2024年7月5日よりTEZUKAYAMA GALLERYでは初の木村剛士個展 ”Deaf Voice”を開催いたします。
1980年、東京都生まれ、宮城県出身。多摩美術大学院美術研究科彫刻専攻を修了。
これまで芸術祭を中心に数多くのサイト・スペシフィックな彫刻を発表してまいりました。2020年の六甲ミーツ・アートではテニスコートを湯船と見立てた大型のインスタレーションを発表、ART OSAKA EXPANDED 2023では、名村造船所跡地にて8隻のボートが漂う空間をつくりあげました。どちらも共通している点は彫刻”物”としてとどまっていないところにあります。鑑賞者が彫刻の背景に想いを馳せることで変化する時間軸も作品の一部となるのです。また、時代や環境の変化から発生したエネルギーも木村の作品からは感じ取ることができます。本展ではまず、作家自身を主点とするミクロな時代(世代)から社会と彫刻の在り方を考察します。同世代だからこそ分かり合えること、世代が変わり引き継がれなかったものをそっとひろいあげた作品が並ぶことは今を観察するための重要な役割を担っているのです。
この機会にぜひご高覧くださいませ。
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アーティスト・ステイトメント
話というのは考えていることや感じたことを比較的近い意味の言葉に置き換えて伝える抽象的な表現なので、そこからボロボロとこぼれ落ちてしまう欠片が、実は芯だったりすることがあります。ですから、この文章もまた芯を捉えられていないと思うので、私とあなたとの出会いのきっかけ位として読んでください。
「ホームサイン」。
この言葉を知ったのは「デフ・ヴォイス」というドラマで(正確には体感としては知っていたが)、聴覚障害者を親に持つ主人公が、法廷通訳をきっかけに物語が進んで行くという内容です。
話の中でホームサインしか使うことが出来ずに、社会的に孤立してしまった聴覚障害の方が出てきます。ホームサインとは、親と子や兄弟間など近しい間でのみ成立する身振り手振りのジェスチャーで、手話とは違いこれといった文法はないそうです。
なので、ホームサインを使う近親者との関係性が途絶えてしまうと、存在自体がなくなってしまう、脆くて儚い時代に耐えられない表現とでも言えましょうか。
時代に耐えられないというと、若い世代は自転車のスポークにボールを入れて移動する文化なんて知る由もないですよね。インターネットもない時代に、当時の子供たちの間で何故か全国的に流行った文化です。スポークを台座としてボールを挟み込む彫刻的な設置方法は、世代が変われば忘れ去られる個人史の欠片で、ホームサインと同じように「時代に耐えられない彫刻」と言えるかと思います。この展覧会では色々な世代をある種の部族(トライブ)と捉えて、私の世代の文化(40代)を彫刻として展示することで、世代間の関係性を再考することを目的としています。
野生の思考のように世代というトライブが違っても、根本的な構造は変わらないし、優劣もありません。私が体験したテニスボールとスポークの関係性に近い事柄は、様々な圧力に耐えることが出来ませんが、人類の歩みが始まってから星の数ほど生み出されは消えていった表現の一旦です。今後も声高な社会性や効率化とは別な歩みで更新されていくでしょう。(Webサイトより)
会期:2024年7月5日(金)〜8月3日(土)
会場:TEZUKAYAMA GALLERY Viewing Room
時間:12:00~19:00
休廊:日・月曜、祝日
大阪市西区南堀江1-19-27
山崎ビル2F