本特集では、ドキュメンタリーとフィクションの関係やその境界について向き合いました。それは、「事実」「作為」「理解」というような言葉の定義や、それらに付随する葛藤の輪郭をなぞっていくような作業であり、あらためてドキュメンタリーとフィクションの境界というものがいかに流動的で、相互的関係にあるかを感じています。 人が食べるという行為をインタビューを通して観察・分析してきた独立人類学者の磯野真穂さんとの対談では、他者を理解することについて言葉を交わしました。また、現代フランス哲学、芸術学、映像論をフィールドに文筆業を行う福尾匠さん、同じく、映画や文芸を中心とした評論・文筆活動を行う五所純子さん、そして、劇団「ゆうめい」を主宰し、自身の体験を二次創作的に作品化する脚本&演出家・池田亮さんの寄稿では、立場の異なる三者の視点からドキュメンタリーとフィクションの地平の先になにを見るのかを言葉にしていただきました。 対岸の風景を可視化していくこと、まだ見ぬ世界を知覚すること、その先に結ばれた像が唯一絶対の真実から開放してくれることを信じて。そして、今日もわたしは石をなぞる。 小田香 Kaori Oda ー 1987年大阪生まれ。フィルムメーカー。2016年、タル・ベーラが陣頭指揮するfilm.factoryを修了。第一長編作『鉱 ARAGANE』が山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波部門にて特別賞受賞。2019年、『セノーテ』がロッテルダム国際映画祭などを巡回。2020年、第1回大島渚賞受賞。2021年、第71回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。
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2020.03.03
#FREITAG#デザイン#フライターグ#吉行良平#DESIGN#PRODUCT#STUDIO VISIT

STUDIO VISIT
FREITAG創設者マーカス・フライターグさんと行く、
吉行良平さんの仕事の現場 1/3

構成・文: 羽生千晶[MUESUM] / 撮影: 植松琢麿 / コーディネート: 小泉智子 / 通訳: Ryo[FREITAG STORE OSAKA]

スイスを代表するバッグブランド「FREITAG」。1993年、フライターグ兄弟により創設されたFREITAGは、トラックの幌を再利用したメッセンジャーバッグで一躍有名になった。使い古された素材を創造的に再利用する「アップサイクル」のパイオニア的存在として、これまでにバッグ、アパレル、アクセサリーなど、約90ものシリーズを発表している。

2019年12月20日、FREITAGの関西2店舗目となる直営店が京都にオープン。今回paperCでは、来日したFREITAG創設者のマーカス・フライターグ(Markus Freitag)さんとともに、大阪のプロダクトデザイナー・吉行良平さんのスタジオを訪れた。

STUDIO VISIT|FREITAG創設者マーカス・フライターグさんと行く、吉行良平さんの仕事の現場 1/3

マーカス:これはスタジオの名前?

吉行:「Oy(オイ)」は僕と、僕の妻でプロダクトデザイナーの大植亜希子によるレーベル。ジュエリーや日用品の設計・製作をさまざまな分野の職人と行っています。「0」と「y」はふたりの頭文字で、それぞれの仕事場であり、一緒に試作を行う実験室のような場所でもあります。

STUDIO VISIT|FREITAG創設者マーカス・フライターグさんと行く、吉行良平さんの仕事の現場 1/3
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写真上/奥に見えるのは、扇風機のはねの形の観察から生まれた木製うちわ「electric_fan」。木が乾燥する際の反りを利用して自然な曲線を成形した、simple wood product との恊働製品。手前はコーヒーの粉を焼成してつくった器「a cup of coffee」。  写真下/コンセプトに合わせて箱もそれぞれにデザインされるOyのアクセサリー。左手にあるのは画鋲をたたいて金メッキをかけた「oshipin」。帽子や服のピンバッチとして、あるいは壁に刺すジュエリーとして。
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マーカス:並んでいるものどれもおもしろいけど、このシェルフが特に気になります。これは吉行さんのデザイン?

吉行:そうです。「M5 gap」という棚で、天板も骨組みも厚さ5.5ミリのベニヤ板だけでつくっています。

マーカス:
重いものを乗せても大丈夫なの?

吉行:
通常、薄いベニヤ板は保護や養生材として用いられるので、それそのものが構造になることはありません。このシェルフではベニヤ板をシンプルな工法で組み、角などそれぞれの材が支え合うことで強度が保たれるよう設計しています。

マーカス:構造を組むことで強くなっているし、移動するにも軽くて、解体すればコンパクトになる。理にかなっていて、すごくおもしろいアイデアですよね!

吉行:
そうですね。つくるときも材が軽いから移動しやすいし、簡単な装備でつくれる。既製サイズのベニヤ板から切り出すだけなので木材の無駄も出にくい。「誰でも簡単に手に入れることができ、“薄さ”という素材特性をもつベニヤ板で何ができるだろう?」そういうところに着想を得て、自分で手を動かしながらデザインしています。いま目の前にある素材をどう扱うことで、色や形にどういう結果が出るのかも注意している点です。

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マーカス:デザインの勉強はどこで?

吉行:オランダに渡航してスクールに入ったりデザイン事務所で働いたりして、ダッチデザインの思想やプロセスを学びました。たとえば、“not design, design(設計しないデザイン)”とか。オランダには至るところにデザイナーと多様なデザインがあって、刺激的な環境だったと思います。

マーカス:なるほどね。このスタジオのなかにもたくさんのデザインの片鱗が見えるけど、これらの大量のプロジェクトは一体どこからスタートするの?

