Fujimura Family(以下、FF)が写真集『PROOF OF LIVING』を自費出版したのは2020年のことだった。詩人の味果丹(あじかたん)とそのひとり娘、愛猫を、アーティスト・Dai Fujimuraが撮影。10年にもおよぶ生活の一場面の蓄積を束ねたこの本は、2021年にマージナルプレスより再出版・全国流通される。
FFの現在を知るために、まずこの1冊の成り立ちから紐解いていきたい。2022年9月、兵庫・加西voidで開催された『PROOF OF LIVING』出版記念展示ツアー第2弾「Futrure Self」を訪れ、ふたりにインタビューを行った。目まぐるしく変化していくFFの、2022年の記録その1。
ツアーに出る理由
――出版記念展示ツアー2022、第1弾は2022年7月に大阪・田辺LVDB BOOKSで「Soul dress up」、第2弾が今回の「Future Self」。写真集のなかの作品も出しつつ、FFの現在をたどるような展示にもなっていますね。
味果丹:どちらかというと、ツアーをしたかったのよね。
Dai Fujimura(以下、DF):そう。「出版記念」って掲げたら、ツアーの体になりやすいというのはあったけれど、一般的な出版記念の展覧会、写真集に載っている作品だけを展示するみたいなんは、あんまりしたくないなと思って。出版以降につくった新作も発表するきっかけがほしかった。
――なるほど。なぜツアーというかたちに?
DF:話すと長くなるんですが、マージナルプレスから本を出す前に、キヤノン写真新世紀で2021年度佳作賞(グエン・リー 選)をいただいて。それまでずっと、「賞をとる」ということを意識していたんですよ。味果丹はまったくそういう意識がないんですけど、僕は男の権威みたいなものがすごい気になってしまうたちで……。写真新世紀がその年で終わるというのを聞いて「今や!」と応募しました。
――そのときに、2020年に自費出版した『PROOF OF LIVING』を送ったと。
DF:そうです。写真集と一緒に動画もつくって送って。で、さらなる目標として、「出版社から写真集を刊行する」というのがあって、出版するなら「マージナルプレス」からと思っていた。ただ、マージナルプレスはいわゆる出版社のように、企画から流通まで手がける形態でもなく、そのとき活動も休止していたんですよね。ところが、2021年のTOKYO ART BOOK FAIRに出展した際に、たまたまスタッフをされていたマージナルプレスの大智由美子さんが、僕たちを見つけて、写真集を買ってくれたんですよ。それから連絡を取り合うようになって、出版の話をしたら「じゃあ、マージナルプレスをもう一度復活させて、写真集をつくりましょう」と言ってくださった。そうして、『PROOF OF LIVING』の出版が決まったんです。
――受賞も出版も、着実に。
DF:ありがたいことに。でも、ふと「これはキリがないぞ」と。誰かに評価を求める姿勢みたいなものを、だんだん自分自身に感じるようになっていったんですよね。それって、軸が「自分」ではなくて、自分があこがれるような権威ある「誰か」にあるということ。これは、ちゃんと自分のことを自分で評価できていないなと。本がいろんな場所で売れて、知らない人が「見たよ!」って反応をくれる嬉しさの裏に、活動の初期にやっていたような、一人ひとりの顔を見て手売りすることをまだやりきれていないんじゃないか?という気持ちもあって。
――それでツアーをしたいと思った?
DF:ツアーとして、自分たちのやりたいタイミングで、やりたい場所で、やりたいかたちでやる。そして、来てくれた人に対して、説明をしたり、コミュニケーションを取ったりしたいと思ったんです。LVDB BOOKSの展示のときも、お客さんが「SNS見てます」とか「すごく感動した」と正面から言ってくれて、「こんなに見てくれてる人がいたんや」と嬉しかった。ほんまにやってて良かった、諦めんで良かったなって。
味果丹:泣いてる(笑)。
DF:ちゃんと自分を認めるということを、すごくアナログ的にやろうというツアーやったんですよ。なんかめっちゃ長くなったやん(笑)。
Dai Fujimura(芸術家)と味果丹(詩人)によるアーティストペア。
写真、映像、詩、陶芸などを軸に様々な要素を用いて生きる証明をそのままに表現する。今だけがここにある。”何があっても希望そのもの”instagram ID: ff_fujimurafamily