グラフィックデザインをベースとしながら文化人類学的アプローチで活動する阿部航太が監督・撮影・編集した作品 『街は誰のもの?』が、十三のシアターセブンにて上映される。
阿部は1986年生まれ、埼玉県出身。2018年10月から2019年3月までブラジル・サンパウロに滞在し、現地のストリートカルチャーに関する複数のプロジェクトを実施した。その体験をもとに本作の元となる『グラフィテイロス』を2019年に製作し、人類学者、建築史家、グラフィティライターなどをゲストに招いた自主上映を各地で開催(大阪では緑地公園のblackbird booksにて上映)。2021年に、より広い視点で都市を捉えなおし、スケーターやカーニバル、デモンストレーションなどの約50分の新たな映像を加え編集し直したのが本作である。
大量のグラフィティが街中にあふれるブラジル。映像では、サンパウロなどブラジル4都市で阿部が撮影した街の風景、その街で活動するグラフィテイロ(グラフィティアーティストの現地での呼称)たちのインタビューが紡がれていく。イリーガルな破壊行為と考えられがちなグラフィティだが、描いているグラフィテイロたちの発言からは、自らが街の風景をつくり出すのだという能動的なアプローチが感じられる。
グラフィティと同じく、スケーターがいる風景もブラジルの街では日常的だ。インタビューからは、スケートボードが彼らのアイデンティティ形成において非常に重要な要素であることが伝わってくる。そしてスケートパークだけではなく広場などの公共空間も自らのスペースとして使いこなし、仲間と出会い共有する大切な場所として守り続けており、公共のルールに縛られることなく自分の街のあり方に自発的に関わっていく姿勢が印象に残る。
街のあり方を行政やディベロッパーが決め、市民は定められた規範に従って行動する日本の街とは対照的な景色がそこにある。「私がブラジルで見てきた風景には、私たちの諦めを砕き、私たちが街と改めて繋がるためのヒントが埋め込まれているのは確かです。」と語る阿部。そのヒントをぜひ劇場で体感したい。
なお、シアターセブンでの上映と同時期に、京都みなみ会館でも上映が予定されており、両会場にて3名の異なる分野のゲストを招いたアフタートークが開催される。
期間:2022年2月12日(土)〜25日(金)[予定]
会場:シアターセブン
アフタートーク
2月12日(土)16:20〜の回終了後 登壇:川瀬慈(人類学者)・阿部航太(本作監督)
2月13日(日)16:20〜の回終了後 登壇:原田祐馬(デザイナー)・阿部航太(本作監督)*京都での上映予定
期間:2月11日(金・祝)〜24日(木)
会場:京都みなみ会館
2月11日(金・祝) 17:30〜の回終了後にアフタートークあり。登壇:家成俊勝(建築家)・阿部航太(本作監督)。監督・撮影・編集:阿部航太
出演:エニーボ / チアゴ・アルヴィン / オドルス / 中川敦夫 / ピア
整音:鈴木万里
翻訳協力:ペドロ・モレイラ / 谷口康史 / 都留ドゥヴォー恵美里 / ジョアン・ペスタナ / 加々美エレーナ
配給・制作・宣伝:Trash Talk Club
日本 | 2021年 | 98分
大阪市淀川区十三本町1-7-27
サンポードシティ5F