神戸を拠点に活動した、関西の戦後美術を代表する作家のひとり、木下佳通代。日本国内の美術館で初となる個展「没後30年 木下佳通代」が、大阪中之島美術館で2024年5月25日(土)からスタートする。
木下佳通代は1939年神戸市に生まれ、1958年に京都市立美術大学(現・京都市立芸術大学)に入学。卒業後は美術教師を務めながら、神戸在住の美術家によって結成された前衛美術の集団「グループ〈位〉」と活動をともにし、「存在とは何か」をテーマに作家活動を本格化した。1970年代に入ると写真を用いた作品を手がけるようになり、京都、東京、神戸のギャラリーで定期的に個展を開催、1977年には第13回現代日本美術展兵庫県立近代美術館賞を受賞する。
また、1981年に彫刻家・植松奎二の紹介によりハイデルベルク・クンストフェライン(ドイツ)で個展を開催し、ヨーロッパでも高い評価を獲得。翌1982年には第11回ブルーメール賞美術部門を受賞した。その後、これまでの作風から離れ、抽象絵画の制作を開始。力強いストロークの幅広い筆致や描いた部分の拭き取りなど、作風はたびたび変化を見せた。しかし、今後に期待を寄せられた木下の活動は、1990年にがんの宣告を受け変化していく。病魔にむしばまれながらも意欲的に制作を続けたが、1994年に55歳の若さで逝去した。
約30年間の作家活動で制作されたとされる1200点以上の作品は、関西各地の美術館などにコレクションされている。2015年に、「来たるべき新しい世界のために:1968年から1979年における日本の写真と美術の実験」 展(ヒューストン美術館ほか)に出品されたことを契機に、海外でも再び注目を浴びはじめた。
今回は、国内各地の美術館で多数所蔵される木下の作品を厳選した過去最大規模の個展となり、初期作から代表作、絶筆に至るまでの作品120点を一堂に紹介する。没後30年を経た今、作家の軌跡を概観できる貴重な機会となるだろう。
作家略歴
木下佳通代(きのした・かずよ)
1939年 神戸市長田区生まれ。
1958年 京都市立美術大学(現 京都市立芸術大学)に入学し黒田重太郎や須田国太郎に師事。
1962年 大学卒業後、神戸市立丸山中学校、親和学園などで美術教師を務める。
1965年ごろ 河口龍夫、奥田善巳らのグループ〈位〉と共に活動する。
1970年代前半 ギャラリー16(京都)、村松画廊(東京)で定期的に個展を開催した。
1977年 第13回現代日本美術展兵庫県立近代美術館賞を受賞。
1981年 彫刻家・植松奎二の紹介でハイデルベルク・クンストフェライン(ドイツ)で個展を開催。
1982年 第11回ブルーメール賞 美術部門を受賞。突如としてこれまでの作風を捨て、抽象絵画の制作を開始。
1990年 がんの宣告を受けて闘病生活に入る。治療法を求めてロサンゼルスを度々訪問。現地でも制作を行った。
1994年 神戸にて55歳で没する。
会期:2024年5月25日(土)~8月18日(日)
会場:大阪中之島美術館5階展示室
時間:10:00〜17:00(入場は16:30まで)
休館・月曜 ※7月15日(月・祝)、8月12日(月・休)は開館
観覧料:一般1,600円、高大生1,000円、中学生以下無料
関連イベント
記念講演「カズさんのこと―木下佳通代という芸術家」
日時:6月22日(土)14:00~15:30(開場13:30)
登壇:植松奎二(美術家)講演+上映「再考・再生『ヴィデオ / 京都 / 1974』」
日時:7月20日(土)14:00~15:30予定(開場13:30)
登壇者:今井祝雄(美術家)ほか※上記2件共通
会場:大阪中之島美術館1階ホール
定員:150名 ※申込不要
料金:聴講無料(ただし本展の観覧券[半券可]が必要)担当学芸員によるギャラリートーク
日時:6月1日(土)、6月19日(水)、7月6日(土)、7月17日(水)、8月3日(土)、8月14日(水) いずれも11:00~12:00
会場:大阪中之島美術館5階展示室
定員:30名
料金:参加無料(ただし当日入場するための観覧券が必要)
※事前申込制、申込フォームは公式サイト参照主催:大阪中之島美術館
問合:06-4301-7285(大阪市総合コールセンター/年中無休8:00~21:00)
⼤阪市北区中之島4-3-1