和歌山県立近代美術館は、あらゆる世代に美術館の楽しみを伝える展覧会として2011年からシリーズ展「なつやすみの美術館」を実施している。14回目となる今回は、Super Studio Kitakagayaの入居作家である美術作家・河野愛を迎え、なつやすみの美術館14 河野愛「こともの、と」展を、2024年7月13日(土)から9月23日(月)にかけて開催する。
展覧会名に掲げられた「こともの」とは、「異物/異者」と表記される古語で、河野が近年取り組んでいる、乳児の肌のくぼみに真珠を挟んだ様子を撮影するシリーズを指す。真珠は、貝のなかに入った「異物」が包まれるように結晶化したもので、貝をあけるまでその様相がわからない「得体の知れないもの」。あの世とこの世のつなぎ目を指す宝石としても知られる真珠に、河野は子を宿した自らを重ねた。そして、コロナ禍に見舞われる直前に出産し、子育てをはじめた河野はまた、見えないウイルスという「異物」が蔓延する状況下において、コミュニケーションの難しい「異者」としての乳児に向き合った。そうした「こともの」に囲まれ、交わらざるをえない体験が、制作の起点となったという。
本展では、新作《100の母子と巡ることもの》も披露される。これは乳児をもつ⺟に参加を募って、河野が⾃⾝の作品である「真珠が⼀粒⼊った箱」を送り、⺟親が乳児の肌のシワやくぼみに真珠を一粒挟み、写真を撮影・返送するというプロジェクトだ。
作家による「こともの」を起点に、同館のコレクションを組み合わせ、さまざまな「こともの/異物/異者」を考えるきっかけとなる本展。鑑賞者にとって未知の「こともの」との出会いの機会となりそうだ。
河野愛 / Ai Kawano
1980年滋賀県生まれ。2007年京都市立芸術大学大学院 美術研究科 染織 修了。在学中にRoyal College of Art 交換留学。大学院修了後、2017年まで広告代理店にてアートディレクターとして勤務。現在、京都芸術大学美術工芸学科専任講師。 染織やテキスタイルを制作におけるルーツとし、陶やガラス、布、収集した骨董、写真などを複合的に用い、場所や人の記憶や時間、価値の変化をテーマにしたインスタレーションを発表している。 近年の主な展覧会に、滋賀県立美術館 リニューアルオープン記念展「Soft Territory かかわりのあわい」(2021)、「Story teller 物語を紡ぐ」アキバタマビ21(2019)、「シガアートスポットプロジェクトVol.1 散光/サーキュレーション」滋賀県立近代美術館主催(2018)、個展「in the nursery 逸話ではないもの」ギャラリー崇仁(2018)。2018年度平和堂財団芸術奨励賞受賞など。
https://aikawano.com/
なつやすみの美術館14 河野愛「こともの、と」
会期:2024年7月13日(土)~9月23日(月)
時間:9:30~17:00(入場は~16:30)
休館:月曜 ※7月15日(月・祝)、8月12日(月・休)、9月16日(月・祝)、9月23日(月・休)は開館、7月16日(火)、8月13日(火)、9月17日(火)は休館
会場:和歌山県立近代美術館 2階展示室
料金:一般520円、大学生300円
※高校生以下、65歳以上、障害者、県内に在学中の外国人留学生は無料
※7月27日、8月24日(毎月第4土曜日) は「紀陽文化財団の日」として大学生無料
※8月4日、9月1日(毎月第1日曜日)は入館無料
問合:073-436-8690
関連イベント
記念対談
日時:8月10日(土)14:00〜16:00(13:30開場)
ゲスト:小川公代(英文学者、上智大学外国語学部教授)、河野愛
聞き手:青木加苗(本展担当学芸員)アーティスト・トーク(河野愛によるギャラリー・トーク)
日時:7月13日(土)、9月7日(土)
※各回14:00から1時間程度
※申込不要(要観覧券)ギャラリー・トーク(学芸員による展示解説)
日時:8月4日(日)、9月22日(日)
※各回14:00から1時間程度
※申込不要(要観覧券)こども美術館部(小学生を対象とした作品鑑賞会)
テーマ:こどもの、ど
日時:9月14日(土)、15日(日)
※11:00から1時間程度
※両日同内容
定員:6名程度
※要参加申込。8月31日(土)9:30からこちらで受付(時間前受付不可)たまごせんせいとわくわくアートツアー(和歌山大学美術館部による鑑賞ガイド)
日時:8月14日(水)〜18日(日)
※各日11:00、13:30、15:00からの3回実施(45分程度)
和歌山県和歌山市吹上1-4-14