現代美術家・パフォーマンスアーティストの小林勇輝を中心に、主に身体表現を通して社会に根づく固定観念を問い、人間の存在意義を追求するプラットフォーム「Stilllive」。2024年3月8日(金)・9日(土)の2日間、クリエイティブセンター大阪(CCO)で行われた関西初の公演「Kinetic Net」で繰り広げられたのは、拘束や従属を強い/あらがう身体の熾烈さと心許なさ、意思ある個とその生の自覚だったのではないだろうか。公演の模様を、写真家・寺内尉士の視点から振り返る。
Stilllive 2024では、動き、光、サウンドによって構築されるパフォーマンスの時空間「Kinetic Net」をコンセプトに、複数のアーティストの身体が体現する運動の流れをインスタレーションおよびパフォーマンスとして提示する。「Kinetic Net」は、光の網によって作り出されるアクションやムーブメントをイメージしたもので、前半では身体の動き、光、サウンドで構築されるインスタレーション、後半では魚群探知機を使って都市に流れる生のダイナミズムに呼応するパフォーマンスが行われる。Stillliveがこのような表現を通して投げかけるのは、生命をめぐるヒエラルキーへの問いである。
Stilllive キュレーター・権祥海ステートメントより抜粋
人類は、動物だけでなく、同じ人間を捕獲する行為(戦争捕虜、人身売買、監獄など)を続けてきた歴史を持っており、現代社会の産物である新自由主義や監視システムは、かえって人間自らの行動を管理・制御する。
今回Stillliveは、そういった(非)可視的な身体の束縛/解放、支配/自由の条件に問いかけながら、生に限りなく近い身体表現の意義を模索する。(中略)それぞれのアーティストは、まるで光の網を出入りする小さな魚群のように空間を自在に遊泳しながら、徐々に集結し、そして離散する。そういった捕らえる/捕らえられる両儀的な遊戯によって、不確かでありながらも常に鮮やかな生の感覚を催す身体のダイナミズムを提示する。
Stilllive キュレーター・権祥海ステートメントより抜粋
Stilllive
「Stilllive / スティルライブ」とは、身体を主題とした人間の存在意義へ問いかけるパフォーマンスを表象するプラットフォームである。パフォーマンスにおいて、「身体」そのものがすでに作品として主題化され、それに伴い人間の状態が常に密接に関係してくる。このパフォーマンスアートを主体としたプラットフォームを共集の場として開くことで、アナログ性の持つ新しい表現の可能性や、人間の身体が如何にして観客に直接的な影響を及ぼすのか、そして有機的なマテリアルを用いたパフォーマンスアートの進化とサイバー環境に適応する未来の共存を考察していくことを提案する。Stillliveというプラットフォーム、あるいは共同体を我々自身によって検証す るために、セッションによる協働性と、生の身体が放つ偶発性が際立たせる個人としての身体の 現前を試みる。
※スティルライブとは「Still」と「Live」を組み合わせた造語であり、2016年に「ダダ100周年 フェスティバル + SPIRAL : GALLERY VOLTAIRE」(スパイラル, 2016)でのパフォーマンスのために小林勇輝とロイヤルカレッジオブアート (英国王立芸術大学)パフォーマンス科卒業生によって設立され、2019年にプラットフォームとしてゲーテ・インスティトゥート東京にて新たに発表されて以降、現在まで毎年開催されている。
日時:2024年3月8日(土)、9日(日)18:00〜20:00
会場:CCO クリエイティブセンター大阪
料金:一般3,500円、U25 2,500円アーティスト:乾真裕子、遠藤麻衣、小林勇輝、小宮りさ麻吏奈、佐野桃和子、花形槙、三好彼流、MES、吉田拓
キュレーション:権祥海主催:Stilllive
助成:一般財団法人おおさか創造千島財団、大阪市助成