山中suplexが期間限定で運営する別棟「MINE」にて、陳寅迪(チェン・インディ)がキュレーションを担当する展覧会「Melting Rock, Still Wind/溶ける岩、留まる風」が開催される。
本スペースの名称「MINE」の英語(mine=採掘)と日本語(峯=山頂)の意味との間から着想された本展は、世界のさまざまな土地で人間と自然の関係に迫る実践を行うアーティストの多様なメディアを通した作品から構成される。
キュレーターテキスト
「Melting Rock, Still Wind/溶ける岩、留まる風」は変化するものと不変のものとの相互関係について探求する。一見静止しているように見える岩は外力によって形を変えることができ、余韻を残す風は複数の地域や時代を横断することができる。本スペースの名称「MINE」は日本語で「峯」山の頂上を意味し、英語の「mine」は「採掘」大地を掘ることから、本展ではこの二つの意味の間を横断し、地上にあるものと地中にあるもの、目に見えるものと目に見えないものを結ぶ結節点として機能させる。
写真、彫刻、サウンドピース、ビデオインスタレーションを扱った本展では、さまざまな土地からアーティストが集まり、人間と自然の力が互いに絡み合い、見分けがつかなくなるような風景について、現在進行中の研究の共有を試みる。
溶岩、鉱物、微生物、廃墟となったシェルターなどをたどりながら、アーティストたちは見過ごされてきた事柄や語られてこなかった物語をたどり、人類が地球を採取し再構築した跡に残る呪われた過去を探し求める。
曹舒怡(ツァオ・シューイー)の作品に描かれるストーリーは、さまざまな空間的・時間的スケールを横断し、地層上で作動するテクノロジーによって影響を受ける生活を明らかにする。アンドレア・ガラーノ・トロのビデオは、チリのアタカマ砂漠から私たちのパソコンまでの微生物の軌跡を追い、採掘、独裁政治、地球と人間の関係のつながりを推測している。アーティスト・コレクティブであるアルケミーバースは、溶岩、水、地下壕で音と振動を録音し、耳に聞こえない周波数を伝える触覚的な出会いを創り出す。ケース・ヴァン・レーヴェンは、ヨーロッパの核シェルターを訪れ、人工的なプロセスと自然なプロセスの相互作用を探求した記録を提示する。人間を越えた物質と共に考え、感じることで、アーティストたちは生命と非生命の分断に疑問を投げかけ、人間中心的な視点から離れ、歴史、地政学、エコロジーの絡み合いを探り、知ることの可能性を探求する。
陳寅迪 チェン・インディ(本展キュレーター)
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参加アーティスト プロフィール
アルケミーバース Alchemyverse
ニューヨーク在住の梁必成(リャン・ビーチェン)と邵奕萱(シャオ・イーシュアン)によってコロンビア大学修士課程での共同作業をきっかけに結成。梁必成は中国の中央美術学院で学士号取得。邵奕萱はカリフォルニア大学サンディエゴ校で学士号取得。版画制作と音響研究のそれぞれの知識と技術を、集中的なフィールドリサーチと組み合わせ、共同制作を行う。これまでAsia Art Archive(ニューヨーク)、The Bishop Museum(ホノルル)、Praise Shadows Gallery(マサチューセッツ州、ブルックライン)などで展示。近年のレジデンスに、LMCC Governors Island(ニューヨーク)、Desert 23°S(ラ・ワヤカ・カレント、チリ)、Rabbit Island Residency(ミシガン州、レークスペリオル)など。現在はブルックリンのISCPレジデンスに参加。アンドレア・ガラーノ・トロ Andrea Galano Toro
スペイン生まれチリ育ちで、現在はベルリン在住。
オランダ・アルンヘムのArtEZ芸術学院でグラフィックデザインの学士号を取得、バルセロナのBAUデザインスクールでオーディオビジュアルデザイン修士に在学中。アンドレアの実践は元素や風景といった人間以上の存在の声を活性化し、魅了し、推測するという手法を通じて異性愛規範的なストーリーテリングを様々な方法で再構成する。近年の主な展示にSonic Acts Biennale(W139、アムステルダム、 2022年)があり、現在はMuseo del Hongo(チリ)でのプロジェクトに取り組んでいる。また、ライラ・セイバー・ロドリゲスとCruda Collectiveを共同設立し、オランダのAKI、ArtEZ Theater、Extrapool、RADIUSでの実験的ワークショップやパフォーマティブ・リーディング・ワークショップ、ベルリン大学でセミナー、プラネタリーエンボディメントを開催。近年のレジデンスにOnsite(ベルリン、2022年)とValley of the Possible(アラウカニア ワルマプ、2022年)がある。曹舒怡 ツァオ・シューイー Shuyi Cao
