大阪を拠点に活動する孤独の練習の新作パフォーマンス『モンタージュ』が、京都にあるギャラリー、The sideで2022年7月24日(日)に上演される。前作『柔和なニューワールド』(2021年)の舞台映像上映、トークセッションも同時に行われる予定だ。
『柔和なニューワールド』は北加賀屋・音ビルで2021年12月に開催された。孤独の練習Webサイトによれば、本作のキーワードは「echo(共鳴、模倣、残響)する身体」。出演者それぞれの「身体に宿る記憶」を、語りと身振りでゆるやかに連ね合わせ、動作によるリズムの可視化、歩行、巻き戻しといった独自の幾何学的身体表現によって、日常を歩み続けていく普遍性を描き出した作品である。
劇中では、演者たちが幼少期の記憶や当時の関心事など日常の事柄を話す場面がある。自分の家をDIYで建てたこと、サッカー観戦にのめり込んでいったこと。それらは当人たちの実際の体験なのかは定かではないが、「活発な〈生〉の営み」として浮かび上がり、音ビルの無機質な空間のなかでどこかちぐはぐさ、違和感のようなものを生んでいった。演劇空間において、役者が自らの体験していない具体的な事柄を「台詞」として発することはなんら不思議ではない。「台詞」は役者の人生とは切り離されて受け取られるはずだが、このとき耳にした日常の事柄を話す個々の語りは、なぜかつくりごとではなく「事実」を語っているように聞こえた。
そして、それぞれの語りが各々の実体験のように感じられ、それが役者の固有性を生むなかで、後半に入れば演者全員が為すミニマルな動きがその個別の身体の気配を無くしていく。仄暗い照明のなかでは、目視できるかできないかというほどに微小な身体の動きが、非常にゆっくりとしたペースで暗転するまでの間、何度も反復され、同じ動作を役者たちは同じタイミングで重ねていく。前半の自分語りの鮮やかな描写がかき消されてしまうほど、ストイックな舞台空間に変貌していく瞬間に息をのんだ。
今回披露される『モンタージュ』は、前作の暗転からはじまる世界なのだろうか、暗闇のなかで行われるパフォーマンスを、来場者が配布されたライトで客席から照らし鑑賞する作品となる。前々作『Lost & Found』では、回遊型の演劇空間によって、観客は自由に鑑賞することができたが、今回は観客の視点をさらに利用し、作品の効果にまで作用するという相互の緊張感を伴う試みとなりそうだ。また、会場の京都・The sideは、映像作品専門のアートギャラリーとして多様な表現を受け入れたLumen galleryの跡地で、2022年6月よりダンサーの堀内恵が新たに始動したブラックキューブ。本作は、その空間特性を活かしたパフォーマンスになるとのこと。
鑑賞者が手にする明かりは鑑賞者自身の視線を可視化します。
複数の明かりが存在することで1人では見えない景色が見えるかもしれませんし、
あるいは他者の明かり(視線)がノイズとして感じられる瞬間があるかもしれません。
体験的な鑑賞を通じて、個と個が集まることとは、他者とはどのような存在なのか、を考えてゆきます。
(孤独の練習Webサイトより)
なお、今回のパフォーマンスと取り組みは、孤独の練習が同年12月にTHEATRE E9 KYOTOで予定している本公演『アノニム(仮)』につながるという。京都の地で新たに展開する彼らの活動に、今後も注目したい。
孤独の練習 新作パフォーマンス『モンタージュ』 + 舞台映像上映 & トークセッション
日程:2022年7月24日(日)
開演:①13:00、 ②17:30 ※②は新作パフォーマンスの追加上演のみ
会場:The side
料金:前売2,000円、当日2,500円
予約方法:PassMarketよりチケットを購入
発売期間:2022年6月24日(金)10:00~公演前日23:59まで
※30分前より受付・開場
※①は途中休憩あり
※小学生未満の来場不可プログラム:
①13:00公演回
・舞台映像『柔和なニューワールド』上映
・トークセッション
・新作パフォーマンス『モンタージュ』上演②17:30 公演回(追加上演)
・新作パフォーマンス『モンタージュ』上演のみ
舞台映像『柔和なニューワールド』上映(約80分)
公演日:2021年12月2日(木)~12月5日(日)
会場:大阪北加賀屋 音ビル1階 ガレージ・スペース
撮影・編集:藤原成史(soe)トークセッション(約30分)
登壇:平野舞
ゲスト:筒井潤新作パフォーマンス『モンタージュ』上演(約30分)
出演:大石英史、升田学、松永理央
構成・演出:平野舞
音楽・音響:佐藤武紀
照明協力:吉本有輝子(真昼)
京都府京都市下京区下鱗形町543
有隣文化会館 2F