本特集では、ドキュメンタリーとフィクションの関係やその境界について向き合いました。それは、「事実」「作為」「理解」というような言葉の定義や、それらに付随する葛藤の輪郭をなぞっていくような作業であり、あらためてドキュメンタリーとフィクションの境界というものがいかに流動的で、相互的関係にあるかを感じています。 人が食べるという行為をインタビューを通して観察・分析してきた独立人類学者の磯野真穂さんとの対談では、他者を理解することについて言葉を交わしました。また、現代フランス哲学、芸術学、映像論をフィールドに文筆業を行う福尾匠さん、同じく、映画や文芸を中心とした評論・文筆活動を行う五所純子さん、そして、劇団「ゆうめい」を主宰し、自身の体験を二次創作的に作品化する脚本&演出家・池田亮さんの寄稿では、立場の異なる三者の視点からドキュメンタリーとフィクションの地平の先になにを見るのかを言葉にしていただきました。 対岸の風景を可視化していくこと、まだ見ぬ世界を知覚すること、その先に結ばれた像が唯一絶対の真実から開放してくれることを信じて。そして、今日もわたしは石をなぞる。 小田香 Kaori Oda ー 1987年大阪生まれ。フィルムメーカー。2016年、タル・ベーラが陣頭指揮するfilm.factoryを修了。第一長編作『鉱 ARAGANE』が山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波部門にて特別賞受賞。2019年、『セノーテ』がロッテルダム国際映画祭などを巡回。2020年、第1回大島渚賞受賞。2021年、第71回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。
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2022.11.15
#Monaural mini plug#Soi48#stillichimiya#俚謡山脈#MUSIC#TALK

REPORT|ONE MEKONG MEETING 2565

文: 髙橋創一[編集者/ライター]
REPORT|ONE MEKONG MEETING 2565

2018年5月に東京・渋谷で第1回が開催され、以降断続的に催されてきたトークイベントシリーズ「ONE MEKONG MEETING」。大阪では4年ぶりとなる同イベントが2022年10月7日(金)、梅田Lateralを会場に「ONE MEKONG MEETING 2565」(2565はタイ歴での本年)として開かれた。「ONE MEKONG」とは、ヒップホップグループstillichimiyaのYOUNG-G、MMM(トリプルエム)、DJユニット・Soi48(宇都木景一、高木紳介)を中心に、「アジア各国に潜入し“そこにしかないカルチャー”をディグするプロジェクト」である。

今回はタイ・イサーン発祥のローカルダンスミュージック「ピン・プラユック」を演奏するバンド・Monaural mini plugの真保信得、日本各地の民謡を収集、リサーチするDJユニット・俚謡山脈の佐藤雄彦も加わった6人が登壇。開始時間の19時をまわると各々自己紹介を行い、ルーレットで決めたトークテーマに沿って話を進めていくことに。ここでまず宇都木が「SNSも見てはいるけれど、僕らは現地に何度も足を運んで、そこの人と仲良くなり、いろいろな情報を知っていくスタイルでずっとやっている。今日話すこともそうやって得たこと」と述べた上で、以前紹介したことが安易に“ネタ”として別のメディアで流用されたことがあったので、今日話す内容もSNSなどで公にしないよう念のために注意を促した。よって、このレポートでも当日の具体的な固有名詞などは極力記さないこととする。時間をかけ、汗をかいて得た情報を知るには、私たち自身もそれを伝えてくれる「現場」に赴かなければいけない。それがこのイベントに参加したり、2022年7月に発行されたONE MEKONGによるタブロイド紙『OMK#001』を読んだりして得た実感でもある。

