私の唇はあなたの耳に、あなたの手は私の手となり、
私たちが作った影の下で動く言葉

My lips to your ear, my hand on yours,
the words moving underneath the shadows we made.
(from On Earth We’re Briefly Gorgeous by Ocean Vuong)

　今回のパフォーマンスのタイトルとして、英語の読めない母親に宛てた手紙という形式で書かれたOcean VuongのOn Earth We’re Briefly Gorgeousという小説から一部を引用しました。日本語のタイトルは、今回のパフォーマンス、また自分が近年一貫してダンスを通じて行っている実践のコンセプトに寄せて私が意訳したものです。

　この文章は、ベトナム戦争の後、ベトナムから移民としてアメリカに移住した家族の息子であるOceanが、小さい頃、英語を母国語としない子供へ向けた英語の課外授業で、先生が自分の手にその手を重ねて英語の文章を書き、それを耳元で発話しながら、英語をどの様に書き、どの様に読むのかを教えてくれた経験を基に、家に帰った後、英語を読むことができず、また満足に話すことの出来ない母親に自分の身体を使って同じように教えようとしているシーンの描写です。そして、この試みの後、なかなか上手く発音できない母親は、そのフラストレーションと母と子のヒエラルキーが逆転したような状況に耐えられず、息子にまた手を上げます。この、相手の体を自分のものの様に扱い、また自分の体を相手のものの様に差し出し新しい言語を手に入れようと境界が曖昧になった身体を動かす行為が、まさに自分がここ最近実践している、体を匿名化させその一部をハッキングし共有し合い、リサイクルを試みることと同じものとして感じられました。

敷地理「タイトルについて」より一部引用
（公演で配布された作品パンフレットに掲載）

敷地理｜Osamu Shikichi

振付家 / ダンサー。ベルギーと日本を拠点に活動。東京藝術大学大学院修士課程修了。P.A.R.T.S. (STUDIO/MA)に在籍。身体をメディアとして、強い現実感を生むことを主題に作品制作を行う。主な発表に『happy ice-cream』(横浜ダンスコレクション2020) ､『shivering mass, loose boundary』(TPAM2020フリンジ) ､『blooming dots』(豊岡演劇祭2020フリンジ／CAF賞2020／TPAM2021フリンジ) 、『ama phantom』(BankART KAIKO)など 。主な受賞に「横浜ダンスコレクション2020」若手振付家のための在日フランス大使館賞受賞など。また様々な分野の作家が共同し、ダンスを主としたパフォーマンス作品を作ることを目的としたコレクティブなプラットフォームとしてHyper Ambient Clubを主催し、同時代性を持った実験的な活動を行うことを目指している。
https://linktr.ee/osamu_shikichi

Hyper Ambient Club 2023

私の唇はあなたの耳に、あなたの手は私の手となり、
私たちが作った影の下で動く言葉

My lips to your ear, my hand on yours,
the words moving underneath the shadows we made.

日時：
2023年2月24日（金）19:00*
2023年2月25日（土）14:00 / 19:00*
2023年2月26日（日）14:00

会場：CCO クリエティブセンター大阪
*の回のみDJを迎えてambient talkなどを含んだアフターパーティーを実施

演出・振付：敷地理
共同リサーチ・出演：宇津木千穂、小倉笑、境佑梨、黒田健太、敷地理、藤田彩佳
ムーブメントリサーチ協力：保井岳太、服部天音、大迫健司、Ching Shu Huang
ドラマトゥルギー：朴建雄
DJ：uxyagkcolbgof
寿司・ドリンク：羽渕聖人（ブリニカン+Mother’s milk）
展示作家：浅尾鷹哉
舞台監督：小林勇陽
アーカイブ制作：Nishi Junnosuke
制作：眞鍋隼介
演出・振付助手：境佑梨
グラフィックデザイン：山岸由依
記録写真：manami tanaka
当日上演サポート：瀬藤朋
当日運営協力：菅一馬、Hiroki Tarumi（萌花）、保井岳太、原田佳苑、島田千晴
特別協力：伴朱音
助成：一般財団法人おおさか創造千島財団
企画・制作：敷地理
主催：Hyper Ambient Club