ニューヨークを拠点に活動するアーティストであり、錬金術的アプローチで立体作品制作と知識浸透を探求している。考古学的な思索と生態学的なフィクションを通して、科学、テクノカルチャー、神話学、宇宙論の間の多様な関係性について考察している。彼女のマルチメディア・インスタレーションは、様々な有機的・無機的素材を用いて自然と人工のプロセスを統合し、手作業やデジタルの造形物、映像、サウンドを組み合わせたアッサンブラージュは、異質な物質と技術の時間性を示唆する。これまで彼女の作品は、Today Art Museum(北京)、Ming Contemporary Art Museum(上海)、Long March Space(北京)、Para Site Hong Kong、Hive Center for Contemporary Art(北京)、Contemporary Gallery Kunming(昆明)、Chronus Art Center(上海)、Banff Centre for the Arts(カナダ)、UrbanGlass NY、Chambers Fine Art(ニューヨーク)、Pratt Institute(ニューヨーク)、A.I.R. 13th Biennale(ニューヨーク)など世界各国で展示されている。
上海の復旦大学で法学士、公共行政の修士を取得後、ニューヨークのパーソンズ美術大学で美術学修士を修了。ケース・ヴァン・レーヴェン Kees van Leeuwen
現在オランダのハーレムを拠点に活動。ヴァン・レーヴェンは彫刻とインスタレーションを通して人間と施設的な建築空間の相互作用、空間性がどのように物理的経験に関係し、またその場に投影される社会学的物語の影響について考察している。冷戦時代の核シェルターの研究に長年取り組み、その構造は日常の空間認識に疑問を投げかけている。これまで彼の作品は、Art Rotterdam(オランダ)、De Compagnie(オランダ)、松浦史料博物館(日本)、CAVE-AYUMI GALLERY(日本)などで展示されている。陳寅迪 チェン・インディ Yindi Chen(本展キュレーター)
キュレーションと美術史を専攻し、現在ニューヨークを拠点に活動している。彼女の研究は科学と神話、歴史、そしてファビュレーション(寓話化)の絡み合いに焦点を当てている。彼女は「The Art Newspaper China」や「C-print」(ストックホルム)などで執筆を行い、Note on Hapticity collective(オランダ)の出版プロジェクトに参加し、これまでニューヨークのTutu galleryやSubtitledなどのアートスペースで展示キュレーションを行う。イギリスのヨーク大学で学士号取得、ニューヨークのスクール・オブ・ビジュアル・アーツ修士を修了。(Webサイトより)
Melting Rock, Still Wind/溶ける岩、留まる風
会期:2023年8月11日(金)、12日(土)、13日(日)、18日(金)、19日(土)、20日(日)
会場:山中suplexの別棟「MINE」
時間:12:00~19:00
料金:入場無料
同時期開催イベント
周縁における協働性と生態系について共有するトークシリーズ Vol.8
「乱反射する広島、アートスペースとその群系」
日時:8月13日(日) 19:30~(90分程度)
会場:山中suplexの別棟「MINE」4F 緑の間
ゲスト:黒田 大スケ(アーティスト)、今井 みはる(アートギャラリーミヤウチ学芸員)
参加料:自由(ドネーション制)
※言語:日本語
※オンライン配信あり https://youtube.com/live/QAILs_vnJ3E?feature=share
大阪市西区新町2-9-4
NANEI 新町 bld. GALLERY 02 街区