枚方市の御殿山生涯学習美術センターでは、作家と市民がともに「つくること」を通じて造形思考に触れ交流する企画展「アトリエ美術館」を継続的に企画している。25回目となる今回は水墨画家・髙橋良を迎えて、展覧会「onomatopeia map」を開催する。
髙橋は1979年滋賀県生まれ。第13回岡本太郎現代芸術賞入選のほか、海外を含めた個展の開催、グループ展・企画展への参加、舞台美術など幅広く活躍している。人や動植物の生や死を生々しく感じさせる作風が特徴的だ。
同センターのある御殿山には戦前〜戦中、大阪美術学校があった。その校長として多くの画家を育てた日本画家(南画家)の矢野橋村(やの・きょうそん、1890-1965)のゆかりの地でもある。
今回の制作にあたり、髙橋は矢野の南画に触れ、南画の水墨画+詩+書という表現に対して、水墨画+音という新たな表現を構想。御殿山を散策するなかで着想した架空の風景画のなかに、踏切の音や子どもたちの声など街で耳にした「音」=オノマトペ(擬音語)を取り込み大作を制作した。
同センター内での展示に加え、近隣の御殿山渚商店会では、店で聴こえるオノマトペの立体作品を展示する。
今回、制作のご依頼をいただき大阪美術学校の創設者であり南画家である矢野橋村の作品に出会いました。南画というのは水墨の絵の中に詩と書が含まれていて、詩書画一致という不可避な要素があります。僕はそこに妙な突き当たりを感じ、そこから制作は始まりました。
八面の大作は心象風景になるだろうと早い段階で決心がついたので、リサーチは集中して行いました。御殿山から見下ろす街はコロナ禍での調査ということもあったのか、静かで落ち着いていて、敏感に私の耳に街の音だけを届けてくれていました。そこで「音」の表現は不可避なものになっていき、南画にあるような詩と書の表現に対して、「音」を画中に表現することを試みています。
何度か御殿山を訪れ、街の雰囲気に少しずつ愛着が湧いていきました。しかしそれと同時に絵の中に文字表現を完成させている矢野橋村の存在は大きくなっていきました。今回はそれと向き合うところからスタートしています。この私情の葛藤は仕上げた八面の大作の表現には重要な要素となっていますので、それを含めてご高覧いただければ幸いです。
―髙橋 良
アトリエ美術館 vol.25 髙橋良展「onomatopeia map」
会期:2021年11月8日(月)〜12月10日(金)
会場:御殿山生涯学習美術センターほか
時間:月〜土曜 9:00〜21:00、日曜・祝日 9:00〜17:00
休館:11月22日(月)
料金:入場無料
問合:050-7102-3135 info-gotenyama@hira-manatsuna.jp
*後日、アーティストトークの動画を公開予定。
枚方市御殿山町10-16