本特集では、ドキュメンタリーとフィクションの関係やその境界について向き合いました。それは、「事実」「作為」「理解」というような言葉の定義や、それらに付随する葛藤の輪郭をなぞっていくような作業であり、あらためてドキュメンタリーとフィクションの境界というものがいかに流動的で、相互的関係にあるかを感じています。人が食べるという行為をインタビューを通して観察・分析してきた独立人類学者の磯野真穂さんとの対談では、他者を理解することについて言葉を交わしました。また、現代フランス哲学、芸術学、映像論をフィールドに文筆業を行う福尾匠さん、同じく、映画や文芸を中心とした評論・文筆活動を行う五所純子さん、そして、劇団「ゆうめい」を主宰し、自身の体験を二次創作的に作品化する脚本&演出家・池田亮さんの寄稿では、立場の異なる三者の視点からドキュメンタリーとフィクションの地平の先になにを見るのかを言葉にしていただきました。対岸の風景を可視化していくこと、まだ見ぬ世界を知覚すること、その先に結ばれた像が唯一絶対の真実から開放してくれることを信じて。そして、今日もわたしは石をなぞる。小田香 Kaori Oda ー 1987年大阪生まれ。フィルムメーカー。2016年、タル・ベーラが陣頭指揮するfilm.factoryを修了。第一長編作『鉱 ARAGANE』が山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波部門にて特別賞受賞。2019年、『セノーテ』がロッテルダム国際映画祭などを巡回。2020年、第1回大島渚賞受賞。2021年、第71回芸術選奨文部科学大臣新人賞受賞。
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2021.06.05
#ART#CONVERSATION#大阪市

CONVERSATION|関西若手キュレーターが考える「大阪」

聞き手・文: 羽生千晶[MUESUM]

2021年5月27日、これからpaperCでアートのレビュー記事を担当してくれる3人による放談を収録した。それぞれの手法でアートに携わる3人が、互いの仕事、大阪の文化芸術について、現在の言葉を交わしていく。今回は、今後投稿されるレビューの前哨戦として、3人の放談から一部をご紹介したい。

CONVERSATION|関西若手キュレーターが考える「大阪」

参加メンバー(画像左から)

堤拓也
キュレーター兼グラフィックデザイナーとして活動。大学卒業後、京都造形芸術大学(現 京都芸術大学)が所有するギャラリーにて3年間に渡り展覧会企画に従事したことから、キュレーションの道へ。ポーランドでカルチュラルスタディーズの修士号を取得し、現在はフリーランスで活動する傍ら、京都と滋賀の間にあるシェアスタジオ「山中suplex」のプログラムディレクターの顔も持つ。2021年より国際芸術祭「あいち2022」の共同キュレーターに就任。

はがみちこ
アートメディエーター。2011年、京都市のアーティストサポート事業「HAPS(東山アーティスツ・プレイスメント・サービス)」の立ち上げに携わる。以降、HAPSにてアーティスト支援の活動を続け、現在はフリーランスに。展覧会の企画運営、美術批評の執筆、アーティストの相談役などに従事するほか、キュレーター・遠藤水城氏らとともに立ち上げた「國府理「水中エンジン」再制作プロジェクト」などの活動も。

檜山真有
キュレーター。東京芸術大学大学院国際芸術創造研究科修了。2020年より国立国際美術館に研究補佐員として勤務。大学院在籍時から継続して展覧会を企画し、現在は2つのプロジェクトを進行中。また、昨年はアートレビューの執筆も積極的に行い、アートライターとしても活動の幅を広げている。

「名づけられない仕事」の必然性について

ーー三者三様のアートの仕事。みんな肩書きはどうしてる?

堤:3人ともいろいろな活動をしていますよね。でも、従来的な「キュレーター」という言葉に収まりきらないほどの幅広い活動を、どう実践していくのか。たとえば西ヨーロッパなど、文化事業のインスティチューションがしっかりしてる国では、従事する仕事の縦割りの領域が明確だと思うんですね。ここはキュレーションの領域、ここはメディエーションの領域、と。しかし、日本、あるいは周縁地域ではそもそも「キュレーション」の概念が違う。だからキュレーターという肩書きをベースにして、多くの仕事を担っていくことになるのではないか。おふたりは、ご自身の幅広い活動領域について何を考えていますか?