REPORT|ONE MEKONG MEETING 2565

話を戻す。最初のトークテーマは「最新ADM事情」。「ADM」とはASIAN DANCE MUSICのことで、EDMに対抗する言葉としてつくったもの、と宇都木が補足。この9月にSoi48とMonaural mini plugがタイを訪れ、10日間で20~30ほどのクラブを巡って得た現地のダンスミュージック最新形を紹介するなかで、ヨーロッパで2010年頃に流行していたエレクトロハウスの楽曲が、サイヨー(タイのダンスミュージック)=ADM化して現在流行している事例などを提示。YouTubeをはじめとするSNSがインフラとして世界的に定着したこの10年ほどで、別の土地の文化・流行がそのまま持ち込まれるのではなく、現地の作法で翻訳され、定着していることに驚いた。加えて、「野良に落ちている音楽を知ることができる」(佐藤)として、現地訪問前のリサーチには若年層をメインユーザーとするTik Tokが重要なツールであることを強調した。さらにTik Tok内で流行している楽曲のルーツが、海外で少し前に流行っている音楽であったりと、ここでも異国文化が思わぬかたちで翻訳されていることを指摘。もっとも、会場ではTik Tokアプリをダウンロードしているのが2人だけだったが……。

REPORT|ONE MEKONG MEETING 2565
左から俚謡山脈の佐藤雄彦、Monaural mini plugの真保信得、Soi48の高木紳介、宇都木景一、YOUNG-G、MMM

その後も東南アジアでレコードをうまく購入するためのテクニックや、映画『バンコクナイツ』や『サウダージ』などで知られる映像制作集団・空族のプロジェクトで1ヵ月台湾に潜入してきたYOUNG-GとMMMによる原住民文化のレポートなど、さまざまなテーマでトークは続いたが、大阪に関連した話題として「アジア産驚愕のサウンドシステム事情」をひときわ興味深く拝聴した。ここでは、2021年12月に南大阪で開催された「昔、近藤組 今、宝龍会」についても触れながら、泉州でしか見られない独自のレゲエカルチャーを取り上げた。いかにレゲエが文化として地域に入り込んでいるか――たとえば真保の地元は泉州で、学校の運動会のダンスで使われた音楽が、当時流行していたレゲエのリディム・ディワリだったという。学校の運動会で最新のレゲエ!――事細かに説明。岸和田だんじり祭で広く知られているエリアだが、土地に根づいたガレージ文化、青年団の活動とレゲエカルチャーは密接にリンクしており、世代を超えてそれらが受け継がれているのだ。毎週のように野外でダンス(レゲエのパーティーのこと)が開催され、パトワ語(ジャマイカで使用されている英語とアフリカ語をベースにした言語)で会話をする人々がいるという泉州レゲエカルチャー。その歴史と風土に立脚した独自の文化の解説は、現地に足を運んでみたい! と思わせるほど、熱と勢いが伝わってくるものだった。

最初のトークテーマだけで45分を費やし、その後も一つひとつのテーマごとに、これだけは今伝えておきたい、という熱のこもった話が次々と展開。このまま一晩中終わらないのではないか、と感じるほどの勢いが持続したまま23時頃にイベントは終了、これまでの蓄積とネットワークが結実した近況報告をたっぷりと聞けた4時間だった。あるジャンルや特定のシーンなど、限定された範囲での同好の士の集いにはクローズドな雰囲気が漂うことがややもするとあるが、ONE MEKONGは決してそういったコミュニティではない。関心があればどなたでもどうぞ、という風通しのよい明るさと、音楽をはじめとしたアジアカルチャーの楽しみ方を数珠つなぎで示し、共有する懐の広さを強く感じた。筆者は東京在住であるためこの日はオンライン配信での視聴だったが、それでもここでしか聞けない話・知り得ない知識=「現場」の重要さをしっかりと体感できた。「続きは現場で」と途中のトークテーマを宇都木が締めたように、「この続き」は「現場」で会得したい。

ONE MEKONG MEETING 2565

日時:2022年10月7日(金)19:00〜

会場:梅田Lateral

出演:YOUNG-G(stillichimiya)、MMM(スタジオ石/stillichimiya)、Soi48(宇都木景一、高木紳介)、真保信得(Monaural mini plug)、佐藤雄彦(俚謡山脈)

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