
脱力した動物の横には金魚やお寿司が宙を舞い、上弦の月と三日月が同時に空に浮かぶシュールで突拍子のない組み合わせ。栗田咲子の描く絵の多くは、素朴な日常の風景の中に時空を超越した動植物ほか様々なモチーフを画面上に配置し、大胆な省略とダイナミックな構図、そして豊かな色彩で構成されています。また、画中の登場人物たちは穏やかに描かれながらも皆今にも一斉に動き出しそうな独特の緊張感と躍動感を孕んでいます。
一見すると、トンチンカン、捉えどころのないように見えるその不思議な絵は、しかしその繊細で緻密な描画力、自由で想像力を喚起させる構成が、鑑賞者個々人の記憶を揺さぶり心地よいインパクトとともにこれまで多くの人を魅了してきました。栗田咲子は1990年代に京都市立芸術大学で学び、同年代半ば頃より現在に至るまで関西を中心に絵画作品の発表を続けています。初期には身近な人物をモチーフに多くの作品を制作、2000年代前後からは日常的な光景の中に動植物をコラージュする作風へと変遷してきました。また近年はこれまでのコラージュの要素を抑え、色彩の豊かさと大胆な画面構成によるストレートな風景画にも取り組んでいます。
Private Zoo
栗田作品の特徴の1つは画中に多く登場する動植物。彼女が今も折に触れて頻繁に足を向ける動植物園や公園、水族館で見た生き物たちが、生き生きとした姿そのままに描かれています。2024年、彼女の絵をノマルディレクター・故 林聡がウェブ上で偶然に見かけたことから急転直下、関係者の好意もいただき今回の個展に繋がりました。そこで林から栗田へ“動物や植物の私的コレクション”を意図して提案したタイトルが「Private Zoo」。蒜山ミュージアムでの大規模な個展と前後し、しばらく動植物と向き合える時間を取れていなかった栗田にとってはピッタリなお題目でした。今展では栗田の目に止まった愛すべき生き物たちが一堂に会する、「栗田的動物園」となるでしょう。初挑戦、タブレット画
タイトルと合わせて栗田に当初より投げかけたお題が、タブレットを用いた作品の制作。ペンツールでタブレットに絵を描くことは初めての栗田。ゼロからのスタートとなる試みでしたが、トライアンドエラーを繰り返しながら手探りの中でも着実に進行中。栗田画の魅力とタブレットを使用することの利点を上手くミックスさせた、新たな作品シリーズが生み出されるか?楽しみにお待ちください。–
作家コメント
Private Zoo
私にとって絵は、私的に楽しみたいものであり、私的な拠り所としたいものです。
私の周りで起こる出来事をぼんやり眺めたり、つぶさに観察したり、いろいろな見方を楽しみながら
私の楽園に連れて行けるものはないか、それなりに真剣に探します。動物が好き、人が好き、山川草木の表情が好き。
楽しく苦しく必死に生きる世界の姿が愛おしい。
そのような純粋な気持を形にできたら嬉しいです。謝辞
Private Zooという展覧会タイトルは、2024年11月に亡くなられた
前代表 林聡さんにいただきました。
林さんの直感力に導かれてこの展覧会を開かせていただける事を心より感謝申し上げます。栗田咲子 Sakiko Kurita
(ギャラリーWebサイトより)
会期:2025年2月22日(土)〜3月22日(土)
会場:Gallery Nomart
時間:13:00~19:00
休廊:日曜・祝日
Opening Party
日時:2月22日(土)18:00〜
※予約・料金とも不要Talk Event
日時:3月8日(土)18:00〜19:00
出演:栗田咲子 × 大下裕司(大阪中之島美術館学芸員)
※予約・料金とも不要Closing Live “Private Zoo”
日時:3月22日(土)19:30〜
出演:sara (.es) [piano, perc] 、河端 一 [guitar]
料金 : 前売 2,500円、当日3,000円
定員:30名 ※予約制 https://www.nomart.co.jp/sound/20250322_privatezoo.php
大阪市城東区永田3-5-22