枚方市立御殿山生涯学習美術センターにて、美術に関する新たな学習の機会として、全4回のワークショップ「“つくる”をひらく」が開催される。
講師は、関西を拠点に活躍する4名のアーティスト/クリエイター。美術分野だけでなく、デザイン、食なども含む多彩な顔ぶれだ。
いわゆる美術(ファインアート)の領域である絵画や彫刻だけでなく、デザインや料理といった多様なクリエイティブ領域の「つくる」という行いは、たくさんの「体の動き」が関係し合うことで成り立っている。一見すると自分とはかけ離れた存在のように感じる表現・アウトプットでも、実は単純な体の使い方・方法の積み重ねから生まれており、自分の表現と共通する点や参考になる点がある可能性がある。
今回のワークショップでは、講師たちの制作(つくる)に潜むそれぞれのエッセンスをごく簡単な動作・動かし方にまでひらき、実際にその場で手や体を動かし話し合いながら、行為そのものを改めて見つめ直す。
招聘アーティストとプログラム内容
宍倉 慈(ししくら めぐみ)
京都を拠点に、「VOLVER(ボルベール)」という名前で、主に展覧会やファッションブランドのレセプションパーティーへのケータリングサービスを行う。クライアントの表現したいことを汲み取り、食を用いて表現することで、共に食卓を囲む人たちと味覚だけでなくコンセプトを共有し、より記憶に残る食体験を提供している。2022年、展覧会「STONE」開催。
2024年、パレスチナ、ガザ地区で暮らす女性とともに、レシピ本「抵抗のためのレシピ」出版。〈こねる〉
小麦粉の一粒一粒がくっついていく不思議、 もう絶対 に自分の手からこのネバネバは離れないと感じる焦り、でもいつかは必ず離れていき、ひとまとまりのつるんとした丸くて柔らかいものになっていく様など、小麦粉の様子と自分が感じることをじっくり観察できればと考えています。それぞれの時間を生きている私たちが「捏ねる」を共有することで生まれる重なる時間に、捏ねるの他に何を共有できるのか、楽しみにしています。
迎英里子(むかいえりこ)
1990年兵庫県生まれ。2015年京都市立芸術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。屠畜や石油の採掘、国債の仕組みなど、世の中に存在する不可視の現象=システムをモチーフとし、そのメカニズムを等身大の装置へ変換し、動作させることでシステムを実際に作動させるパフォーマンス作品を制作している。
主な展覧会に、国際芸術祭「あいち2022」(2022/愛知)ARTS & ROUTES – あわいをたどる旅-(2020/秋田)OPEN SITE 2017-2018「不純物と免疫」(2017/東京)<ふむ>
ふむという動きは、足で体重をかけて上から押さえる動きであり、交互に足を上げ下げする動きです。じっと足を見る。変化していくタオルの表面を見る。足の裏の感触に神経を集中させる。ふむことに飽きる。
単調な動きから、自身の体の中身と、体が接している外部と、感覚を行ったり来たりさせてみてください。
三重野龍(みえのりゅう)
1988年兵庫県生まれ。2011年京都精華大学グラフィックデザインコース卒業。
大学卒業後、京都にてフリーのグラフィックデザイナーとして活動開始。美術や舞台作品の広報物デザインを中心に、ロゴやグッズなど、文字を軸にしたグラフィック制作を実践。2025年、10年以上の活動をまとめた作品集「龘 / TOU」を出版。現在までなんとか生き延びている。<かむ>
口に歯で、噛む。歯という字は元々は「齒」。
そして「齒」の元となった文字は約4000年前にはもう存在していたそうです。
神馬啓佑(じんばけいすけ)
1985年愛知県生まれ 兵庫県育ち、京都市在住。2011年京都造形芸術大学大学院芸術研究科表現専攻修了。主な展示に、「ワニのためのフーガ:MIKADO2」(京都市京セラ美術館、京都、2024)、「じゃがいもがポテトになる時」(VOU、京都・2022年)、《当然の結末#8 (西賀茂、マザッチオ「楽園追放」》「THE ヨエロ寸-尋-」(VOU、京都・2021年)、「当然の結末#6(共同住宅、個人的体験)」(LEESAYA、東京・2019年)、「当然の結末#2(鑑賞と干渉、言語能力、円周軌道)」(gallery parc、京都・2018年)、「なまの記号たち -ポートレイトの現在形-」(シャトー小金井2F、東京・2017年)、「VOCA展2016」(上野の森美術館、東京・2016年)など。<なぞる>
なぞるという行為には、いろんな発見があります。それは、誰かが切り開いた道に沿って歩いて行くことに似ています。僕は、とても手探りな行為だと思っています。なぞっている手からどのようなことが伝わってくるのでしょうか?
モデレーター
本講座では、モデレーターが招聘アーティストやデザイナーと参加者をつなぐ架け橋となり、対話の促進や議論の整理を通して、より深い学びと気づきを引き出します。豊かなコミュニケーションを育む進行役として、講座全体を円滑に導きます。野口卓海(のぐちたくみ)
美術批評家/詩人。1983年京都市生まれ。2007年近畿大学文芸学部芸術学科造形美術専攻芸術理論コース 卒業。主な展覧会企画として、「有馬温泉路地裏アートプロジェクト」(2013年)、「まよわないために -not to stray-」the tree konohana(2014年)、「松見拓也 写真展 | KASET」hinemos(2015年) 、「METRO WHITE」阪急メンズ大阪(2016年)、「人と絵のあいだ」ALL NIGHT HAPS(2016年)、「みたりのやりとり」マガザンキョウト(2017年)など。現代美術へのアプローチと平行し、デザイン・ストリートカルチャー・音楽といった同時代的な他領域へ積極的に携る活動として、hinemosにも参加。2015年からは写真家・松見拓也とデザイナー・三重野龍とのサイファーのような月刊紙片「bonna nezze kaartz」の発行を開始、同名義で展覧会や作品制作なども行う。松見拓也(まつみたくや)
1986年生まれ。写真家、デザイナー。京都精華大学デザイン学部グラフィックデザインコースを卒業。2010年よりパフォーマンスグループcontact Gonzoに加入。2015年より紙片「bonna nezze kaartz」を毎月発行。2020年、舞台芸術や現代美術の記録とその周辺を扱うコレクティブ slide//showを立ち上げる。主な展覧会に、「so-pho-to」(外/京都・2023年)、「Residence in VOU」(VOU/京都・2023年)など。第25回文化庁メディア芸術祭 アート部門 審査委員会推薦作品受賞。
OPEN ATELIER 「“つくる”をひらく」ワークショップ
日程:2025年7月19日(土)〜8月23日(土)のうちの4日間
7月19日(土)13:00〜15:00 講師:宍倉慈、モデレーター:松見・野口
8月2日(土)13:00〜15:00 講師:迎英里子、モデレーター:松見
8月9日(土)18:00〜20:00 講師:三重野龍 、モデレーター:松見・野口
8月23日(土)18:00〜20:00 講師:神馬啓佑、モデレーター:松見・野口会場:枚方市立御殿山生涯学習美術センター
参加費:各回1,000円(材料費込)
定員:先着 20~30人
申込:御殿山生涯学習美術センター窓口・電話または講座・イベント申し込みフォームにて受付
TEL 050-7102-3135
※プログラムによって申込開始日が異なる主催:枚方市立御殿山生涯学習美術センター(指定管理者 枚方まなびつながりプロジェクト)
枚方市御殿山町10-16