大阪芸術大学では、収集した芸術資料をはじめとする所蔵作品を広く社会に公開することを目的として、2002年に「大阪芸術大学博物館」を学内に開設。19世紀末の初期モデルから20世紀中葉までの変遷を概観できる蓄音機コレクションや、世界に4セットしかない作家自選によるアンリ・カルティエ=ブレッソン写真コレクション、20世紀グラフィックデザインのひとつの大きな流れであるスイス派の作品など、4000点を超える作品を、年2〜3回開催する所蔵品展にて展示している。
2024年5月30日からは、アンリ・カルティエ=ブレッソンの作品を取り上げる展覧会が、大阪芸術大学 芸術情報センターにて開催される。
展覧会概要
アンリ・カルティエ=ブレッソン(Henri Cartier-Bresson, 1908-2005)は、第二次世界大戦の終戦直後に結成された写真家集団「マグナム」の創設メンバーとして、世界各国の歴史的瞬間を撮り続けたルポルタージュ・フォト(現地報道写真)と、美術や絵画に親しんだ思春期の経験が起点となり、論理的で美しい構図を強く意識した表現でも知られている写真家です。これらから彼独自の写真表現への評価が形成され、20世紀を代表する写真家のひとりとして位置付けられています。
カルティエ=ブレッソンは、世界各国に赴き、歴史が動く瞬間に数多く立ち会ってきましたが、彼が主に写真に収めたものはその場に集う民衆の姿でした。大きな歴史的事象が起きる時、それを主導する人物や組織だけでなく、その事象に左右される大多数の民衆が存在すること。そして、彼らひとりひとりにも異なる生活や人生があること。カルティエ=ブレッソンがカメラを介してまなざしを向けていたのは、写真に写る情景の背後にある、これら多くの小さなものごとだったのではないでしょうか。さらにカルティエ=ブレッソンは、街や自然の風景のみを捉えた写真も多数残しており、これらからは絵画的なイメージを想起させられるだけでなく、随所に垣間見られる人々の営みの痕跡やその気配に、彼の意図的なまなざしを感じさせられます。
いま私たちが生きる世界は、コロナ禍で日々の活動が大きく制限され、街中から人々の喧騒が消えた数年間を経て、国内外で社会情勢が目まぐるしく変動し始めています。そんないまの状況は、カルティエ=ブレッソンが現地に赴いて撮り続けてきた、20世紀の世界の激動期にも重なるように感じます。本展では、大阪芸術大学が所蔵する「アンリ・カルティエ=ブレッソン自選コレクション」411点より、群衆を捉えた作品と、その対極になる人々が不在の作品をセレクトし、1926年から89年までの写真作品100点を公開します。カルティエ=ブレッソンが限られた画面の向こう側に見ていたものを想像しながら、私たちのいまの社会の有り様を各々が見つめ直す機会にもなれば幸いです。
令和6年度 大阪芸術大学所蔵品展
「群衆|不在 アンリ・カルティエ=ブレッソン―揺れ動く世界へのまなざし」会期:2024年5月30日(木)~6月13日(木)
会場:大阪芸術大学 芸術情報センター 展示ホール・地下展示ケース
時間:11:00~18:00 ※6月9日(日)は10:00~17:00
休館:6月2日(日)
料金:入場無料
問合:大阪芸術大学博物館 museum@osaka-geidai.ac.jp
南河内郡河南町東山469
※アクセス:近鉄南大阪線「大阪阿部野橋」駅より「河内長野」行き準急に乗車、「喜志」駅下車。 「喜志」駅前より大阪芸術大学スクールバス(随時運行)、または4市町村コミバス(「近つ飛鳥博物館前」行きに乗車、「東山」停留所下車)を利用