本特集では、ドキュメンタリーとフィクションの関係やその境界について向き合いました。それは、「事実」「作為」「理解」というような言葉の定義や、それらに付随する葛藤の輪郭をなぞっていくような作業であり、あらためてドキュメンタリーとフィクションの境界というものがいかに流動的で、相互的関係にあるかを感じています。 人が食べるという行為をインタビューを通して観察・分析してきた独立人類学者の磯野真穂さんとの対談では、他者を理解することについて言葉を交わしました。また、現代フランス哲学、芸術学、映像論をフィールドに文筆業を行う福尾匠さん、同じく、映画や文芸を中心とした評論・文筆活動を行う五所純子さん、そして、劇団「ゆうめい」を主宰し、自身の体験を二次創作的に作品化する脚本&演出家・池田亮さんの寄稿では、立場の異なる三者の視点からドキュメンタリーとフィクションの地平の先になにを見るのかを言葉にしていただきました。 対岸の風景を可視化していくこと、まだ見ぬ世界を知覚すること、その先に結ばれた像が唯一絶対の真実から開放してくれることを信じて。そして、今日もわたしは石をなぞる。 小田香 Kaori Oda ー 1987年大阪生まれ。フィルムメーカー。2016年、タル・ベーラが陣頭指揮するfilm.factoryを修了。第一長編作『鉱 ARAGANE』が山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波部門にて特別賞受賞。2019年、『セノーテ』がロッテルダム国際映画祭などを巡回。2020年、第1回大島渚賞受賞。2021年、第71回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。
News
2020.05.21

コロナ禍の大阪のアート/カルチャーシーン
[5月31日更新]

文: 北村智子[paperC運営事務局]

政府による2020年2月末の大規模文化イベント等の自粛要請から2ヶ月半、大阪で緊急事態措置が発せられてから1ヶ月あまりが経った。COVID-19の感染拡大や活動自粛要請による影響を、国内ほぼすべての人たちが受けているなか、特にイベントと分類される活動を主としている芸術文化の世界では、早い段階から大きな打撃・影響を受けてきた。大阪のアート/カルチャーシーンはどのようにコロナ禍に向き合っているのか。これまでに得られた情報を記録しておきたい。(2020年5月15日執筆)

 

【音楽】

2月中旬に大阪のライブハウスでクラスターが発生し、多くのライブハウスは緊急事態宣言発令前から営業を自粛、その結果ミュージシャン、テクニカルなどの音楽関係者は活動の場を失っている状態だ。営業しなくても発生する賃料などのコストを何とか工面しようと、複数のライブハウスがクラウドファンディングを立ち上げたり、ドネーショングッズを販売。アーティストやレーベルがライブハウスを支援したいと音源を販売し、売り上げを寄付するなど動き出すケースもある。個別の施設の動きに加え、大阪のいくつかの施設が連帯する動きや、全国的なプロジェクトに参加している施設もある。

 

【映画】

緊急事態措置を受けて府内の全ての映画館が休館している(515日現在)が、それ以前の外出自粛要請の段階から観客が減り、経営への影響が日に日に大きくなっていた。そこで京阪神のミニシアター13館が結集して立ち上げたのが「Save our local cinemas」だ。Tシャツを販売し売上金を各館に均等配分する仕組みで、6日間の販売期間にもかかわらず、13,227枚の購入申し込みと、4,805口の寄付があった。ミニシアターの日頃のつながりが緊急時に生きた。

また全国レベルでは、映画監督の深田晃司と濱口竜介が発起人となって設立されたクラウドファンディング「ミニシアター・エイド基金」が多くの支持を得て、3億円を超える支援を集めた。大阪の4館も参加。この取り組みは、「ブックストア・エイド基金」など他業界における同様の活動の立ち上げにも影響を与えた。

