大阪中之島美術館と関西・大阪21世紀協会の共催による「Osaka Directory supported by RICHARD MILLE」は、関西ゆかりの若手アーティストを紹介するプログラム。第3期として、2023年2月26日(日)まで遠藤薫の個展が開催中だ。
大阪で生まれた遠藤は、沖縄県立芸術大学工芸専攻染織科を卒業。その後、志村ふくみ(重要無形文化財「紬織」保持者)の主宰する芸術学校「アルスシムラ」にて、植物染料と工芸の基礎について学び直す。沖縄や東北、ベトナムなど、国内外で土地に根ざした工芸と歴史、生活と切り離せない政治の関係性をひもとき、現代美術の視座から工芸の本質を見つめることで制作活動を行っている。
遠藤は、布の特性である“使われ、損なわれ、修復される”過程の反復に表れた、戦争や労働、人々の生活の痕跡に注目する。「着られなくなった着物から落下傘(パラシュート)を織り上げる」「古い雑巾を縫い合わせ新しい雑巾にする」「戦前に生産された穴のある古布に蚕を放つことで修復を試みる」など、布のしなやかなつよさと同時に、染み込む歴史の暗い影をも立ち上げてきた。
現在展示中の石垣島で制作した丸木舟では、帆に沖縄の「芭蕉布」を用いている。芭蕉布とは米軍嘉手納基地で黙認されてきた耕作地に生える、糸芭蕉(バナナの一種)の繊維で織った布のこと。遠藤のまなざしを通して、基地の副産物から生まれる沖縄の民芸品と向き合えば、人々の記憶とそこから切り離せない政治や歴史的背景が見えてくることだろう。
Osaka Directory 3 supported by RICHARD MILLE 遠藤薫
会期:2023年1月20日(金)〜2月26日(日)
会場:大阪中之島美術館 2階多目的スペース
時間:10:00〜17:00
休館:月曜
料金:無料
問合:06-4301-7285(大阪市総合コールセンター)
大阪市北区中之島4-3-1