とにかくまず、ネーミングの引きがすごい。「縄文祭り」の告知をInstagramで見たときに、画面をスクロールする手が止まらなかった。縄文的茶会、縄文似顔絵、草編み、お守り装身具販売など、そそられるラインナップが出店者一覧に並んでいる。2023年9月3日(日)、梅田からバスに飛び乗り、車窓からの田園風景を眺めながら1時間強、会場である大阪・豊能町にあるEMMA COFFEEに到着した。
店先の屋台では、縄文人がたこやきを焼いていた。メニューを見ると「エジプト塩 ポン酢たこやき」。正しくは縄文ではないが、まさしくそれっぽい。
誘われるように店内に入ると、フロア全体に広がる縄文ワールド! 天井からぶら下がる多量の藁、土偶や槍をモチーフにしたパンやアクセサリー。ススキや葉っぱを頭に巻き付けて、麻や綿、タイダイ染めの服を着ている出店者さんたち……なりきっている!
「衣装は指定していないんですよ。出店者さんがそれぞれの解釈で用意してきてくれたんです。ちなみにローマ人もいますよ」と、笑うのは主催者である101010(トトト)のタナカサヨコさん(デザイナー)。
今回は、数字の「10」をてーまに、誰か「と」NEOなものを届けることをコンセプトに活動している101010と切り絵作家と造形作家のユニットCOZYFACTORYのかなっぺさんが中心となって企画立案。
「なんで縄文なの?とよく聞かれますが、ひとえに縄文時代へのちょっとした憧れみたいなものでしょうか。約1万年続いた縄文時代は、平和で争いごとのない時代だったのではないかと。そこにインスピレーションを得て、それぞれが自由に、決めつけられることなく楽しめるマーケットをやりたいなと思ったんです。会場も都会ではなく、豊能町までわざわざ足を運ぶことまでも楽しんでほしかった。たまたま通りすがった人が、この場に居合わせるという偶然性も楽しい!」とタナカさん。
フードやアパレル、ワークショップやアトラクション(!?)などジャンルもさまざま。縄文というテーマにあわせて、特別に用意された商品ばかりだった。
「『ここでなんかお祭りやりたいねんけど』と、101010さんから提案をいただいたときには、こんな田舎で大丈夫かな?と不安もありました。蓋を開けると、こんなに人が集まってくれて嬉しいです」。こう話すのは、EMMA COFFEEの中西信一朗さん。「EMMA COFFEEは9年前にオープンし、これまでライブや映画の上映会などを企画してきました。『移住したい』『お店を移転したい』といった声をいただくことも、少しずつ増えてきましたね。この店は“公園”がテーマ。これからも、地域の人や地域外の人が入り混じって、自由に集える場所にしていきたい」と続ける。
出店者さんとお話をしながら巡っていると、14時からダルマワークスのイベントがはじまった。銀色の衣装を着たダンサーと掛け合いながら踊るパフォーマンス。出店者も営業の手を止めて、お客さんの輪に加わった。会場にいる全員の間に生まれる一体感。そこに流れているのは、まるで地域の盆踊りのようなアットホームな雰囲気だ。
「また次回も、縄文人のみんなと会えるように、日々をがんばりたいです」とサヨコさん。バスに揺られて帰りながら、不思議な縄文ワールドを思い返していた。何よりも、出店者が目一杯楽しんでいるのが印象的だった。子どもたち以上に、大人が本気で遊んでいるって、いいなあ。次回開催のときは、私も縄文人になって参戦しようと心に決めた。
日時:2023年9月3日(日)11:00〜
会場:EMMA COFFEE