新たな仕組みとして、インターネット上に「仮設の映画館」も立ち上がった。観客が映画館を選び、ストリーミングで作品鑑賞する際に支払った鑑賞料金を、通常の興行収入と同様に映画館と配給会社、製作者に分配する仕組み。大阪では第七藝術劇場とシネ・ヌーヴォが参加。想田和弘監督『精神0』などが順次配信されている。

 

【舞台芸術】

劇場は閉鎖されているが、新たな創作に向かう動きもある。インディペンデントシアターでは、これまで開催してきた一人芝居フェスティバルのネット展開として、「INDEPENDENT:1/5」(インディペンデント:ゴブンノイチ)を企画。通常の舞台の1/5の面積をアクティングエリアとし、6分以内の短編一人芝居を制作してYouTubeで発表するもの。

また、高槻を拠点とする劇団dracomは、外出自粛の状況を演出に組み込んだ新たな音声作品《STAY WITH ROOM》を制作し、YouTube上で発表している。

アーティストユニット、contact Gonzoは、2017年の初公開以降、発表のたびに撮影・編集を加えてきた映画『MINIMA MORALIA」の最新版のオンデマンド公開を始めた。1,000円/週でレンタルする形式。

28年前に開館した老舗小劇場のウイングフィールドは、「仮想劇場ウイングフィールド(仮称)」を立ち上げる。広く支援を募り、集まった支援金をもとに有料サーバーを契約して、劇団が安定した動画配信を行える場所を確保。522日(金)〜24日(日)に、エイチエムピー・シアターカンパニーにより、第1弾の公演がVimeo上の仮想劇場にて上演される

 

【美術】

公立美術館は2月末から休館が続く。国立国際美術館でも4月に開幕予定だった「ヤン・ヴォー ーォヴ・ンヤ」展が延期になっているが、山梨俊夫館長が417日(金)にメッセージを発信、YouTubeの同館チャンネルなどを案内している。

府内の多くのギャラリーは、3月中は感染防止対策を行った上でオープンしていたが、4月はほとんどが臨時休業となった。展示を動画や画像で紹介するギャラリーも出てきている。

美術家などからなる大阪のアートハブ、TRA-TRAVELは、「オンライン・こどもアートスクール」を急遽立ち上げた。アーティストを先生に招いて、オンラインで双方向の授業を実施。コロナ禍を受けた実験的な試みだが、今後継続することも考えているとのこと。

 

【本屋】

本屋は緊急事態措置の休業要請施設から外れているが、臨時休業や時短営業している店舗が多い。オンラインでの販売に力を入れる店舗が増えている印象だ。toi booksは、これまで店舗で開催してきたトークイベントをオンラインで展開している。

シカクは「バーチャルシカク」をオープン。通常の営業時間と同じような時間帯に店舗からライブ配信。おすすめの本を紹介したり、商品を並べるなど通常の業務の様子をそのまま公開したり、通常の営業風景を垣間見ることができる。

またこの機会に新たな営業形態に乗り出したのが、Calo Bookshop & Cafe414日(火)より有料予約での営業を開始した。1時間ごとの予約制で、店内を貸し切って本を選んだり、カフェを利用したりできる(これまでの顧客限定)。予約料金は500円だが、来店時の利用代金に充当される。以前からチャージ制本屋という運営形態について考えていた店主が実験的に行った。(519日からは予約不要の通常営業)

 

【イラストレーター】

昨今アートマルシェ的なイベントが増え、イラストレーターによる会場での似顔絵屋が人気だが、そうしたイベントも中止が相次いだため、オンラインでの似顔絵受注サービスを始める動きも出てきた。個人での展開に加え、イラストレーターの窮状を知ったデザイナーの原田祐馬と編集の多田智美が、イラストレーターの鈴木裕之とともに、SNSアイコン用オンライン似顔絵サービス「LUX(ルクス)」を開発。数十名ずつ複数回受け付けたところ、いずれの回も完売。今後はほかのイラストレーターとの展開も考えているという。

