本展では、ポストモダン芸術の重要な潮流の一つである「シミュレーショニズム」を起点に、過去から現代に至るまでの幅広い年代のアーティストを取り上げることで、美術における「引用」と「流用」といったアプロプリエーションの手法に焦点を当てます。
シミュレーショニズムとは、1980年代半ばにニューヨークを中心に登場した美術運動であり、大量生産・大量消費の時代に生まれた複製技術や急速な情報化といった時代的背景を受けて発展しました。この運動は現代に至るまで多くのアーティストに影響を与え続けており、本展ではその主要な要素に加えて、ネオダダ、ポップアート、コンセプチュアルアートといった前駆的な潮流のアーティストにも触れながら、アプロプリエーションの手法がどのように誕生し、今日の美術表現に繋がったのかを概観する事を目的とします。
また、本展で紹介するアーティストたちは、既存の芸術表現や社会的なイメージを記号化し、それを再構築することで新たな視点や解釈の在り方を鑑賞者に投げかけます。彼らの作品を通して、アプロプリエーションの手法が現代においても重要な表現手段として機能し、いかにして新たなイメージや文化的な問いを生み出しているのかを探ります。
今展を通じて、美術における「引用」と「流用」の歴史とその変遷を追いながら、新たな創造の可能性について鑑賞者に再考を促し、また、過去から現代へと受け継がれる美術の流れを感じ取って頂ける機会となれば幸いです。
(プレスリリースより)
出展アーティスト プロフィール(一部)
石井佑果
1995年香川県出身。2019年多摩美術大学美術学部絵画科油画専攻卒業2022年東京藝術大学大学院美術研究科絵画学科油画専攻修了。
ステレオタイプな西洋絵画を連想させるモチーフや筆致の引用、あるいはアルファベットやトランプカード、ピアノの楽譜 といった記号的な要素の羅列や編集による絵画作品を制作。膨大な量の「絵画」と呼ばれるものの中から取捨選択する方法と判断、またその描き方によって、絵画の成立とその無数の組み合わせについての検証を行なっている。
主な展示に、「Eudaemonia」(2024 / Gallery Common / 東京)、O JUNキュレーション展「幸福惨憺世界:Dat+石井佑果+山脇紘資+O JUN」(2024 / ミズマアートギャラリー / 東京)、「大逆走」(2024 / same gallery / 東京)、「3cm と3km -対岸を眺める-」(2023 / TEZUKAYAMA GALLERY / 大阪)、「2人展:塩原有佳、石井佑果」(2022 / Satoko Oe Contemporary / 東京)、「あっけらかんの眺め」(2021 / KOMAGOME1-14cas / 東京)など。井田大介
1987年鳥取県生まれ。2015年東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。
彫刻という表現形式を問いながら、彫刻・映像・3DCGなど多様なメディアを用いて、目には見えない現代の社会の構造やそこで生きる人々の意識や欲望を視覚化している。16年からは、世界中の人々がインターネット上にアップロードしている匿名的な画像を素材として、インターネット以降のモノや身体の在り方を彫刻する「Photo Sculpture」を継続的に制作している。
主な展示に、「遠距離現在 Universal / Remote」(2024 / 国立新美術館ほか / 東京)、「SYNOPTES」(2023 / TEZUKAYAMA GALLERY / 大阪)、「日本国憲法展」(2023 / 青山目黒 / 東京)、「EASTEAST_TOKYO 2023」(2023 / 科学技術館 / 東京)、「Grid Island」(2022 / SeMA(ソウル市美術館) / 韓国)、「あなたが鳴らしても鐘は止まない」(2021 / デカメロン / 東京)など。山田周平
1974年生まれ、京都市在住。アイロニーとユーモアをベースに現代社会に対する考察を通じて制作を行う。写真、映像、立体、平面、と様々な形式を展開しながら、ミニマルかつコンセプチュアルな作品を制作している。2013年、アーモリーショーのキュレーション部門において、当時アンディウォーホール美術館(ピッツバーグ)館長のエリックシャイナー(現 Pioneer Works ディレクター/ニューヨーク)により唯一の日本人として選出され、様々なメディアで話題となった。
主な展示に、「MIKADO2: Do You Know Me」(2024 / Sokyo Annex / 京都)、「MIKADO2: ワニのための”フーガ”」(2024 / ザ・トライアングル(京都市京セラ美術館) / 京都)、「ただ踊るだけ/Just dance」(2024 / Der-Horng Art Gallery / 台湾)、「逃走、キャンセル、自由、反抗、逸脱、切断、ロマン」(2023 / ARTRO / 京都)、「Next World―夢みるチカラ タグチ・アートコレクション×いわき市立美術館」(2021 / いわき市立美術館 / 福島)、「WISH KISS LOVE HOPE」(2017 / AISHONANZUKA / 香港)など。2003年、写真新世紀優秀賞受賞。2017年、ISCPレジデンスプログラム(ニューヨーク)に参加。主なコレクションにタグチコレクション。タムラサトル
1972年栃木県生まれ。1995年筑波大学芸術専門学群総合造形卒業。「意味の破壊」をテーマに制作を行い、チェーンやスプロケットで構成された動き続ける数字や図形、回転するワニや後退するクマといった機械仕掛けの大小様々な作品、映像作品、白熱灯が明滅を繰り返すインスタレーションなどを国内外で発表している。回転・接触・点滅・移動などを組み合わせて無目的に動き続ける作品は、機械としての有能性をなくし、すべてのものが「意味」や「機能」から解放され、ユーモアとウィットに富んだ芸術として鑑賞者の前に現れる。
主な展示に、「無目的な機械 AIMLESS MACHINE」(2024 / DH Neology / 台湾)、「Sydney Contemporary 2023」(2023 / Carriageworks / オーストラリア)、「ワニがまわる理由は聞かないでほしい」(2022 / TEZUKAYAMA GALLERYほか / 大阪)、「ワニがまわる タムラサトル」(2022 / 国立新美術館 / 東京)、「Connect #2」(2021 / MAKI Gallery / 東京)、「100の白熱灯のための100のスイッチ #5」(2021 / 川越市立美術館 / 埼玉)など。
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出展アーティスト:石井佑果、井田大介、山田周平、タムラサトル、赤瀬川原平、三島喜美代、ブルース・ナウマン、ジャスパー・ジョーンズ、ジェフ・クーンズ、ロバート・ラウシェンバーグ、トム・ウェッセルマン、他
※出展アーティストに変更が入る可能性あり会期:2025年1月24日(金)〜2月22日(土)
会場:TEZUKAYAMA GALLERY Main Gallery
時間:12:00~19:00
休廊:日・月曜、祝日
同時開催
RE: FOCUS vol.6
大江慶之、鈴木淳夫、鈴木雅明、平野泰子、YU SORA、和田直祐
会場:TEZUKAYAMA GALLERY Viewing Room
大阪市西区南堀江1-19-27
山崎ビル2F