吉行:まずは、段ボールや厚紙に向かい、手を動かしてプロトタイプをつくることからはじめます。紙は加工しやすく、柔らかく曲げたりもできるので、さまざまな検討ができるのが良いところ。家具などは、ベニヤ板などで実際の加工方法、強度、またボリュームなどを検証しながら、形を整えていきます。実際に製品化する際、プロトタイプの工法、素材を再現するのが難しいこともありますが、その相互のずれからデザインが決まっていくのも、興味深いことですね。

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スタジオの隅に並ぶプロダクトの小さな試作品。段ボールや木材を使用してつくられたもの
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マーカス:この椅子の座面に使われているのはトラックの幌?(FREITAGのバッグはトラックの幌を再利用してつくられている)

吉行:それも良いアイデアですね! でもこれはホームセンターで手に入るダクトテープで、座面の検証をしているところです。実際のサイズで再現することで、クライアントや職人と佇まいなど図面外の部分の共有にもつながります。実際の素材とは違いますが、このテープの雰囲気もおもしろいなと思っています。

マーカス:実は僕もトラックの幌を再利用したアウトドア用の家具を考えたことがあるんだ。トラックの幌は家のなかで使うには機能や質感の面でもの足りない部分があるけど、アウトドアには最適な素材だと思う。吉行さんもベニヤ板やテープといった“素材”という観点からデザインをしているようだけど、ほかにはどんなことにインスパイアされてデザインしているのかな?

吉行:たとえば、このベニヤ板のスツールは、建築家と美術館から依頼を受けて、建築展のパビリオンのために設計しました。僕がつくってきた家具の多くは特注品で、建築空間に合わせて制作したものです。だから使用される建築のコンセプトや空間のサイズ感から着想することが多いですね。

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マーカス:同じベニア板でつくったシリーズでも、さっき見たシェルフは簡単に手に入る素材で、誰でも組み立て可能な仕組み。そういった意味ではIKEAにも通じるものがあるかもしれない。でも特注品の家具は違うプロセスでつくっているよね?

吉行:そうですね。建築空間やそのコンセプトを相手にすると難しい要請が多くなります。工業製品の設計時とは少し違う検証をしているかもしれません。案件ごとに異なる制約があるので、それぞれに形や色を意識しながら試行していきます。

マーカス:なるほど。建築のアプローチが家具に反映されるんですね。

吉行:それから、構造とフォルムのことはよく考えます。たとえば、テーブルでは、天板のサイズが大きくなればなるほど、脚も太く、大きくなっていくものなのですが、同時にバランスの良さが削がれていくように感じます。そこで最近制作したのが、コの字型の構造をもつ、太い木をくり抜いたような形状の脚です。軽量化しつつ、脚のフォルム自体が重い天板を支える構造になるようにと考えていった結果、これにたどり着きました。実際に2400ミリの長さの大きなテーブルの天板を支える脚として使われています。

マーカス:うん、フォルムとサイズ感は重要な問題だよね。スタジオに来るとプロセスが見えるから、吉行さんが着目している点がよくわかります。実際に納品する家具は木工職人がつくっているんですよね?

吉行:試作を重ね、図面、モデルを作成したら、実際に工房に持ち込んで相談します。工場をもつメーカーからの依頼以外は、さまざまな特色をもつ職人さんに依頼しています。プロジェクトに合わせてお願いする工房、工場を選択し、恊働で制作していくことが多いですね。

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写真上/吉行さんが制作してきた家具。ベニヤ板を用いたスツールや木製の椅子など  写真下/厚さ5.5ミリのベニヤ板とネジを使用した「the shelf / M5 gap」。軽量なので解体・組み立ても容易。

記事 02へつづく|STUDIO VISIT|FREITAG創設者マーカス・フライターグさんと行く、吉行良平さんの仕事の現場 2/3

HOST

吉行良平 / Ryohei Yoshiyuki[プロダクトデザイナー]

オランダへ渡り、Design Academy Eindhoven 卒業、Arnout Visser のもとで研修を積み、「吉行良平と仕事」設立。国内外のクライアント、製造会社、職人と協働で家具やマスプロダクトの設計を中心に行う。手を動かし実験、検証を繰り返しながら、あるべき色、形を探る。

吉行良平と仕事 http://www.ry-to-job.com/
Oy
 http://oy-objects.com/

VISITOR

マーカス・フライターグ / Markus Freitag[FREITAG創設者]

1970年生まれ。スイス・チューリッヒ郊外に生まれ育ち、空間デザインのデザイナーとして活動する。1993年、自身と同じくデザイナーをしていた弟のダニエル・フライターグとともにFREITAGを設立。自分たちがデザインのラフを持ち運ぶためのバッグとして、トラックの幌、自転車のタイヤチューブ、車のシートベルトをアップサイクルしたメッセンジャーバッグを考案。現在、世界11カ国で26店舗の直営店を展開。年間約70万点の商品が世界中のユーザーたちを魅了している。

FREITAG  https://www.freitag.ch/ja

FREITAG STORE KYOTO  https://www.freitag.ch/ja/store/freitag-store-kyoto
〒604-8113 京都市中京区井筒屋町400-1
075-708-3693
kyoto@freitag.ch
営業時間:11:00 – 20:00
定休日:不定

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