以上が主に緊急事態宣言発出後1ヶ月間に見られた動きだ。緊急事態の「出口」が見えるようになってきたものの、COVID-19の影響は長期化が予想されるため、時間が経つにつれて新たな問題が発生すると思われる。その時期の状況に合わせて、活動の方法や必要な支援も移り変わっていくだろう。将来同様の事態が発生した時の教訓のためにも、何が起きたか/起きるかをアーカイブしていきたいと思う。

コロナ禍の大阪のアート/カルチャーシーンの動き一覧(順不同)20205月31日現在]

 

【音楽】

<ドネーショングッズ販売>

・難波 ベアーズ http://namba-bears.main.jp/donation.html

・堺FANDANGO https://fandangotic.thebase.in

・God save us ライブハウス(ムジカジャポニカが立ち上げ、大阪の複数のライブハウスが参加、51日でグッズ受注終了) https://musicaja.thebase.in/

<音源販売によるライブハウス支援>

・LIVEHOUSE-CHANG(賛同アーティストの音源売上を梅田ハードレイン、南堀江SOCORE FACTORYなどに寄付) https://livehouse-chang.org/

・コンピレーションCDR販売(心斎橋パンゲア支援のためにHOLIDAY! RECORDSが制作

https://holiday2014.thebase.in/items/27645375

・コンピレーションアルバム『The Encounters』(Club STOMPへのドネーション企画)https://clubstomp.bandcamp.com/

・CO​-​OP Compilation album vol​.​1(難波ベアーズと関わりのあるアーティストを収録した新作コンピレーションアルバムの収益をライブハウスに寄付)https://ann-ihsa.bandcamp.com/album/co-op-compilation-album-vol-1

<クラウドファンディング>

・SAVE THE CONPASS https://camp-fire.jp/projects/view/257609?list=channel_covid-19-support

・SAVE THE TRIANGLE  https://camp-fire.jp/projects/view/258724

・扇町para-dice存続のためのプロジェクト(終了、支援者650人、支援額428万円)https://camp-fire.jp/projects/view/253084

・SAVE THE Shangri-La https://wefan.jp/crowdfunding/projects/shangri-la2020

・DON’T STOP JOULE https://camp-fire.jp/projects/view/257005

<大阪のライブハウスも参加する全国の支援活動>

・MUSIC UNITES AGAINST COVIT-19 https://savelivehouse.com/

・LIVE FORCE, LIVE HOUSE(第1次支援総額    7,300万円) http://liveforcelivehouse.com/#/

・SUPPORT YOUR LOCAL LIVEHOUSE(チャリティTシャツ販売) https://www.supportyourlocalcenter.shop/

・SAVE THE LIVEHOUSE(ドリンク代前払い) https://savethelivehouse.com/

 

・SOCORE FACTORY ホームシアター空間提供 https://socorefactory.com/news/2020/05/09/

・Live Bar FANDANGO 「ロック喫茶ファンダンゴ」として営業再開(2020年6月1日〜)https://twitter.com/fandango_sakai/status/1265206087252185088

 

【映画】

・Save our local cinemas(京阪神での展開、大阪の3館が参加) https://localcinema.base.shop/

・ミニシアター・エイド基金(全国展開、大阪の4館が参加) https://motion-gallery.net/projects/minitheateraid

・仮設の映画館(大阪では第七藝術劇場とシネ・ヌーヴォが参加) http://www.temporary-cinema.jp/

・オンライン映画館「アップリンク・クラウド」での映画『ホドロフスキーのサイコマジック』先行上映(全国の映画館を支援できる寄付込みプランあり、大阪ではシネ・リーブル梅田が参加) https://uplink-co.square.site/psychomagic

 

【舞台芸術】

・インディペンデントシアター「INDEPENDENT:1/5」(インディペンデント:ゴブンノイチ) https://independent-fes.com/in5bunno1.html

