市よりも古い大阪の「区」、150年の歴史と物語を24区ごとに紹介する本渡章『古地図でたどる大阪24区の履歴書』が2021年4月に大阪の出版社140Bより発売された。
第1章で前史を含めた区と大阪の歴史のあらましをまとめ、第2章で各区のプロフィールを地図や写真などの図版を用いて紹介。大阪24区を地勢的条件や歴史的経緯を踏まえて3つのエリアに分類し、各区の個性をわかりやすく解説している。
印象的なのは、大阪三郷(天満組・北組・南組)をもとに市よりも先に区(東区・西区・南区・北区)が明治12年(1879年)に生まれていること。明治22年(1889年)に市が誕生後、人口増加や経済成長により市域が拡大し、昭和49年(1974年)には26区まで増えるも、平成元年(1989年)に都市人口の減少により24区に再編されていること。
過去2度の住民投票が行われるなど、現在進行中の人口減少問題による大阪の市区の再編は検討されるべき課題である。しかし、その内容が歴史的な経緯を適切に踏まえたものなのか、今後を正しく見据えた制度設計なのかどうかを考える上で、参照されるべき歴史を本書は概説している。
混乱と試行錯誤を経て生れた最初の4区は、江戸時代の大阪三郷を参照しつつ手を加えたものでした。改革と継承を両立させる知恵がこの時、働いたのです。時代の流れにさからわず、改革と継承を両立させることこそが区の歴史の教訓です。市の基本単位である区の成り立ちを振り返らずに、市と区の未来は考えられないはずです。
(本文より引用)
著者:本渡章
定価:2,420円(本体2,200円+税)
判型:A5判・並製
頁数:232ページ
発刊:2021年4月27日
発行:140B
本渡章 / Akira Hondo
1952年、大阪市生まれ。作家。1996年、第3回パスカル短篇文学新人賞優秀賞受賞。著書に『鳥瞰図』『古地図で歩く大阪 ザ・ベスト10』『大阪古地図パラダイス』(以上、140B)、『カラー版・大阪古地図むかし案内』『続・大阪古地図むかし案内』『続々・大阪古地図むかし案内』『古地図が語る大災害』『図典「摂津名所図会」を読む』『大阪暮らしむかし案内』(以上、創元社)など多数。共著に『大阪の教科書・上級編』(創元社)、『飛翔への夢』(集英社)など多数。また、講演活動や街歩きツアーのほか、自らのコレクションを使った「古地図サロン」も行っている。