茨木市で毎年実施されている、アートを活用したまちづくり推進事業「HUB-IBARAKI ART PROJECT」。2022年度は作家公募の結果、東京在住の演出家・民俗芸能アーカイバーの武田力が選出された。4〜9月のプロジェクト期間中、武田の作品《教科書カフェ》を、茨木市内各所で展開する。
武田は1983年熊本県生まれ。現在東京都在住。
立教大学で初等教育学を学び、幼稚園勤務を経て、演劇カンパニー・チェルフィッチュに俳優として参加した。欧米を中心に活動するが、東日本大震災を機に演出家に転身。「警察からの指導」「たこ焼き」「小学校の教科書」など日常に近い物事を素材とし、観客とともに現代を思索する作品を展開している。並行して、演劇の手法を用いた過疎集落における民俗芸能の復活/継承も各地で手がける。
今回発表する《教科書カフェ》は、戦後以降の小学校の教科書を集め一般に公開する、場としての作品。2019年に「奈良・町家の芸術祭はならぁと2019」で初めて発表したフォーマットをもとに、茨木のまちの性質に沿った活動プロセスを検討し、作品発表とそのためのプログラムを実施する。
具体的には、茨木市民から小学校の教科書を募集し、集まった教科書を乗せて移動する移動式書架を制作。7〜9月に茨木市内の複数の場所を巡り《教科書カフェ》を開いて、茨木のあらゆる世代の人々が参加し教科書を自由に閲覧できる環境と、教育を起点に広く社会などについて対話ができる機会を創出する。
茨木市の市街地は、戦後20世紀は京阪神のベッドタウンとして、21世紀に入ると大学の新設と拡張によって、全国各地から人々が集まり、世代も出身地も異なる人々が多く行き交ってきた。一方で北部の山間地域は、豊かな自然が残り広大な農地が広がるなど、まちなかとは違った生活が営まれている。武田の作品が本プロジェクトにより市内のさまざまな地域をリンクさせ、教育とアートを起点に思考と対話を重ねることは、他者の違いに気づき、いまの茨木のまちを客観的に捉えるきっかけになるかもしれない。
小学校での教育は、多くの人がかつて経験したことかと思います。しかし、みなさんの教育体験を丁寧に紐解いていくと、それはひとり一人で随分と異なります。教育とは、人間が生きていく上での普遍的な営みであると同時に、これまでの歴史を背景とした環境や年代の価値観によって、つまりはその歴史を解釈する人間によって変化します。世代間や地域間などに生じている分断は、もしかしたら経験してきた教育観の違いなのかもしれません。
この《教科書カフェ》では、日本各地/各時代に誰か子どもが使っていた何百冊にも及ぶ教科書を自由に読み比べたり、このカフェを訪れた人たちが書き込んでいくノートから他世代や他地域の考え方の源泉を探ります。追憶に眠る「小学生のあなた」の視点から、それより過去の、そして現在の教育のあり方を感じ取ること。その思索は、日本が歴史や時代をどう解釈し、どういう国民を育てたいと意図してきたかをたどる旅でもあります。日本には国による教科書検定があり、それに合格しなければ小学校をはじめとした公的な教育機関で用いることはできないからです。
《教科書カフェ》では、そうした教科書を通じて教育を受けるのではなく、教科書を素材に自ら学び発見していくことで、他者の理解をはかります。その先に、近年よく耳にする「持続可能な未来」はあり得るのではないでしょうか? 「わたしたち」を持続させるのは国ではなく、ひとり一人であるあなた自身なのです。
武田 力
HUB-IBARAKI ART PROJECT 2022
武田 力《教科書カフェ》公開日:
【7月の公開日】
《教科書カフェ》お披露目&試験運転
日時:7月29日(金)10:00~17:00
会場:IBALAB@広場をスタートして、今後の公開場所を巡回《教科書カフェ》at 清溪公民館
日時:7月30日(土)13:00~17:00
会場:清溪公民館(茨木市泉原332-3)
ゲスト:黒田 健太(ダンサー)《教科書カフェ》at 石河公民館
日時:7月31日(日)13:00~17:00
会場:石河公民館(茨木市大岩347-1)【8月の公開日】
《教科書カフェ》at IBALAB@広場
日時:8月16日(火)17:00~21:00
会場:IBALAB@広場・芝生(茨木市駅前4-4-8)
ゲスト:池田 佳穂(インディペンデント・キュレーター)《教科書カフェ》at 忍頂寺スポーツ公園・竜王山荘
日時:8月17日(水)13:00~17:00、8月18日(木)7:00~10:00
会場:忍頂寺スポーツ公園・竜王山荘(茨木市忍頂寺1049)【宿泊プログラム】《教科書カフェ》合宿 at 忍頂寺スポーツ公園・竜王山荘
日程:8月17日(水)~18日(木)
会場:忍頂寺スポーツ公園・竜王山荘(茨木市忍頂寺1049)
*事前予約制/定員15名程度/宿泊にかかる費用のみ有料
詳細はこちら→https://hub-ibaraki-art.com/news/220817/【9月の公開日】
《教科書カフェ》at 石河公民館
日時:9月17日(土)13:00~17:00
会場|石河公民館(茨木市大岩347-1)《教科書カフェ》at IBALAB@広場
日時:9月18日(日)17:00~21:00
会場:IBALAB@広場・芝生(茨木市駅前4-4-8)《教科書カフェ》at IBALAB@広場
日時:9月19日(月・祝)17:00~21:00
会場:IBALAB@広場・芝生(茨木市駅前4-4-8)
ゲスト:はが みちこ(アートメディエーター、京都市立芸術大学芸術資源研究センター非常勤研究員)上記に加え、「教育」を起点に、広くものごとを考えるための対話、座談会、ワークショップも実施予定。
*会場および詳細は決まり次第公式サイトにて発表。
料金:参加無料(一部実費が必要なものもあり)
*特別な記載のないものは、参加申込不要。主催:茨木市、アートを活用したまちづくり推進事業「HUB IBARAKI ART」実行委員会
チーフディレクター:山中俊広 (インディペンデント・キュレーター)
ディレクター:山本正大(少年企画)問合:茨木市市民文化部文化振興課内 アートを活用したまちづくり推進事業「HUB-IBARAKI ART」実行委員会 072-620-1810 bunkashinkou@city.ibaraki.lg.jp