髙島屋史料館にて、企画展「万博と仏教—オリエンタリズムか、それとも祈りか?」が開催中だ。
近代化を図った欧米列強が、産業振興と国力誇示のため開催してきた万国博覧会。19世紀以降、日本もその潮流に乗り参加を続けてきたが、あらゆる出展作品のなかでも、本展は仏教に関する造形物に着目する。
たとえば、明治政府としてはじめて公式参加した1873年のウィーン万国博覧会では、《鎌倉大仏頭部の張子》や《五重塔の模型》が展示された。また、1893年のシカゴ万国博覧会では《平等院鳳凰堂外観を模した日本館》が建設され、仏教イメージは展示物にとどまらず、パビリオンの外観そのものにも表出。それらから垣間見えるのは、西洋から向けられたオリエンタリズムのまなざしを内面化した、日本の戦略でもある。
しかし一方で、1970年にアジア初開催となった日本万国博覧会(大阪万博)には、仏教を信仰する人々がアジア諸国からも多く訪れた。欧米開催ではあくまで物質的に機能していた仏教関連の展示物が、信仰の象徴として空間に受け止められるということ。それはつまり、仏教イメージが、オリエンタリズムから宗教的な意味合いを帯びる存在へと変化した機会とも言える。
万国博覧会に出展された仏教に関連する展示物を概観しながら、近代における仏教のイメージのありようと、その変遷を考察する本展は12月25日(月)まで。
なお、グラフィックデザインは、大阪を拠点に文化芸術や福祉、地域などの分野で多彩なデザインを展開するUMA/design farmが、展示デザインは同じく大阪で建築・空間設計をはじめ、ものづくりやまちと協働するプロセスに参画するtamari architectsが手がけている。現代を生きるクリエイター陣が、万博と近代仏教の歩みを見つめる視点も感じ取りたい。
会期:2023年8月5日(土)〜12月25日(月)
時間:10:00〜17:00(入館は16:30まで)
会場:髙島屋史料館
休館:火・水曜
料金:無料
主催:髙島屋史料館TOKYO
監修: 君島彩子(宗教学者、和光大学講師)
グラフィックデザイン:原田祐馬・岸木麻理子(UMA/design farm)
展示デザイン:tamari architects
大阪市浪速区日本橋3-5-25
髙島屋東別館3F