十三の写真専門ギャラリー「ブルームギャラリー」にて、大坪晶の個展「Grayscale」が開催される。
大坪は、アーカイブ資料の分析と研究を背景とした作品制作を行う作家。写真や映像にフィクショナルな操作を加えることで、史実を寓話的な記憶として提示しようと試みている。
本展では、「グレースケールで思考する」をテーマに、新作のコラージュ作品を展示。デジタル化しグレースケールに変換された写真を素材にした本作では、作家の手作業が加わることで新しいイメージの解釈が生まれるとともに、日常の中で無意識に捉えられていた「グレースケール」について再考するきっかけを提示する。
作品群は、収集した写真を、デジタル化しグレースケールに変換した上でコラージュしたものである。日本の、そして世界の歴史記録をグレースケールに均一化し、意訳、誤訳し、概念化の少し手前の状態で旋回し続けることで、見知らぬ歴史を身体化しようと試みている。
グレースケールについて
銀塩写真の多くは白黒写真、もしくはモノクロームと呼称されてきた。それに対して、近年デジタルイメージング処理で用いられる名称として「グレースケール」がある。グレースケールは、映像の明暗を8ビットや16ビットの単位に変換してグレーの階調としてモニター上に表示する。また、多くの白黒写真がグレーの階調で表わされている意味で、グレースケールは白黒写真をより技術的に正確に表した言葉であると言える。また、モノクロームという用語は、中世ラテン語のmonochrōmaからきており、単一の色で表された図像や写真を表す言葉であり、白黒、セピア、グレースケールなどを包括する言葉である。
近年、多くのメディア(媒体)で使用されるのはカラー映像であるが、色は時に私たちの認知を惑わすことがある。例えば、Webページ、印刷物が色彩があることによりオブジェクトの光の強弱が正しく認知できないことがある。そのため、一旦グレースケールに変換して明暗差を確認することで、色覚多様性に配慮した配色を検討したりする。また、カラー情報を画像処理ソフトで破棄することで、容易にグレースケールに変換することが可能である。デジタル処理による撮像への介入は、写真の物質性の喪失や図像の均質化というネガティブな側面が指摘されることがあるが、写真の特性の一つであるどこにでもへばり付き、時代に同質化してゆくアメーバ的特性がより強調されたということもできる。大坪 晶
(本展Webサイトより引用)
大坪晶 | Akira Otsubo
1979年兵庫県生まれ。神奈川県在住。2002年京都文教大学臨床心理学科卒業、2011年東京藝術大学先端芸術表現科専攻修士課程修了。2013年プラハ工芸美術大学(AAAD)写真学科専攻 修士課程修了。アーカイブ資料の分析と研究を背景とした作品制作を行っている。写真や映像にフィクショナルな操作を加えることで、史実を寓話的な記憶として提示しようと試みている。
会期:2020年10月10日(土)〜31日(土)
会場:ブルームギャラリー
営業日:水曜〜土曜日 ※そのほかの曜日はアポイント制
営業時間:13:00〜19:00
問合:06-6829-6937
大阪市淀川区新北野1-11-23 ハイム北野B103