ドキュメンタリーという言葉を軸とした学びの場所「ドキュメンタリー大学HOEL」が、2022年10月1日(土)、2日(日)、15日(土)、29日(土)の全4日間、兵庫県加西市のギャラリー・Voidとその周辺地域にて開催される。
ドキュメンタリーは「事実の記録」だが、制作者によってとらえ方はさまざまで、その方法も多様だ。本イベントでは、映像、演劇、写真、詩の分野からそれぞれアーティストを招き、彼らが個々に発露する表現(吠えること=HOEL)の記録を体験できる機会を創出する。
10月1日(土)、2日(日)は、東京の演劇ユニット「ウンゲツィーファ」が公演『モノリス』を披露。まちに存在する人工物を、とあるSF作品に登場する石板状の物体になぞらえ、架空の時空間を体現する。また、パフォーミングアーツコレクティブ「バストリオ」と音楽家・松本一哉が、2016年から13都道府県にわたり、30回以上におよぶ公演を経てきた共同作品『黒と白と幽霊たち』を上演。文学作品や各地で採取した言葉、ニュース記事の文言などと、現在的に繰り広げられる身体・舞台表現、松本の演奏を掛け合わせ、空間に揺さぶりをかける。さらに、15日(土)には、大阪の詩人・辺口芳典が歩きながら詩や言葉を交わす朗読会を行い、29日(土)にはドキュメンタリー映画監督・満若勇咲による『私のはなし 部落のはなし』の上映会も。多角的なドキュメンタリーの実践に触れる本イベントを通じて、新たな視点を見出したい。
ウンゲツィーファ 演劇公演『モノリス』
「それは、ぽつねんと、そこに立っているのでしょうか」
舞台に一間ほどの高さのある板状の物体が配置されている。それの周りで3人の俳優が演劇を起こす。つまり、客席にいる我々からズレた空間や時間。そしてその場に居合わせなかったキャラクターが立ち現れる。虚で不確かな演劇という密度の中心にその物体だけが確かに立っている。ところでモノリスとは、とあるSF作品において、地球外知的生命体が人類の進化を促す為に用いた石板状の物体である。今作は、町にありふれたとある人工物をモノリスに喩えたところから始まった。感覚的なようで、人物たちの感情は一連のストーリーとして確かに繋がっているニュースタンダード会話劇。
バストリオ+松本一哉 演劇公演『黒と白と幽霊たち』
『黒と白と幽霊たち』はパフォーミング・アーツ・コレクティブ「バストリオ」と音楽家・松本一哉 が共同で制作したパフォーマンス作品です。2016年に東京・谷中にある宗林寺で初演して以来、全都道府県での上演を目標に、これまで13都道府県・30回におよぶ公演を行ってきました。
舞台に並ぶのは詩やインタビューで採取した言葉、宮沢賢治の『よだかの星』の一節、テロを伝えるニュース記事といった多様な言葉と、俳優の身体、舞台美術として扱われる光と影。さらに金沢出身の音楽家・打楽器奏者である松本一哉が即興的かつ緻密に生み出していく音楽が加わり、さまざまな要素によって空間を揺り動かしていきます。”ここ”と”どこか遠く”へと観客の思いと想像力を掻き立てる舞台作品です。
辺口芳典 ポエトリーリーディング「歩く朗読会」
「吠える」
研ぎ澄まして「聴く」ことも
吠えることただ「歩く」ことも
吠えることいったんそういうことを信じて
「歩く朗読会」をします私たちはボイド(3階)に集まります
ただ「歩く」前に
一編の詩を手渡して
詩について好きなことを言い合います最近どう?
みたいな話をするのもいい「歩く朗読会」は
そうやってはじまります途中「歩み」をとめて
詩を朗読する機会もつくりたいと思っていますたとえばジャンケンして
最後まで残った人が朗読するのもいいなあって思いがけず「読む」ことも
吠えることでは10月は加西で
満若勇咲 ドキュメンタリー映画『私のはなし 部落のはなし』上映会
「部落差別」は、いかにしてはじまったのか
なぜ私たちは、いまもそれを克服できずにいるのか?かつて日本には穢多・非人などと呼ばれる賤民が存在した。1871年(明治4年)の「解放令」によって賤民身分が廃止されて以降、かれらが集団的に住んでいた地域は「部落」と呼ばれるようになり、差別構造は残存した」。現在、法律や制度の上で「部落」や「部落民」というものは存在しない。しかし、いまなお少なからぬ日本人が根強い差別意識を抱えている。なぜ、ありえないはずのものが、ありつづけるのか?この差別は、いかにしてはじまったのか?本作は、その起源と変遷から近年の「鳥取ループ裁判」まで、堆積した差別の歴史と複雑に絡み合ったコンテクストを多彩なアプローチでときほぐし、見えづらい差別の構造を鮮やかに描きだす。
監督は、屠場とそこで働く人々を写した『にくのひと』(2007年)が各地で上映され好評を博すも、劇場公開を断念せざるをえなかった経験を持つ満若勇咲。あれから十数年、プロデューサーに『なぜ君は総理大臣になれないのか』『香川1区』の大島新、音楽に世界を舞台に活動を続けるMONOを迎え、文字通り〈空前絶後〉のドキュメンタリー映画をつくりあげた。
(Webサイトより)
会期:2022年10月1日(土)、2日(日)、15日(土)、29日(土)
会場:Void
問合:voidkasai@gmail.com
プログラム:
ウンゲツィーファ 演劇公演『モノリス』
日時:2022年10月1日(土)11:00、16:00
2022年10月2日(日)14:00、18:00(アフタートークあり)
料金:3,000円/セット割5,500円(ウンゲツィーファ、バストリオ+松本一哉の各公演1回ずつ)
出演:黒澤多生、豊島晴香、藤家矢麻刀、一野篤
脚本演出:本橋龍
衣装:村上太郎
映像:菅原広司
写真:上原愛
宣伝美術:一野篤
イラスト:山形育弘
制作:阿部りん
予約:Void予約フォーム
バストリオ+松本一哉 演劇公演『黒と白と幽霊たち』
日時:2022年10月1日(土)14:00、18:00(アフタートークあり)
2022年10月2日(日)11:00、16:00
料金:3,000円/セット割 5,500円(ウンゲツィーファ、バストリオ+松本一哉の各公演1回ずつ)
作・演出・出演:今野裕一郎
演奏:松本一哉
出演:坂藤加菜 橋本和加子 菊沢将憲(声)
美術:黒木麻衣
予約:Void予約フォーム
辺口芳典 ポエトリーリーディング「歩く朗読会」
日時:2022年10月15日(土)第1部10:00/第2部15:00(各約2時間)
参加費:各2,000円
会場:Voidおよび周辺地域
定員:10名程度
予約:voidkasai@gmail.com
満若勇咲 ドキュメンタリー映画『私のはなし 部落のはなし』上映会
日時:2022年10月29日(土)12:00開場 13:00上映(上映時間3時間25分)
登場人物:黒川みどり、高橋定、高橋のぶ子、中島威、松村元樹、宮部龍彦、山内政夫
参加費:2,500円
定員:30名
予約:voidkasai@gmail.com