2025年に開催を控える大阪・関西万博。それ以降も続く自分たちの暮らし・社会を想像し、足元から考えるためのメディア『AFTER2025』が、2022年3月に刊行された。発行元は、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会。現在、全国各地の美術館や書店などで無料配布されている(配布先はマップ参照)。
本誌の監修は、デザイン視点から大阪・関西万博で実装すべき未来社会の姿を検討する試みとして、2021年12月に発足した「Expo Outcome Design Committee」が務めた。チームメンバーは、大阪を拠点とするデザイン事務所UMA/design farm代表の原田祐馬、パノラマティクス主宰の齋藤精一、株式会社RE:PUBLIC共同代表の内田友紀。彼らと並走し、共同企画・編集を担ったのは、大阪の編集事務所MUESUMと、RE:PUBLICが発行するトランスローカルマガジン『MOMENT』編集部。そして、デザイン・印刷設計は芝野健太+松見拓也、そのほか編集協力に竹内厚、イラストレーションに權田直博と、大阪・関西を拠点に活動するさまざまなつくり手が名を連ねている。
大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」。世界中の最先端テクノロジーを集め、地球・社会課題の解決を目指すとともに、地域の経済発展や歴史・文化の発信を図る。そんな大規模なイベントを前に本誌は、「足元から公共を考える」手立てについて、さまざまな実践者の言葉やイメージをもとに誌面を編んでいった。
「INTERVIEW」では、イギリスの社会人類学者ティム・インゴルドにオンライン取材し、「生きた世界の住人として、ともにつくること」と題した記事を掲載。「DIALOGUE」では、人類学者の磯野真穂を聞き手に、dot architects共同主宰の家成俊勝が「お好み焼き建築論」を展開した。ココルーム代表の上田假奈代は、近年取り組んできた釜ヶ崎のおじさんたちとの井戸堀りを、デザインリサーチャー水野大二郎と振り返った。ほかにも、大阪を拠点とするアーティストやクリエイター、研究者、店や場の運営者が、まちや文化のありようをさまざまな視点からとらえる「COLUMN」「VOICE」「PHOTO」といった多彩なコンテンツが収録されている。
巻末に綴られるのは、「AFTER2025は、『ぶっちゃけ万博どうなん?』と『どうせやるんやったら……』のあいだを、今を生きる人たちの声をたよりに、うろうろしながら、あれこれやってみる試みです」というメッセージ。大阪の風景の断片とともに、多種多様な思考が重なって広がり、声となってあちこちで響くような構成・デザインも楽しみつつ、迷い込むように読み進めたい。
CONTENTS
・INTERVIEW|生きた世界の住人として、ともにつくること 01-08
ティム・インゴルド(人類学者/アバディーン大学 名誉教授)・COLUMN 01|私たちが失いつつある大阪ことば 03-04
池永寛明(大阪ガス エネルギー・文化研究所 顧問)・COLUMN 02|大阪のでかすぎる古墳から考える 09
惠谷浩子(奈良文化財研究所 文化遺産部 主任研究員)・DIALOGUE 01|「地べた」はどこからはじまるの? 10-14
家成俊勝(建築家/dot architects共同主宰)
磯野真穂(人類学者)・COLUMN 03|大阪のまちを育てるランドスケーピング 14-15
武田重昭(大阪府立大学大学院 生命環境科学研究科 准教授)・COLUMN 04|「陽気過ぎる大阪」で ―― 祭りと持続 17-18
池田剛介(美術作家/浄土複合)・DIALOGUE 02|おっちゃんたちと井戸を掘ってみた 18-22
上田假奈代(詩人/NPO法人こえとことばとこころの部屋[ココルーム]代表)
水野大二郎(デザインリサーチャー)VOICE
アフリーダ・オー・ブラート(ドラァグクイーン)
石川あき子(書店店主/Calo Bookshop and Cafe)
梅田哲也(アーティスト)
片桐功敦(華道家/花道みささぎ流)
佐伯真有美(ミュージシャン/あふりらんぽ・オニ)
谷内香衣(ファッションデザイナー/futatsukukuri)
土井政司(自転車屋店主/タラウマラ)
服部滋樹(デザイナー/graf代表)
藤井泰玄(僧侶/誓多山 法華寺、サイノツノ)
古谷高治(酒場マスター/TANK酒場・心斎橋PARCO)
水谷綾(ゼネラルマネージャー/TSURUMIこどもホスピス)
薮内都(デザイナー/くふう代表)
山崎紀子(映画館支配人/シネ・ヌーヴォ)PHOTO
赤鹿麻耶(写真家)
大竹央祐(写真家)
辺口芳典(詩人)
仕様:B4判変形/フルカラー/24ページ
発行元:公益社団法人2025年日本国際博覧会協会
発行日:2022年3月31日
発行部数:50,000部(全国の美術館、書店、ギャラリーを中心に順次配架中)
※配布場所はこちらを参照
監修:Expo Outcome Design Committee(原田祐馬・齋藤精一・内田友紀)
企画:原田祐馬
共同企画・編集:多田智美・永江大・羽生千晶(MUESUM)+白井瞭(MOMENT)
デザイン・印刷設計:芝野健太+松見拓也
INTERVIEW編集協力:井上絵梨香(MOMENT)
VOICE編集協力:竹内厚
COLUMNイラストレーション:權田直博
印刷・製本:株式会社ライブアートブックス