映画配給会社・東風の企画・運営のもと、2021年1月に行われた連続講座「現代アートハウス入門 ネオクラシックをめぐる七夜」の第2弾が、12月11日(土)〜17日(金)にかけ全国24劇場で開催。前回の18劇場から上映館が増え、大阪では再びシネ・ヌーヴォと第七藝術劇場が会場となる。
1970年代から今日まで、日本では“ミニシアター”の呼称で親しまれてきたアートハウス。世界中の映画作品と鑑賞者との出会いを生み出し、数々の作家やアーティストを育むビオトープの役割を担ってきた場だ。本講座では、その歴史を彩ってきた「ネオクラシック(新しい古典)」と呼びうる名画を上映し、気鋭の映画作家を講師に迎え中継でトークやレクチャーを展開。各作品の魅力をひもときながら、全国の参加者と質疑応答を交え、アートハウスについての知見を共有していく。
今回のラインナップは、詐欺で逮捕された青年の実話をもとに、再現映像とドキュメンタリーを織り交ぜて制作されたアッバス・キアロスタミの『クローズ・アップ』、アンデス世界の価値観に基づく独自の映画言語で、ジャン=リュック・ゴダールらに衝撃を与えたボリビア・ウカマウ集団の代表作、ホルヘ・サンヒネスの『鳥の歌』、聖書の訪問販売員の旅に密着したメイズルス兄弟による日本初公開作『セールスマン』など7作。すべて日替わりで、全館同日・同時刻に上映される。
講師は深田晃司や岨手由貴子、小田香、想田和弘、広瀬奈々子、小森はるか、三宅唱が務め、ゲストにも映画作家・脚本家の大江崇允や詩人・編集者の稲川方人、エディター・ライターの月永理絵など多彩な面々が控える。全国のアートハウスが同時に開かれ、その場の未来をつくり手・鑑賞者がともに思考する盛り上がりを体感したい。
講師コメント
アッバス・キアロスタミとモフセン・マフマルバフの傑作群は、まだ二十歳前後であった私をイラン映画に心酔させた。『クローズ・アップ』は中でも特に熱狂した一作で、映画の底なしの可能性をこの作品で感じて欲しい。
深田晃司(映画監督)「クラシック映画」と聞くと身構えてしまう人もいるかもしれませんが、それらは製作されてから何十年も、多くの人を魅了してきました。そんな映画の抗えない魅力を、一緒に反芻していく時間になればと思っています。
岨手由貴子(映画監督)アートハウスはあやしげな場所に見えることもあるかもしれませんが、それ以上に妖しい映画がかかっています。
鑑賞後はより健全に、より不健全に、もしくはその両方になるかもしれません。
あの映画のここは好きであそこは苦手など、誰かに言いたくなって、伝わらなくて、その体験まるごと、心のどこかに残り発酵していく映画がかかっています。
小田香(映画作家)真っ白で空虚なスクリーンなのに、いや、真っ白で空虚なスクリーンだからこそ、いったい何が映し出されるのか、無限の可能性が存在しているんですね。なんだか不思議じゃないですか?!
想田和弘(映画作家)ああ、そうか、自分はこの世界に対して、「ちょっと待った」を言いたかったのだと気づかされる映画がある。新しいものの見方を発見し、立ち止まって何度も考え、答えのない旅に出る。いい映画には共感や同調よりも、もっと豊かで驚きに満ちたものが、色褪せることなくたくさん詰まっている。
広瀬奈々子(映画監督)学生の頃に偶然観ていた映画が、数年経ってから、自分にとっての大切な一本だったと気付くことが増えました。
途切れ途切れに蘇ってくる場面は、あの時わからなかった経験も、大事なものだと教えてくれました。
小森はるか(映像作家)「人生は短すぎる」「だからこそ楽しまないと」いつどこでなぜその言葉が発せられるのか。私はその場面においてなにを見ていただろう?
三宅唱(映画監督)(公式Webサイトより引用)
連続講座「現代アートハウス入門 ネオクラシックをめぐる七夜 vol.2」
期間:2021年12月11日(土)〜17日(金)
プログラム:
連日19:00開映12月11日(土)
アッバス・キアロスタミ『クローズ・アップ』
講師 深田晃司(映画監督)
*レクチャー12月12日(日)
アキ・カウリスマキ『マッチ工場の少女』
講師 岨手由貴子(映画監督) ゲスト 大江崇允(映画作家/脚本家)
*トーク12月13日(月)
ホルヘ・サンヒネス『鳥の歌』
講師 小田香(映画作家) ゲスト 太田昌国(シネマテーク・インディアス)
*トーク12月14日(火)
アルバート・メイズルス、デヴィッド・メイズルス、シャーロット・ズワーリン『セールスマン』
講師 想田和宏(映画作家)
*レクチャー12月15日(水)
ルイス・ブニュエル『ビリディアナ』
講師 広瀬奈々子(映画監督) ゲスト 稲川方人(詩人/編集者)
*トーク12月16日(木)
ジャン・ルーシュ、エドガール・モラン『ある夏の記録』
講師 小森はるか(映像作家) ゲスト 月永理絵(エディター/ライター)
*トーク12月17日(金)
ロベルト・ロッセリーニ『イタリア旅行』
講師 三宅唱(映画監督) ゲスト 大川景子(映画編集)
*トーク会場:シネ・ヌーヴォ、第七藝術劇場(大阪)
料金:30歳以下1,200円、31歳以上1,800円
問合:info@tongpoo-films.jp(東風)
*詳細は公式Webサイトを参照
大阪市西区九条1-20-24
大阪市淀川区十三本町1-7-27
サンポードシティ6F