檜山:私は、肩書きは行為に対して後からついてくるものだと考えています。今はざっくりと「キュレーター」と名乗っているけど、昨年は文章をたくさん書いたので「ライター」と紹介されることも。展覧会やアートの広がり、形態の変化を鑑みると、キュレーターの仕事を正確に定義することは難しい。曖昧なままの言葉として「キュレーター」を使うことが、むしろ自身の活動を広げていくのではないかと感じています。

はが:つまり、ご自身の活動を通して「キュレーション」という概念も拡張されていくということですよね?

檜山:そうですね。私は大学院で、1960〜70年代にニューヨークを中心に活動したセス・ジーゲローブという人をテーマに修士論文を書きました。今で言うインディペンデント・キュレーター兼アートディーラーですが、彼が使った肩書きは「エキシビション・オーガナイザー」。コンセプチュアルアートの作家たちを支えたほか、書籍で展覧会を行う「カタログ・エキシビション」の手法を確立させた人でもあります。ジーゲローブがフィジカルな空間で行う展覧会だけでなく、別のキュレーションを思索していたように、現代のキュレーションにももっと広がりがあるだろうと思っています。

堤:おっしゃるように、キュレーションは形態を問わず可能だと思います。その広がりを示すものとして、僕はプロフィールに「有機性」「有機的」っていう言葉を入れるようにしています。ただ、対外的にはキュレーターと名乗る方がわかりやすい。ただでさえ掴みどころのない「キュレーター」という名称さえも使わなくなってしまうと、いわゆる社会一般と整合性が取れなくなってしまうので。

檜山:そうそう、すごくよくわかります。

Primary Information
セス・ジーゲローブ『Carl Andre, Robert Barry, Douglas Huebler, Joseph Kosuth, Sol LeWitt, Robert Morris, Lawrence Weiner AKA the Xerox Book』PDF download https://primaryinformation.org/product/siegelaub-carl-andre-robert-barry-douglas-huebler-joseph-kosuth-sol-lewitt-robert-morris-lawrence-weiner/

セス・ジーゲローブ『The Artist’s Reserved Rights Transfer And Sale Agreement』PDF download https://primaryinformation.org/product/siegelaub-the-artists-reserved-rights-transfer-and-sale-agreementsh

**画像とキャプションの内容に誤りがありましたので2021年6月14日に修正いたしました。ご指摘くださった読者のみなさま、ありがとうございました。

堤:ところで、「エキシビション・オーガナイザー」という言葉ははじめて聞きました。たしか、ハラルド・ゼーマン(1960年代以降ヨーロッパを中心に国際的な活躍をしたキュレーター)も「エキシビション・メイカー」という言葉を使っていましたね。

檜山:ジーゲローブとゼーマンが影響関係にあったのは確かですが、なぜその肩書きを使ったのかは定かではありません。実は、ジーゲローブがキュレーションに注力した期間は10年間と短く、以降はベトナムの反戦運動を機に政治的な活動へと転向していきます。ここから、彼が「オーガナイザー」と名乗った背景に「オルグする」という左翼的な意味合いがうかがえると考えています。

はが:なるほど、面白いですね。ジーゲローブの肩書きには、当時の反戦運動やヒッピー文化など、時代の気分が影響していた。そうした時代の必然によって、言葉と内容が変容していくわけで。たとえばデザインにおいても、アクティビズムを背景とする実践からキュレトリアルな実践に流れていくという系譜があると思うんだけど、デザイナーとして活動されている堤さんはなにか思うところはある?

堤:姿勢としては共感できるけど、僕はアクティビストではないし、グラフィックデザインの職能を政治に生かそうとは考えていないですね。ただ、ポスターやチラシをきれいにデザインすることに対して「果たしてその程度でいいのか?」という葛藤は絶えずあります。芸術的態度というよりは、より広い意味として……。近年はデザインにおけるクライアントワーク以外の矛先が少なく、表現媒体としてのポスターが成立することはごく稀なケースだと感じていますが。

檜山:ポスターなどの広告ではなく、ZINEやリトルパブリッシングなら表現媒体として機能するのでしょうか。堤さんはやりたいと思ったことはありますか?

堤:ないですね。でも、展覧会と抱き合わせるなら有効な手段になる。アーティストの表現がコンテンツとなり、必然性が生まれてくるので。キュレーター兼グラフィックデザイナーとして、相補的にコンテンツを行き来させることで、僕の活動が成り立っているのかも。マッチポンプ的だけど、社会的な立場が担保されつつ、政治的意義を持ったなにかしらの文化的複合性が生まれていくと思うんですよね。

「類比の鏡/The Analogical Mirrors」
山中suplex Webサイト https://www.yamanakasuplex.com/news/277719

「ISDRSI 磯人麗水」
特設サイト https://isdrsi.com/

堤:「キュレーター」や「デザイナー」も怪しげなものだけど、はがさんの肩書き「アートメディエーター」なんてもっと怪しくない?

