芸術や芸能と呼ばれる、ある種“役に立たない”とされるものが、端に追いやられてしまう場面が最近よく見かけられます。実際的な利益や数値で文化を測るなんてナンセンスとスルーするだけでなく、そんな事態になっている現在において、私たちが生きるインフラとしての“芸術文化”をもう一度タフに考え、議論することは、これまで芸術文化によって何かしら影響を受け、いろんなかたちで救われた者として積極的にやっていきたいことです。さて、2012年から発行してきたおおさか創造千島財団のフリーペーパー『paperC』が、紙からWebへと移行しました。イベント・展示情報から地域の文化を担う店舗・スポット、活動するつくり手やアーティスト、研究者などなど、大阪の状況を紹介していくWebメディアとして、これからも活動していきます。大阪の芸術文化のいまを考える特集コンテンツもじっくり仕込み中。お楽しみに。
Original Research
2020.04.13
#FOOD#DESIGN#COLUMN

喫む愛嬌

平川かな江
文: 平川かな江 [UMA/design farm]

幼少期の大半を過ごした、おばあちゃん家のリビング(と朝ごはん)に似ている。

喫茶店に強く引き寄せられる理由はこれだけだろうか。おそらくそれは間違いで、自分にとっての喫茶店はノンアルコールしか飲めなくても渋いおじさんと対等に並べる場所であり、レイトショーの後の余韻に浸れる暗くて光の揺らぐ場所であり、パソコンを閉じて静かにぼーっとするための場所である。

 

喫む愛嬌

ここまでは自分自身が喫茶店がいかに好きかという話だが、同世代の女性たちに親しまれる理由はどこか別のところにあるのかもしれない。まずは自分が普段から使用している色見本(日本塗料工業会 2019年K版 塗料用標準色 ポケット版)を持参して、喫茶店の色を拾ってみることにした。以下順不同喫茶の色たち↓

喫む愛嬌

並べてみると、どうやらほとんどの喫茶世界は深い赤茶色で占めてられているようだ。経年変化の結果としての色だとしても、私の落ち着く理由はこの絶妙な深い暖色にあることに気づく。時折アクセントで入ってくる椅子や床の深い赤がそそられる。これらの色だけを抽出して並べてみる。

喫む愛嬌

こうして並べてみると喫茶店それぞれの個性は消える。かろうじて概念のみ。どうやら色だけでは喫茶店のよさは語りきれないようである。もう一度フラットな視点で自分の入る喫茶店の傾向を探すためにカメラロールを見返すと、そこに答えが見つかった。

喫む愛嬌

ロゴタイプとロゴマーク。

これは自分の仕事にもっとも近いグラフィカルな要素だ。趣があるだけの喫茶店は入る人を選ぶ。マスターも熟練となると寡黙な人が多い。ただ、ロゴを大切にメンテナンスしている喫茶店は、そこに人を安心させる愛嬌が存在するのだ。ときには店内のどこかしらにキャラクターが登場して訪れる人をほっこりさせている。喫茶の秩序はこのバランスで保たれている。思わぬところで自分の職業が長生きを支える役割であることを再確認することができた。

喫む愛嬌

次回の研究は「絶妙なロゴデザインの違いはなぜ起きるのか?」かも。

平川かな江/Kanae Hirakawa[デザイナー]

1992年福岡県生まれ。UMA / design farm所属。グラフィック、空間、企画開発などなど担当。自分のご機嫌を取る方法は食事にあると仮定して、美味しいものをつまみ食いする日々を送る。夏はコーヒー、冬は紅茶派。

UMA/design farm http://umamu.jp/

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