企画主旨(主催者より)
私は、研究に入る前には様々な実験をします。そして実験の中で面白い発見があれば、それを研究化してみます。それらは、いい研究に発展することもあれば、そうでもないこともあります。
実験をしている時は知的好奇心が活発で、どうなるの?何が起こるの?それを確かめたい! という気持ちになります。この展示では、現在進行しているCMF(Color/Material/Finish = 色/素材/仕上)の実験を共有します。実験のワクワクをみなさんと共有できれば嬉しいです。
この実験には、NISSHA Design & CMFのメンバーも御参加頂き、或ると在るの実験を基にした彼らならではの実験を行って頂いています。また実験展の後には、FabCafe Kyotoの方々と或ると在るの研究展を計画しています。合わせて楽しんで頂ければ幸いです。
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実験の内容
この実験では、デジタルだからできる事と手作業だからできる事、それらを行き来しながら表現の可能性を探る実験をしています。例えば紙をぐしゃっと丸めた形は、かなり高度なデジタルスキルを有する人で無ければ3Dモデルで制作し、それをプリントして実際に存在させることはできません。しかし手作業なら、多くの人が一瞬で作って実際に存在させられます。
手作業だから生み出せる形をCMFとして活用し、デジタルデータに変換して、デジタル上で花瓶にします。そして、その花瓶を3Dプリンターで出力し、手作業で仕上げます。
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今回の実験、意味は手法の方にあります。アウトプットは単なる結果であり、実験の可能性を計るものです。しかし、結果がとても魅力的で、我々が持つ存在への関心を惹きつける物が生まれてきました。
この実験を通して“在る”ことの影響力を考える頻度が増えました。プロダクトデザインに携わっていると、明確な機能を問われることが殆どです。そういう道具を私も沢山デザインしてきました。でも、在る事が既に我々に影響力を持ち、それが機能と言える道具の可能性がこの実験結果にはあります。
日本は、存在に意味付けをし、意味から文脈を作り、暮らしと結びつけて、生きる時間を豊かにしてきました。それとは反対に、意味付けをしなくても、存在に対して言葉にできない気配を感じる感性を大切にして文化を醸成してきました。
反対の事のようでこれらが表裏一体なのは、存在への敬意がベースにあるからです。現代社会がバランスを崩しているのは、この存在への敬意が薄れて来ているからのように思えます。 存在への敬意は、相手が道具でも、生物でも、人でも大きな差は無いと思います。それは存在している事実は変わらないからであり、存在に関する感性を我々が維持できているかの問いだからです。
存在への感性を失い、自分以外の存在を軽視し、摩擦を生み、生きづらい社会にしてしまわないよう、私たちが暮らしの中で育まねばならない感性があります。
道具の研究を通して、その感性を育む何かを道具化することが、私の研究の目標なのです。大江 孝明(京都芸術大学 プロダクトデザイン学科 教授)
デザインの実験展 | 或ると在る / alu & aru design lab.
デジタルワークと手仕事を行き来することで生まれるCMFの実験会期:2024年9月17日(火)〜28日(土)
会場:FabCafe Kyoto (MTRL KYOTO)
時間:11:00〜19:00 ※FabCafe Kyotoの営業日時に準じる
定休:日・月曜
料金:観覧無料 ※座席を使用する場合はカフェメニューを注文
※9月27日(金)には、大江とNISSHAのトークイベントを開催。詳細はこちら
問合:info_fabcafe-kyoto@loftwork.com (担当:木下)
京都市下京区本塩竈町554