はが:そうそう、その謎さがいい(笑)。「アートメディエーター」と名乗るにはふたつのきっかけがあって。ひとつは2015年に京都のアートホステル「クマグスク」で開催されたアーティスト・藤本由紀夫さんの個展に携わったこと。多くの展覧会ではキュレーターがアーティストや作品を招聘して展覧会をつくりますが、そのときは藤本さんが私にお声がけくださって。アーティストがキュレーターを指名するという逆の力関係が心地良かったんですね。

檜山:なるほど。でもなぜそこで「アートメディエーター」に?

はが:キュレーションって強い行為だと思います。当時の私にはその権力を担う覚悟がなかった。そこでアーティストの媒介者になるという意味で「アートメディエーター」という言葉を使いはじめました。「メディア」には霊媒師やイタコ的な意味合いが含まれる。ひとりのアーティストに入り込み共感し、アウトプットにつなげていくという意識でした。もうひとつは、ドイツ・カッセルで5年に一度開催される現代美術展「ドクメンタ」の取り組みを知ったこと。ドクメンタでは、日本の芸術祭でボランティアが担う周辺的なお手伝いや言語的なアウトプットなどの仕事をひっくるめて「アートメディエーター」と呼びます。アートと社会をつなぐ関係者を増やしていくための教育プログラムとして、継続的に使われてきた名称です。

堤:日本ではまだまだ身近ではない言葉ですが、国際的な歴史があるんですね。はがさんが「アートメディエーター」として活動するにあたり、メディエーション=媒介する領域はどこになるんですか?

はが:やはり社会とアートですね。HAPSで働きはじめた当初の動機は、アーティストの拠点づくりのために、物件マッチングの仕組みをつくりたいというものでした。民間の不動産流通=社会の既存システムにアーティストを翻訳しながらつないでいくという仕事ですね。その経験があるため、個人としても対社会を意識しているのかもしれません。そうやって便宜的に「アートメディエーター」と名乗るようになりましたが、きっとおふたりも私も、本来的には名づけられない活動をしている人々ですよね。

堤:そうそう、アーティスト以外の芸術活動をしている“名づけられない人々”だよね。

CONVERSATION|関西若手キュレーターが考える「大阪」
はがが近年執筆した論考「『二人の耕平』における愛」は、美術手帖が主催した「第16回芸術評論募集」で佳作を受賞。写真は、受賞を受けてはが自身が「二人の耕平」オムニバスとして企画した展覧会、⼩林耕平×髙橋耕平「集合 二人の耕平 ⊂ 」(KYOTO ART HOSTEL kumagusuku、京都、2019)の会場風景より photo: Yuki Moriya

論考「『二人の耕平』における愛」
https://bijutsutecho.com/magazine/insight/19772

國府理「水中エンジン」再制作プロジェクト
特設サイト https://engineinthewater.tumblr.com/
京都市立芸術大学芸術資源研究センターWebサイトにて公開中のドキュメントPDF http://www.kcua.ac.jp/arc/wp/wp-content/uploads/2020/12/EitW.re-creation.document.pdf

オルタナティブな大阪はどこへ向かうのか

ーー大阪の印象、今の大阪の文化に足りないものとは?

はが:大阪は、歴史的に民間が強い印象です。商人の街が培ってきた旦那文化というか。だから、芸術文化においても、民間の力でサポートできる土壌があるんじゃないかと思います。まさに千島土地さん(本メディアを運営するおおさか創造千島財団を2011年に設立)もそうです。京都で過ごした学生時代は、ビビッドな活動は大阪にあると思っていました。大阪府立現代美術センターが主催していた芸術祭「大阪・アート・カレイドスコープ」や名村造船所跡地の「NAMURA ART MEETING」、フェスティバルゲートに入っていたアートNPOなど、民間の事業と公共事業が協働していて、京都にはないものがあった。ただ、近年は状況が変化してきていると感じることも……。

堤:最近はちょっと元気がないですよね。僕は(京都寄りの)滋賀を拠点にしているので距離的には近いけど、文化圏的には遠い感覚。大阪に行っても国立国際美術館を観覧してそのまま帰ることが多くて、街へのとっかかりがわからないというか。

はが:堤くんは滋賀の出身なので、京都文化圏の人なのかも(笑)。

堤:京都人の対大阪精神? いや、ないない(笑)。

CONVERSATION|関西若手キュレーターが考える「大阪」

檜山:みなさんの印象はよくわかりますが、大阪出身の私としては「そうじゃない!」と言いたい……。たとえば、開館を控える大阪中之島美術館、民間企業や大阪大学が母体となるアートエリアB1の活動など、文化の街としての中之島の展開は楽しみですよね。問題は、アーティストが少ないということだと思うんです。東京や京都と比較すると美大も少なく、若いアーティストが活躍できる場所も足りない。アーティストが育っていく土壌が醸成できていないと感じます。

堤:うんうん、単純に若手が展示できるスペースがないよね。京都は公立の芸術センターがあって、若手がある程度のバジェットで展示できる余地がある。大阪にはあるのでしょうか?

