:12月4日(日)、10日(土)
時間:13:00~16:00
参加費:3,000円(お茶・通訳込み)

アーティストによる音楽パフォーマンス
日時:12月11日(日)16:00~(25分程度)
参加無料

助成:SAHA、大阪市
協力:おおさか創造千島財団
主催:TRA-TRAVEL

千鳥文化

大阪市住之江区北加賀屋5-2-28

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