・劇団dracom 音声作品《STAY WITH ROOM》  http://dracom-pag.org/

・contact Gonzo 映画『MINIMA MORALIA』最新版オンデマンド公開 https://vimeo.com/ondemand/minimamoralia/384164549

・ウイングフィールド支援募集、「仮想劇場ウイングフィールド(仮称)」立ち上げ http://wing-f.main.jp/

・小劇場エイド基金(全国展開、大阪の5劇場が参加) https://motion-gallery.net/projects/shogekijo-aid

・全国小劇場ネットワーク クラウドファンディング(大阪ではIn→dependent theatre Groupが参加) https://readyfor.jp/projects/shogekijo-network

 

【美術】

<オンライン・ビューイング>

・ギャラリーノマル 公募展「U30 – Whom do you suspect?」 https://www.youtube.com/watch?v=KyiW8pOSdkQ&feature=youtu.be

・Yoshimi Arts 柿沼瑞輝 「一点の一瞬」 http://www.yoshimiarts.com/exhibition%20view/mizuki_kakinuma_ex2020/20200404_Mizuki_Kakinuma-One-viewing.html

・hitoto 城下浩伺「PICTURE」(オンライン展示、24時間中継) https://koji-shiroshita.com/picture

オンライン展覧会「Online / Contactless」(Yoshimi Artsthe three konohanaの共同企画) http://thethree.net/exhibitions/5212

・artgallery opaltimesが「opaltimes EXHIBITION on WEB」オープン(2020年6月6日)http://opaltimes.uchidayukki.com/exhibition/

 

・TRA=TRAVEL「オンライン・こどもアートスクール」 https://www.facebook.com/online.kodomo.art.school/

・Pulp(南堀江のギャラリー) クラウドファンディング https://camp-fire.jp/projects/view/267634

・水内義人「ハッピー コントローラ」CD付カタログアップロード https://www.youtube.com/watch?v=WH0CfPyJe_o&feature=youtu.be

・国立国際美術館 山梨館長メッセージ http://www.nmao.go.jp/guide/message.html

 

【本屋】

<オンラインストア(一部)>

・FOLK old book store http://www.folkbookstore.com/

・blackbird books https://blackbirdbooks.jp/?mode=cate&cbid=2415351&csid=0&sort=n

・LVDB BOOKS https://lvdbbooks.myshopify.com/

 

・toi books(オンラインイベントなど)  https://mailtotoibooks.wixsite.com/toibooks

・シカク バーチャル営業 http://uguilab.com/day/?p=354

・Calo Bookshop & Cafe http://www.calobookshop.com/

・ブックストア・エイド基金(全国展開、大阪の10店舗が参加) https://motion-gallery.net/projects/bookstoreaid

DONATIONZINE 最近の好物100人 2020・春』発行(全国展開、ZINEの売上が100%購入した個人書店・独立系書店への寄付になる。大阪では4店舗が参加)https://note.com/donationzine/n/n9ed8d92db095

 

【イラストレーター】

・SNSアイコン用オンライン似顔絵サービス「LUX(ルクス)」 https://lux-lux.jp/i/suzukihiroyuki/

・ユッカ・バッファロー「ユッカのアイコンパーラー」(データ似顔絵) https://uccabuffalo.thebase.in/items/28714554

・木村耕太郎「オンライン似顔絵屋さん」 https://kimurakotaro.stores.jp/items/5eaf87b072b911393657193a

 

【その他】

・ココルーム・釜ヶ崎芸術大学存続のためのクラウドファンディング https://motion-gallery.net/projects/cocoroom2020

・SAVE THE JAM(レトロ印刷JAM クラウドファンディング) https://camp-fire.jp/projects/view/261212

・料理開拓人・堀田裕介 Youtubeチャンネル開設 https://www.youtube.com/user/ysksssc

・国立民族学博物館「おうちでみんぱく」(バーチャルミュージアム他) https://www.minpaku.ac.jp/museum/news/ouchi

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