天満のギャラリー・hitotoにて、美術作家・城下浩伺の初の作品集『PICTURE-FOCUS』出版を記念した個展が開催される。
城下は京都生まれ、京都在住。京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)情報デザイン学科卒業。絵画の本質を探求するような絵画作品シリーズを展開している。
今回の作品集には、2020年から取り組んでいる2つのシリーズを収録。1つは「PICTURE」シリーズ。支持体に絵具が定着する前のまだ液体として生々しい瞬間を写真で捉え、それをプリントしたものを「絵画」として提示する試みで、2020年に同ギャラリーにて発表された。絵画の本質は「実物」にしか存在しないのか、ディスプレイに表示されるイメージと絵画の違いは何なのか、という疑問から生まれた作品群だ。
もう1つのシリーズ「FOCUS」は、スマホや動画に現れる「ボケ画像」をキャプチャによって捕らえ、それを元に描いた「元画」をアウトフォーカスで撮影しプリントしたもの。新型コロナウイルスの出現により変わってしまった、人や物事との距離感について考えさせられるような作品になっている。
いずれのシリーズも、写真家・三保谷将史との協働により制作された。
会場での展示に加えて、展示期間中は展示の様子をオンライン上でも公開する予定。
ABOUT PICTURE
どこまでが絵なのか
どこから絵でなくなるのか
僕はこれは、まだ絵だと思う絵画の本質とはどこに存在するのか?
これは、SNS などを通してデジタルデバイスのディスプレイで絵を見る機会が圧倒的に多くなってきているここ数年、
持ち続けてきた疑問である。
それは、作品のいわゆる「実物」にしか存在しないのか。ディスプレイに表示されるイメージと「絵画」の違いは何なのか。
「PICTURE」は、支持体に絵具が定着する前のまだ液体として生々しい瞬間を写真で捉え、
それをプリントしたものを「絵画」として提示する試みである。
この行為は、冒頭の疑問を撮影、プリント、展示という工程を経て問うものでもある。
絵画の “本質” が、絵具によって支持体に塗り込められたものとするのならば、「PICTURE」は “本質” をそこから解放する。ー
ABOUT FOCUS
距離感の境界、すっかり見え方が変わってしまった世界
「FOCUS」の着想の元になっているのは、スマートフォンの通信速度制限中に SNS に現れる読み込み完了前のぼやけた写真や、
動画の 1 シーンに映り込んだピンボケ背景などのいわゆる「ぼけ画像(blurred image)」である。
スマートフォンが画像を読み込み終わるまでの数秒間、または動画のカメラワークがパンする瞬間、
目に入ってきたそれらのイメージをキャプチャによって捕らえ、それを元に描いた「元画」を全てアウトフォーカスで撮影してもらい、複数枚撮影した写真から 1 枚を選び出して、プリントしたものが作品となる。
筆致を重ねた絵の画面は、再度撮影・プリントアウトという工程を経る事で積層された情報が統括されてフラットになり、
後にはどこにも焦点の合わない、イメージのエッセンスが残る。これらのイメージに、
私は、新型コロナウイルスの出現を分岐点としてすっかり見え方が変わってしまった世界や、
感染拡大によって感じるようになった人や物事との距離感の不分明さを見る。
会期:2022年1月8日(土)~29日(土)
会場:hitoto
時間:13:00~19:00
休廊:火・水曜
城下浩伺 初の作品集『PICTURE-FOCUS』
展示会場、オンラインショップで限定販売。
3冊組・ケース入り 200部限定
通常版 5,900円(税込6,490円)
スペシャルエディション[ドローイング付き]12,000円(税込13,200円)
大阪市北区天神橋5-7-12
天五共栄ビル301