はが:かつては、大阪府立現代美展センターがその機能を持っていて、現在は大阪府立江之子島文化芸術創造センターが引き継いでいるけど、予算的・制度的に充実した環境で活動できているかというと、違うだろうと思います。また、行政的な枠組みで支援プログラムを構想する大阪アーツカウンシルもありますが、目に見える状況として成果が現れるには時間がかかるもの。現状としては、都市規模に対して公立の文化施設・制度が足りていない印象が否めない。一方で、民間の“よくわからないけど楽しい”場所、カフェなどをベースにしながらライブや展示を行うオルタナティブスペースは充実してるんじゃない?

檜山:たしかに、いわゆる現代美術的なオルタナティブスペースというよりは、本屋だけど展示もやってるとか、領域横断的なスペースが多い印象がありますね。

はが:新しいスペースがどんどん生まれ、活発に新陳代謝し移り変わっていく印象です。檜山さんが指摘するように、公立の美大がなくプロパーのアーティストが少ないのは事実かもしれませんが、京都がインサイダーアーティストで固められているのに対し、限界芸術的・領域横断的な活動がアートの枠組みに入ってくるのが大阪の面白さ。たとえば、私が好きな音楽家・メディアアーティストの米子匡司さんは、ご自身の制作活動のほか西九条の倉庫を改装したオルタナティブスペース「FLOAT」での実験的な取り組みや、最近では、此花にあるシェアハウス・店舗・上映室などの複合的な施設「PORT」の運営もされています。そうした美術館や制度をはみ出す活動も評価されていくのが大阪の土壌の底力と言えるんじゃないかな。

CONVERSATION|関西若手キュレーターが考える「大阪」

堤:なるほどね。そのとき、なにに対してのオルタナティブなのかという点が重要なのではないでしょうか。大阪において文化制度の象徴となる施設は国立国際美術館。であれば、国立国際美術館に対してのオルタナティブになるのか……。全体のバランスのなかでどこに対しての別の選択肢なのかを考えていく必要があると思うんですよね。

檜山:もし大阪に特徴づけられるオルタナティブな活動が、国立国際美術館に対しての別の選択肢だったとしたら、さすがにスケールが小さすぎるのでは……。京都の「HAPS」や滋賀の「山中suplex」の場合は、なにに対してのオルタナティブだったのでしょうか?

はが:現在は一般社団法人になったHAPSですが、基本は京都市の文化事業を母体としています。京都市にはすでに「京都芸術センター」があり、京都市立芸術大学のギャラリー「@KCUA」や美術館もあったので、ハードとしての展示場所をこれ以上増やすのではなく、ソフト=アーティストが活動しやすい環境創出のサポートを手がけようという試みでした。そういう意味では、既存のハコモノ文化政策へのオルタナティブと言えるかもしれない。

堤:山中suplexとしては、延暦寺*を意識していて……。冗談みたいだけど、そうなんですよ。宗教性を高めて独立的態度を保った結果、めちゃめちゃ強くなった歴史があるじゃないですか。そういうのを僧兵っていうんですけど、意識としてはそんな感じ。いつでも京都に攻め入ることを想定している(笑)。だから、まず身近なところとして、京都に対するオルタナティブとしていますね。

檜山:いい話ですね(笑)。時代的な流れでいうとすごく大きな話ですよね、延暦寺なんだから。

堤:より広い視野では、西ヨーロッパのオルタナティブなどの文脈を汲むことはできるかもしれませんが、「京都のオルタナティブ」「国立国際美術館のオルタナティブ」というような身近なスケールも必要だと思っていて。大阪の現代美術に関しては、国立施設と領域横断的なオルタナティブスペースの中間として、中規模の文化施設が活発になっていけばと思うんですよね。“中間”がないからとらえづらい、オルタナティブな活動も効いてこない。領域横断的な存在が映えるためには、ガチの形式主義者みたいなものがいるでしょう? 設定上ね。

*後日談より・・・本対談を収録した数日後、堤は十数年ぶりに延暦寺へ赴いた。“伝教大師「最澄」が天台宗を開いた動機とその発展系を目の当たりにし、「意識している」だけで畏れ多いことを体感した” という。

CONVERSATION|関西若手キュレーターが考える「大阪」

ーーこれからの大阪に必要なものは?

