ナチュラルワインのセレクトショップ「イル・ソッフィオーネ」が、2023年1月23日(月)に京町堀から中之島へ移転し、あわせて直営のワインバー「su(スー)」をオープンした。
移転先は、かつてクリエイティブユニット・grafが入居していたビルの1、2階。1階がショップ、2階がワインバーとなっており、内装のディレクションをNOTA&design、設計を建築家の加藤正基が担当。ロゴデザインはUMA/design farmが制作した。木工作家の梅本敏明が手がけた重厚なカウンターテーブルを中心に、照明やソリッドなスツール、のびやかな植栽など細部に至るまでが洗練された空間でありながら、大きな陶器のタイルで仕立てられた、バーカウンターの柔らかな色調は、リラックスした雰囲気を醸し出している。ワインボトルが2つ並んでいるような、人が楽しく肩を組んでいる姿のようなロゴデザインも、まさにこの空間を表現しているようだ。
イル・ソッフィオーネのソムリエであり、オーナーである三吉隼人氏は、イタリアにてソムリエの資格を取得。その後2012年に、日本では珍しいイタリア全土20州のワインを取り揃えるワイン専門店として、イル・ソッフィオーネをスタートした。しかし、ワインショップだけでは、自分が伝えたいワインの魅力を伝えきれないという課題も感じていたそうだ。
「ワインを買ってもらうだけじゃなくて、その場で飲んでもらいながら、味わいや産地のこと、楽しみ方を伝えたい。そう思い、一度はお店の一画で角打ちをはじめたんです。ただ、前の店舗は12坪という狭いお店でしたし、自分ひとりで切り盛りする難しさもあって。結局、営業も運営も中途半端になり、諦めてしまいました。でも、オープンから10年が経って、あらためて挑戦したい気持ちが芽生えたんです」
そこからはじまった物件探しで、現在の移転先に出会う。想定よりも広い場所だったが、川沿いの心地よさや、キタでもミナミでもない大阪のなかでも中立的な雰囲気が気に入った。そして、アートやデザイン、飲食など独自にクリエイティブな活動を展開してきたgrafがあった、自身も含め多くの人が訪れていたこの場所からワインを発信したいと決意したという。
「大阪にもナチュラルワインを提供するお店が増えてきていますが、それでも数としてはまだまだ少ない。レストランなど、しっかりご飯を食べながら飲めるところがほとんどで、ナチュラルワインそのものを楽しむとなると、ミニマムでアットホームなお店がいくつかあるくらいです。だからこそ、大箱のワインバーをつくることにも挑戦したくなりましたね」と三吉氏は話す。
その後は、三吉氏がセレクトを手がけている淡路島のワインショップ「wine no ten」でも空間ディレクションを手がけたNOTA&designの加藤駿介に依頼し、店づくりを進めていった。「su」という店名も、加藤との対話から生まれたもの。当初はイタリアのまちの名称などを候補に考えていたが、どれも長く覚えにくさもあったため、親しみやすい店名を模索した。ちなみに、「su」はイタリア語で「上がる」や「登る」を表す言葉。「2階へ上がる」という、バーへと誘うストレートな意味合いのほかに、気持ちを上げていくという意味合いも含まれており、ワインを飲んで談笑しているようなシーンも彷彿とさせる。
店内では、種類豊富なワインを、su担当の喜瀬川萌未氏が信頼を置く店のシャルキュトリーやリゾット、肉の煮込みなどの料理とともに楽しむことができる。スタッフと対話しながら座ってワインを楽しめるバーカウンター、立ち飲み用のカウンター、ベンチ、テーブル席、個室が用意されており、ひとりや少人数で気軽に一杯を楽しんだり、大人数でテーブルに集い、ワインを片手に語らったりと、多様な使い方ができるのも魅力的だ。
「老若男女問わず、いろんな人に来てほしいと思っていたので、気負わず立ち寄ることのできる場所を目指して空間を考えました。肩肘を張るようなワインバーではなくて、洗練されているけれど、フラットにワインを楽しめるお店として、若い人にも、今まで飲んでこなかった年配の方にも利用してもらいたいと思っています」
また、今後はワインバーの営業に加え、店の広いスペースと、ワインショップを併設した特徴を生かし、料理人を招いたポップアップイベントや料理教室の開催も予定しているそうだ。
「ワインを購入いただいたお客さんから、『どんな料理とあわせたらいいですか?』と質問を受けることが多いんです。僕も、ナチュラルワインは食と一緒に楽しむことがベストだと思っているので、家での楽しみ方を提案することにも力を注いでいきたいと思っています」
取材日とは別の夜、「su」を訪れた筆者。暖色の灯りのなか、空間を自由に使いながら、ワインを楽しむ人の姿がとても印象的だった。ワインバーのオープンをきっかけに、その楽しみ方を多角的に伝え、広げていく三吉氏。この場所は今後、大阪のナチュラルワインのランドマーク的な存在になっていくのかもしれない。
営業時間:18:00〜
ラストオーダー:フード 22:00 / ドリンク23:30
定休日:月・火曜(不定休)
問合:06-6131-5999
大阪市北区中之島4-1-18-2F