スペシャルティコーヒーとクラフトチョコレート、スイーツをメインに提供するショップ「YARD」が、新たな店舗「YARD Coffee House」を2023年1月6日(金)、浪速区元町にオープンした。
メインショップとなる天王寺のYARDに続き、ロゴ・グラフィックデザインはUMA / design farm、店内で使用するオリジナルコーヒーカップのデザイン・制作をNOTA&designが担当。内装デザインは、オーナー・中谷奨太氏の友人である田邊渉のWATARU TANABE STUDIOが新たに手がけた。店内は白を基調とし、建物が持っていた木部を生かしたあたたかみのある雰囲気が特徴だ。奥まで続くエッジの効いたカウンターや、柱のラインに合わせた照明の整然とした佇まいのバランスは、心を落ち着かせてくれる。また、不思議なねじれのあるコーヒーカップの形状は、制作の過程でひとつずつ変形を加えて生まれたもの。飲みながら何度か持ち上げているうちに、ねじれの起伏に自分の手がフィットする箇所を見つけ、ふつふつと愛着が湧いてくる。
2019年4月に天王寺にオープンしたYARD初の店舗は、シングルオリジンのスペシャルティコーヒー、産地別カカオの特徴を生かしたクラフトチョコレート、素材を重視したできたてのスイーツの3つを軸にしたメニューを展開しており、そのおいしさに惚れ込んだ人々が連日賑わう人気店となっている。対して、今回誕生したYARD Coffee Houseは、コーヒーにフォーカスした店舗。自家焙煎した豆で淹れたコーヒーを楽しむことができ、コーヒー豆、焼き菓子を購入することができる。中谷氏が丁寧にドリップしたコーヒーをいただきながら、オープンに至るまでどのような経緯があったのか尋ねてみた。
「YARDをオープンした当初は、以前勤めていた「GLITCH COFFEE & ROASTERS」で焙煎された豆を仕入れ、コーヒーを提供していました。でも、いざお店をはじめてみると、良いと思う豆を選び、調理する工程を、自分でもやってみたいという想いが強くなって。開店1年後には、焙煎所をつくることを具体的に考えていましたね」
原材料や素材を大切にしているYARDがコーヒーを突き詰め、豆の選定から焙煎までを手がけることになったのは、自然な流れだろう。その後は、自家焙煎のコーヒーを取り扱うaoma coffeeに通い、シェアローストという方法で焙煎機を時間貸りしながら、焙煎の研究と技術を高めていくと同時に、YARD Coffee Houseの開店準備を進めていった。
なお、現在は、中谷氏がaoma coffeeで焙煎した豆を使用しているが、ここは「焙煎所」。コロナ禍の影響もあり到着が遅れているという、オーダーした焙煎機を待っているところだそうだ。「お店の奥にドイツ製の焙煎機を導入する予定です。お客さんが訪れる営業時間中も焙煎しようと思っているので、その様子や豆が焼ける独特の香りを楽しんでもらい、よりコーヒーに興味をもってもらいたいですね」
YARD Coffee Houseでは、来店客に向けたハンドドリップのワークショップなども定期的に開催している。そこには、家でもコーヒーを楽しんでほしいという中谷氏の想いがある。
「YARDのコーヒーは、毎日でも飲みたくなる味を目指しています。コーヒーは、ほっとしたり、気持ちを切り替えたり、さまざまなシーンで充実感、幸福感を与えてくれる唯一無二の飲み物。店頭で楽しんでいただくことはもちろん、一歩踏み込んで、ぜひ暮らしにも取り入れてほしいんです」
これまで全国のポップアップやイベントに参加するなかで、大阪における豆の購入率の低さを体感したという中谷氏。自身が生まれ育ったまちで、コーヒーを身近に楽しむ習慣を根づかせていくことは、YARD Coffee Houseでのひとつの目標だという。「ワークショップでは、僕が講師となって、参加者を2人までお迎えし、丁寧に伝えることを大切にしています。訪れたお客さまからも嬉しい反応をいただき、手応えを感じていますね。地道な活動ですが、細く長く続けていきたいです」
コーヒーを抽出する時間や香りを愛でる豊かさを、より日常にも取り入れるべく、今度はワークショップにも参加してみたいと思う。YARD Coffee Houseが、これからどのようなコーヒーカルチャーを発信しつくっていくのか、引き続き注目していきたい。
営業時間:11:00〜18:00
定休日:火・水曜
YARD Coffee House
大阪市浪速区元町3-12-11