檜山:はがさんが先ほど指摘したように、大阪は民間が強い。それって「自分で稼がないとやっていけない」ということの裏返しなのではと思います。でも、アートは本来的にそういう性質ではない。だから「税金を使っている」など、社会に対する負い目を感じやすいのではないでしょうか。大阪の文化行政がアンバランスだという話は方々で耳にしますが、一方で、大阪で生まれ育った自分としては、身もふたもないけれど、芸術がなくても楽しい街だと思うんです。芸術で盛り上げていこうと言われることに対して、「こっちはすでに別のことで盛り上がっているので興味がない」というのが市民の声なのかもしれません。

はが:なるほど。では、アーティストや美術関係者たちプレイヤーが少ない、しかも負い目を感じやすい環境で、どのように活動していけばいいのか……。近年の京都で顕著なのが、伝統への意識です。過去と現代をつないで語り直すことで、現代の実践に対してオーセンティシティを付与するような行為が増加傾向にあると感じます。少し前の世代は伝統への反発としての意識が強かったと思うのですが。大阪においても、これまでの歴史と今をつなぎ語り直していくことはできるのでしょうか?

檜山:現代美術の場合は欧米にコンテクストがあるという大前提もありますが、ローカリティも重要だと思います。京都と大阪で比較すると、大阪は河内・和泉・摂津と3つの分け方でそれぞれの文化圏がつくられていきました。対して、京都は平安京という洛中の上に歴史が積み重なっている。歴史のレイヤーが分散されているという点で、大阪の歴史を考えていくことは重要だと感じています。自身の今後に関しても、どこに拠点を置くかというよりは、歴史のレイヤーにおいてどこに立ち、どのように編むことができるかを意識していますね。

はが:たとえば、大阪にはアジア諸国と貿易でつながってきた歴史がある。そういったところから世界に目を向けたアプローチで、文化的なネットワークを見出していくこともできるのではないでしょうか。すでに取り組んでいる方もいらっしゃると思いますが、大阪の文化芸術の歴史をひもとき、組み直していける可能性はまだまだあると思いますね。それにより日本だけでなく、アジアや世界のなかでの大阪という都市の特異性を見出すこともできるようになる。

堤:そういう意味では、2009年からクリエイティブセンター大阪で行われてきた「DESIGNEAST」はいいネーミングだよね。大阪は国内では「西」とされるけど、世界に目を向ければ「東」に位置づけられる。世界における大阪を見直していく取り組みが、すでにデザイン領域にあったということは、アートとして参照すべきだろうと思いますね。

堤拓也 / Takuya Tsutsumi
1987年滋賀県生まれ、大津市在住。2016よりポズナン芸術大学(ポーランド)にて1年間のレジデンスを経て、2019年アダム・ミツキェヴィチ大学大学院修了。主なキュレーション実績に「類比の鏡/The Analogical Mirrors」(滋賀、2020年)、「ISDRSI 磯人麗水」(兵庫、2020年)など。展覧会という限定された空間の立ち上げや印刷物の発行を目的としつつも、アーティストとの関わり方を限定せず、自身の役割の変容も含めた有機的な実践を行っている。2021年は、山中suplexに関する展覧会が8月(東京)と10月(京都)にある予定。

はがみちこ / Michiko Haga
アート・メディエーター。1985年岡山県生まれ。2011年京都大学大学院修士課程修了(人間・環境学)。『美術手帖』第16回芸術評論募集にて「『二人の耕平』における愛」が佳作入選。主な企画・コーディネーションとして「THE BOX OF MEMORY-Yukio Fujimoto」(kumagusuku、2015)、「國府理「水中エンジン」再制作プロジェクト」(2017〜)、菅かおる個展「光と海」(長性院、Gallery PARC、2019)など。京都精華大学非常勤講師。浄土複合ライティング・スクール講師。

檜山真有 / Maaru Hiyama
1994年大阪市北区生まれ。東京芸術大学大学院国際芸術創造研究科修了。とらえがたいものの影響により起こる循環がどのように世界に影響を及ぼすのかを見たくて文化芸術に携わっています。2021年は本と展覧会をつくる予定です。2020年はWeb版美術手帖とFASHIONSNAP.COMで連載をしていました。

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檜山真有
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