「女優王国」と言われた松竹にあって、数々のメロドラマのヒロインを演じ続けた女優・岡田茉莉子。そのメロドラマは、ただ運命に流されるのではなく、それに抗い、自分の愛に誠実に生きようとする強い自我意識を持った、まさに岡田茉莉子にしか演じきれないヒロインだった。64年に吉田喜重監督と結婚後はフリーに転じ、さらに女性としての性に向き合い人間の深部に迫る数々の女性像を演じきった。映画のほか、舞台、テレビなどで活躍した戦後日本を代表する屈指の女優の生誕90年を祝って特集上映を開催。同時に、昨年12月の吉田喜重監督の逝去を偲んで、ふたりの第1作『秋津温泉』から吉田監督の遺作となった『鏡の女たち』まで計10本の岡田茉莉子主演、吉田喜重監督作品を上映。メロドラマから時代劇、喜劇、そして吉田監督と作り続けた人間の性を見つめた問題作まで、全27作品を一挙上映!
(今回、これまで「松竹メロドラマ特集」や小津安二郎監督特集などで上映してきた作品を除く、女優・岡田茉莉子の多彩な作品をご覧ください)(Webサイトより)
岡田茉莉子 プロフィール
1933年1月、東京生まれ、東京都出身。母は元宝塚女優・田鶴園子、父は戦前の二枚目俳優・岡田時彦。1951年、高校卒業後、6月に東宝演技研究所に入所。入所して20日後、成瀨巳喜男監督『舞姫』の準主役に抜擢される。父の芸名岡田時彦の名付け親の谷崎潤一郎により岡田茉莉子と命名。11月研究所を卒業し、東宝専属となり、女子高生、大学生、恋人役にと次々と映画に出演。53年の『坊ちゃん』のマドンナ役でおとなのスターへと成長を見せ、54年『芸者小夏』で初の単独主演。清楚なエロティシズムで生き生きと演じ出世作となる。その後も、稲垣浩の『宮本武蔵』シリーズ、成瀬の『浮雲』(55年)、『流れる』(56年)など大作・名作に出演が相次ぐが、57年に東宝との専属契約が終了し、3月にフリーとなる。丸山誠治の『山鳩』、中村登の『土砂降り』などに出演後、同年9月に松竹と専属契約。第1作は中村登の傑作喜劇『集金旅行』。58年、渋谷実の『悪女の季節』で毎日映画コンクール助演女優賞受賞。その後も渋谷実『霧ある情事』、大庭秀雄『ある落日』、60年には父岡田時彦と名コンビを組んだ小津安二郎の『秋日和』に初出演、さらに61年には井上和男の『熱愛者』を初プロデュース・主演するなど松竹メロドラマのヒロインとして大車輪の活躍を見せた。それも単なるメロドラマに終わらず、自立して自我意識を持った女性像を演じた。62年、映画出演百本記念作としてプロデューサーも兼ねた初の吉田喜重作品『秋津温泉』に主演し主演女優賞を独占する。64年6月21日、ドイツで木下恵介を媒酌人に吉田喜重と結婚式を挙げる。同年、吉田とともに松竹を退社。66年、フリーとなった吉田と『水で書かれた物語』を発表。6月、吉田と現代映画社を設立。第1作の吉田の『女のみづうみ』に出演し、以後、現代映画社で吉田が監督する『情炎』『炎と女』『樹氷のよろめき』『エロス+虐殺』『煉獄エロイカ』などセックスを触媒として人間の深部に迫る数々の問題作にヒロインとして出演。また、数多くの舞台やテレビドラマにも出演を続け、日本を代表する女優としての地位を確立。その後も71年の『喜劇 命の値段』『告白的女優論』、『黒の奔流』72年、最後の松竹作品となった76年の『凍河』、また初の東映作品となった77年の『日本の仁義』や『赤穂城断絶』(78年)に出演。77年には「母さん、僕のあの帽子どうしたでしょうね?」のCMで一世を風靡した『人間の証明』に出演。その後も、数々の映画、舞台、テレビに出演し続け、2003年には吉田の14年ぶりの劇映画『鏡の女たち』に出演。岡田にとって31年ぶりの吉田作品であり、ふたりの集大成となる。『鏡の女たち』の舞台あいさつで全国のミニシアターをふたりで行脚、それはふたりの映画巡礼にも似て映画渡世への感謝と惜別の旅のごとくで、各地で大歓迎を受けた。2022年12月8日、89歳で吉田喜重監督死去。2023年、岡田茉莉子さんの生誕90年を迎えた。
日程:2023年7月15日(土)〜8月18日(金)
会場:シネ・ヌーヴォ
上映予定作品:
『坊ちゃん』1953年 監督:丸山誠治
『やくざ囃子』1954年 監督:マキノ雅弘
『芸者小夏 ひとり寝る夜の小夏』1955年 監督:青柳信雄
『土砂降り』1957年 監督:中村登
『花のうず潮』1958年 監督:大庭秀雄
『春を待つ人々』」1969年 監督:中村登
『橋』1959年 監督:番匠義彰
『海流』1959年 監督:堀内真直
『バナナ』1960年 監督:渋谷実
『女舞』1961 年 監督:大庭秀雄
『秋津温泉』1962 年 監督:吉田喜重
『結婚式・結婚式』1963年 監督:中村登
『喜劇 各駅停車』1965 年 監督: 井上和男
『水で書かれた物語』1965年 監督:吉田喜重
『女のみづうみ』1966年 監督:吉田喜重
『雌が雄を喰い殺す かまきり』1967年 監督:井上梅次
『情炎』1967 年 監督:吉田喜重
『炎と女』1967年 監督:吉田喜重
『樹氷のよろめき』1968年 監督:吉田喜重
『戦いすんで日が暮れて』1970年 監督:長谷和夫
『エロス+虐殺』1970年 監督:吉田喜重
『煉獄エロイカ』1970 年 監督:吉田喜重
『喜劇 命のお値段』1971年 監督:前田陽一
『告白的女優論』1971 年 監督:吉田喜重
『黒の奔流』1972 年 監督:渡邊祐介
『凍河』1976年 監督:斎藤耕一
『鏡の女たち』2003年 監督:吉田喜重※上映期間中、各作品4〜5回上映予定
※作品詳細、上映スケジュールは劇場Webサイト参照料金:一般1,500円/シニア1,200円/会員・学生1,100円
当日5回券6,500円/シニア5回券5,500円/会員5回券5,000円主催:日本映画大回顧展上映実行委委員会、シネ・ヌーヴォ
問合:シネ・ヌーヴォ 06-6582-1416
トークショー
日時:
7月15日(土)13:55『秋津温泉』上映後
7月16日(日)14:10『やくざ囃子』上映後
ゲスト:上野昂志(批評家・映画評論家)
大阪市西区九条1-20-24