長屋のカフェで買ったコーヒーを片手に、露地庭をうろうろしながら、出店ブースでつまみ食い。近所の人、店の人が交差してたくさんの雑談が生まれている午後。毎年春秋、コロナ禍の2020〜2022年はやむなく中止し、2024年で4年目となる「2024春の露地庭市」が、4月27日(土)〜29日(月)の3日間開催された。舞台は、露地庭をメイン会場とした長屋複合施設「キタの北ナガヤ」(愛称はキタナガ)。「なんでもありのごった煮市」と、主催者であるキタナガの管理人・小野達哉さん(Batonship合同会社・代表)が話すように、世界各国の料理やお菓子、植物販売や占い、ワークショップなどが繰り広げられていた。
お客さんの層は、20代からファミリー層まで幅広い。「何かやってるの〜?」と中津散歩の途中にたまたま立ち寄ったお年寄りや、犬を連れ散歩中のご近所さんが、いい匂いに引き寄せられて露地庭に導かれていく。私のお目当ては、「スパイス精進 モハマヤバート」さん! 店舗を持たないインド料理屋さんで、キタの北ナガヤで時々出店されているのをチェックしている。旬の素材を生かす趣向を凝らした料理が楽しく、タイミングが合えば食べている(ちなみに今回は、山菜ビリヤニをいただいた。相変わらず美味しい!)。
大阪中津に2018年に誕生した、通称「猫の小径」に面したキタの北ナガヤは、事務所と店舗、 宿が集合した施設だ。曜日替わりで多くの店主が出店するテイクアウト専門のシェアキッチン「キタナガKITCHEN」、飲食店営業や展示販売会、貸切パーティーなどにも活用できる多目的レンタルスペース「Shiten」、出張カットや出張鍼灸、フラワーアレンジメント教室など、主に予約制の会が開催されている「露地庭SALON」、2階には世界中からのゲストが滞在する再生長屋の宿「BIO」が併設。ほかにも、固定テナントとしてアートギャラリー、建築設計事務所、韓国料理店、整腸整体サロンもあり、多様な顔を見せる長屋だ。
「キタナガKITCHENやShiten、露地庭SALONなどのレンタルスペースは、たくさんの方に建物に関わってもらうための仕掛け。個人の料理家やパティシエ、作家などたくさんの方が何かをはじめたり表現したりできるとっかかりの場になり、それを目当てに来られたお客さんが長屋のような古い建物を好きになってもらえれば嬉しいです」と小野さん。こだわり店主の情報はSNSで広がり、美味しいもの好きのファンがこぞって集まる食のコミュニティスポットのような場が醸成されている。レンタルスペースの出店希望者は後を絶たないそうだ。
2024春の露地庭市のメイン会場、建物西側の露地庭は「
キタナガが誕生する前からある人気カフェ「HOOD by Vargas」とキタナガを挟む「猫の小径」の風景は、昔懐かしい長屋の風景を想起させる。数年前に小野さんはキタの北ナガヤの向かいの建物を1棟借り上げ、Shitenで間借り営業していた「みそ汁食堂 みそら」の独立店舗と、1階の狭小ドリンクスタンド、2階のオルタナディブスペースの「キタナガannexHIIRAGI」をオープン。この小径にさらなる賑わいを生み出した。キタナガの北隣の廃屋も絶賛リノベーション中で、
「キタナガを見て、こういう長屋の再生活動をやりたいと思う人が、自然発生的に増えたらいいな」と続ける小野さんから、建物への愛情をひしひしと感じた。いつ足を運んでも何かがある場所、となったキタナガは今や、中津のまちあるきをする際の必須スポット。再生された古い長屋は、生きた建物となり、確実にまちの風景を変えている。
2024春の露地庭市
日程:2024年4月27日(土)〜29日(月)
会場:キタの北ナガヤ
次回開催
2024秋の露地庭市
日程:2024年11月2日(土)〜4日(月)
時間:11:00〜16:00
会場:キタの北ナガヤ
大阪市北区中津1-15-35