山中suplexが期間限定で運営している西大橋の別棟「MINE」にて、若手キュレーターを支援する「キュレータープログラム」第4弾として、京都のアートコレクティブ・レトロニムによるキュレーション展「ビジター・キュー 」が開催される。
レトロニムは、俳優の瀬戸沙門、陶芸を素材として扱う美術家の武内もも、演出家の野村眞人の3名で構成。「人とその周辺」にあるコンテンポラリーな物事や出来事をマテリアルに、それぞれの視点を通して生まれる面白がり方を、遊び心ある方法やオブジェクトによって共有することを目指している。
「見ること」が中心となって立ち上がる演劇性、をテーマとしている本展は、レトロニムが「演劇的フレーム」と呼ぶ視座をもとにキュレーションされた、美術家・演出家・俳優による作品展示と、レトロニムが配置する観客席によって構成される。
住居として使われてきた「MINE」のスペースが、展示空間であり、劇場であり、あるいはそのどちらでもない時に、干渉し合いながら混在する作品やパフォーマンス、配置される観客席が、どのような視点をつくり、どのような「観客/鑑賞者」を生み出すことができるのかを、実験的に検証する。
なお本展は、2022年12月からスタートした「MINE」の最後の展覧会となる。この1年間に山中suplexが打ち出してきた数々の企画を振り返りつつ、レトロニムの試みの行方を見届けたい。
ステートメント
都市や生活の中ですでに起こっている現象や経験している出来事を再び見直すことを通して、表現分野の垣根を越えた演劇の場について思考し、劇場内外で活動を行ってきたレトロニム。今回は、大阪・心斎橋にほど近い山中suplexの別棟 「MINE」(およびその周辺)を拠点に、「見ること」が中心となって立ち上がる演劇性をテーマとする2日間の企画展を開催します。
演劇では、それを構成する人の声や言葉や行為、もの、光や音の設えなど、一つ一つの関わりあいによって上演が立ち上がると同時に、観客はそれらを見ること、聞くことなどを通してさまざまな意味を目の前の出来事に宛てていきます。その中でも、特に「見ること」に焦点をあてると、対象と印象、現実と想像、景観と風景、わたしとあなた、などとのあいだにあって、観客によって確認され、寛容される距離は、重なりやズレとして認識し直されることとなります。この距離を誘発し、変化・伸縮を期待する観客の視線を、レトロニムでは「演劇的フレーム」と呼んでいます。
劇場から演劇を流出させ、舞台と客席という関係性の外に「演劇的フレーム」を開いていくことは、すでにある状況や環境のさなかに観客席を設置していくことだと言えるかもしれません。そして、「見る」という行為を実践することは、ときに私自身を超えて、他者の存在やその想像力に身を委ねることだと思います。
本展は、作品の輪郭を超え、見るひとそのものへの視線を含めた広範に渡る視野を持つ美術家・俳優・演出家の5名の方々にお声がけし、実現が叶いました。「MINE」というかつて住居だった空間では、美術家・俳優・演出家が「訪問者 / 観客」の存在をきっかけに分野の垣根を越えて話しあうプロセスを経て、美術家は俳優を前に観客を想像し、俳優は展示作品を前に観客を演じ、演出家は観客の視線の先を俳優に限定せず、そこにあるものから演劇を始めることを試みます。三者のこの振幅が、そこに訪れる者の視線や距離の変化をも誘発する場となることだろうと思います。
本展をきっかけに、美術や演劇の作品を見ることはもちろん、生活の中でのさまざまな場面を行き交うときにも選択可能な遊び心ある一つの視点として、「演劇的フレーム」を開示することができたら幸いです。
レトロニム
山中suplexの別棟「MINE」キュレータープログラムVol.4
「ビジター・キュー」会期: 2023年 11月11日(土)、12日(日)
会場:山中suplexの別棟「MINE」
時間:13:00~19:00
アーティスト:黒木結、 斎藤英理 、福井裕孝、宮崎竜成 、米川幸リオン
※アーティストのプロフィールはこちら料金 : 500円 ※予約不要・入退室自由
関連イベント
ワークショップ「都市にとっての他者になる in 心斎橋」
持ち運び可能なディスプレイに「ト書(=行為の指示書き)」を表示させながら心斎橋を巡り、街や路上を行き交う人に紛れて行う演劇のワークショップであり、ただ観光客でもなく、ただ住人でもなく、ただ通行者でもなく、街の想定から外れてみるワークショップ。
日時:11月11日(土)、12日(日) 11:00~13:00
受付会場:山中suplexの別棟 「MINE」4F
定員:各回10名
料金:500円
※当日現金精算/ワークショップ当日に限り展示入場料無料
※申込はこちらから
大阪市西区新町2-9-4
NANEI 新町 bld. GALLERY 02 街区