豊中市立文化芸術センターでは、2019年より「今を生きるアーティストとともに新しい芸術体験を創り出す」挑戦的シリーズ〈TOYONAKA ARTS TRIBE〉を進めている。その第4弾となる「TRANCE MUSIC FESTIVAL 2021 -SENSATIONS-」が、2021年2月から4公演にわたって開催される。

今回のテーマ「SENSATIONS（センセーションズ）」は、「世間が興奮し多大な関心を引き起こす／身体器官の感覚」という意味を持つ。演奏されるのは、クラシック音楽の系譜に連なりつつも、聴衆の感覚を直接刺激しトランス状態を引き起こすような作品ばかりだ。

TRANCEをテーマにセレクトした20世紀以降の作品を90分間ノンストップで演奏する公演「時間のTRANCE – NINETY MINUTES –」には、黒田亜樹（ピアノ）、大石将紀（サクソフォン）、有馬純寿（エレクトロニクス）が出演。注目は、クラシックの枠を超えて多方面で活躍する若手作曲家・坂東祐大と、「FUJI ROCK FESTIVAL’20 LIVE ON YOUTUBE」の新人枠ROOKIE A GO GOへの出演経験もある音楽家・Pause Cattiによる共作（新作委嘱）。さらに、スティーヴ・ライヒの代表作《エレクトリック・カウンターポイント》のサクソフォン版や佐藤聰明によるピアノのトレモロ音のみによる《リタニア》をはじめ、全感覚が刺激されるプログラム構成だ。

2公演目の「レガシーのTRANCE – KONTAKTE -」で演奏されるのは、カールハインツ・シュトックハウゼンが作曲した伝説的な作品《KONTAKTE》。演奏者に集中力や負担を強いる大曲ゆえ、日本ではあまり演奏されることがない作品だが、現代音楽演奏のスペシャリストである中川賢一（ピアノ）と宮本妥子（マリンバ・パーカッション）、有馬純寿の熱望により公演が実現した。高度に練り上げられた構造の上で、音が時に波のように、時に空気のようにさまざまな形容で降りかかってる作品の面白さを体験することができる。

締めくくりの「クラブミュージックのTRANCE – トランス・クラブⅡ -」（プロデュース：久保田テツ）は、展示室をクラブ空間に見立て、音楽体験空間を創り出す一夜だけの特別イベント。contact Gonzoから三ヶ尻敬悟がDJ、塚原悠也が映像として出演する点も注目だ。

なお、当初2021年1月28日に予定されていた公演「ピアノとパーカッションのTRANCE」は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により2022年1月21日に延期された。ミニマルミュージックの要素とフリージャズスタイルのようなパートがトランスへと誘うリュック・フェラーリの《Cellule 75》や、スピーチなどのサウンドトラックと生演奏を組み合わせたヤコブTV《The Body of your Dream》などを演奏予定。

「このような状況だからこそ、体感すべき音楽体験がここにある。」として企画された挑戦的シリーズ、普段は音楽ホールに行かない人にも是非体験してほしい。