大阪市内のまち全体を会場とする回遊型イベント「DESIGN WEEKEND OSAKA(デザインウィークエンド大阪)」が、2024年 9月13日(金)から16日(月・祝)まで、初開催。プロダクトやインテリアなどのデザイナーや建築家、空間やインテリアにまつわる企業、学生などさまざまな出展者36組により、各々がデザインをテーマに企画した展示や催しが行われた。合計36イベント、延べ2500人の来場者が訪れた。
仕掛け人は、江口海里さん(株式会社江口海里スタジオ・代表)と福嶋賢二さん(株式会社ソルトコ・代表取締役)だ。ふたりとも、大阪を拠点に活動するプロダクトデザイナーで、親交も深い。どのようなきっかけでイベントは誕生したのだろうか?
「プロダクトや建築、インテリアなどデザインの領域を横断したり、大阪を中心とした関西の中小製造業とデザイナーとの接点をもっと強くしたりすることができる、そんなデザインイベントを大阪でつくりたかった。実は、2023年に福井県の鯖江で開催されているオープンファクトリーイベント『RENEW』に行って衝撃を受けたんです。車がなければ行けない場所に、何万人もの人が訪れて、そこで町を気に入ったり、工房を気に入った人が移住したりするケースもある。僕の記憶だと、大阪市内でそうしたイベントが行われたのは、2019年の『まちデコール』が最後。もう一度大阪に火をつけて、盛り上がれるような場をつくりたい。関西圏にいる、意欲のある学生にきっかけとなる出会いの場になればとも思った」と江口さんは話す。
このイベントのユニークなところは運営の仕組みにある。事務局が不在の「自律分散型イベント」なのだ。「自律分散型」の意味をGoogleで検索してみると、“組織やネットワークなどの構造が中央集権型ではなく、メンバーや個人が自律的に活動する形態”ということらしい。
デザインウィークエンド大阪の設定期間中に開催する、デザインにまつわる企画であれば、誰でも参加が可能。エントリー方法は、自分自身で専用のフォームに企画内容を入力するだけ。審査もなく、参加費も無料。オープンソースのサイトのようにシンプルだ。
目指したのは、オープンでフラットなコミュニティによるデザインイベント。仕掛け人のふたりが行ったのは、Webサイト構築と、出展者同士がオンライン上でコミュニケーションが取れるディスコードの管理のみ。イベント開催日を決めてしまえば、興味のある人たちが集まってきて、自分たちで企画を登録し、好き好きに表現を楽しめる状態が生まれる。持ち寄りパーティーに近いかもしれない。
「自律分散型という形態をとることで、幅広い情報発信ができるだけでなく、誰もが長く続けていくための運用体制が持続できるようになります。重くなりがちな事務局の負担も軽減され、参加者が自分を生かせる環境になっていくのではないでしょうか」と江口さん。
公式サイト上でも、マップを掲載して回遊を促している。お客さんにとっても、ひとつの展示を観に行くことがきっかけとなって、周辺で開催されている、個々の興味と関心に関連性の高いほかのイベントも同時に周遊できる機会になるのは嬉しいはずだ。
江口さんは、初開催の手応えも感じている。今回の出展者である北浜のBAR FORT HORSEが、期間中には参加したデザイナーたちが集まるたまり場になっていたそうだ。そういう場の生まれ方もユニークでいい。アイデアと企画内容次第で、「デザイン」の解釈も広がりそうだし、想像力を広げてみれば、どんな関わり方も可能なのだ。
この仕掛けはさまざまな可能性を秘めている。「自治体や公共インフラなど、どんな個人でも団体でも、関わりしろはいくらでもあります。お互いができることやメリットを交換し合えたら、今までにないイベントに育ちそう。この仕組み自体もデザインと言えるかもしれないですね」と江口さん。来年以降も、より一層盛り上がりそうな予感がして楽しみだ。
日時:2024年9月13日(金)〜16日(月・祝)
会場:大阪府内各所次回開催予定
日程:2025年9月11日(木)〜14日(日)
会場:大阪府下
※変更となる可能性もあり