概要
作品は何かを表現しない。何かを主張しない。問題提起などしない。作品は、制作の体験を志向し、体験を召喚した大海原の一点にあたりをつけ、投げ込まれる錨のようなものだ。そこに立ち、その場所から網を入れることで、作家や鑑賞者は、また新たな形で体験を召喚可能とする。錨は、行こうとする船と行かせまいとする海の間に翻弄されながら、その葛藤を無効にするべく着底する。繊細に推し計りながら、しかし最後は、賽を振るように投げこまれる。その賭けに論理的必然性はなく、表現、主張、問題提起の余地などない。極めて危険なその賭けは、だからこそ外部に触れる。それが創造であり、芸術なのである。–
作家略歴
郡司ペギオ幸夫
早稲田大学理工学術院 基幹理工学部・研究科 教授
2022年より身の回りの素材を用いてモノと空間の構成を始める。主な展覧会に「もんぜん千年祭2024」(西之門よしのや北蔵/長野、2024)、「BOG BODY—召喚される身体」(中村との共同展、Art Space Kimura ASK?/東京、2024)など。著書に『創造性はどこからやって来るか–天然表現の世界』(ちくま新書、2023)、『天然知能』(講談社選書メチエ、2019)など。松本直樹
美術家、長野美術専門学校副校長、ミルク倉庫+ココナッツメンバー
1982年長野県生まれ。2007年東京芸術大学大学院美術研究絵画科修士課程修了。2004–2007年四谷アート・ステュディウム在籍。既製品や日用品などを用いて、従来の絵画技法や諸造形の要素を分解、その機能を再構築する。主な展覧会に「ナガノオルタナティブ 松本直樹展」(FLATFILE SLASH倉庫ギャラリー/長野 2017)、「国際芸術祭 あいち2022」など。中村恭子
日本画家、大阪大学中之島芸術センター准教授
長野県下諏訪町生まれ。2010年東京藝術大学大学院美術研究科絵画専攻日本画研究領域博士課程修了、博士(美術)。日本画と論考による実践研究を行う。主な展覧会に中村恭子日本画作品展「風景の肉体」(大阪大学中之島芸術センター/大阪 2023)、中村恭子日本画作品展「脱創造する御柱」(諏訪市美術館/長野 2022)など。著書に『TANKURI 創造性を撃つ』水声社(2018、郡司との共著)など。(主催者より)
大阪大学中之島芸術センター企画
天然表現「投錨するアート」会期:2024年7月2日(火)〜8月4日(日)
会場:大阪大学中之島芸術センター 4階展示室
時間:10:30〜17:00
閉館:月曜・祝日
入場料:無料
展覧会記念トークイベント「投錨するアート」
「投錨する」は、郡司の執筆中の新著で示された創造行為の様式を表すものである。この意味を、それぞれの作家・研究者が自身の実践を踏まえて議論し脱線する。
日時:7月7日(日)14:30~16:00
会場:中之島芸術センター3階スタジオ
料金:参加無料 ※事前予約不要
登壇:郡司ペギオ幸夫(天然知能研究・天然表現)×松本直樹(現代美術)×中村恭子(日本画)問合:大阪大学中之島芸術センター secretary.art@ml.office.osaka-u.ac.jp
大阪市北区中之島4-3-53