「アートとともにありのままに生きる」をキーワードに、自然の循環が人々にもたらすことを芸術分野から研究するオープンアートラボとして、2024年7月に大阪市西成区にオープンした「SUCHSIZE(サッチサイズ)」。
季節毎に展覧会を開催する交流の場としてオープンしているが、2回目となる2024秋展「Common trees」が、2024年10月4日から開催される。
本展では、ルーチョ・フォンタナの「空間概念」に注目し、「日常で見過ごされている自然物や自然現象を再構築し、空間を描き出す」2人のアーティスト、松延総司と上野友幸を紹介する。
ステートメント
キャンバスに切り込みを入れるなどの「空間概念シリーズ」で知られている20世紀を代表するアーティストのルーチョ・フォンタナ。彼は、「私は絵画を制作しようと思っているのではない。私は、それが絵画の閉鎖された平面をこえて無限に拡がるよう、空間をあけ、芸術に新しい次元を生みだし、宇宙に結びつくことを願っている」と、1986年のフォンタナ展図録で語っています。また同シリーズの《自然の空間概念》では、惑星ともいえるような卵形のブロンズ彫刻に切れ目や穴をあけ、生命について言及するなど、フォンタナは日常の中にある物をモチーフにした作品においても、新たな次元を開こうと試み、生命/自然/宇宙へとアプローチしました。
秋展では、このようなフォンタナの考えに着目し、「日常の切れ目から自然を取り込む空間芸術」の視点から2人のアーティスト、松延総司と上野友幸を紹介します。松延の《Direction of Materials》は、木の年輪模様を単純な図案として平面的に抽象化し、紙に印刷、さらに箱状の立方体に組み立てた作品です。木材という材料の再構築を通して、自然物と工業品の狭間にある次元を、展示空間にひらきます。
また上野の《Forest》シリーズは、土地で収集されたY字の小枝によって作られた作品です。接合された小枝が一枚のカーテンのように空間を分けつつも、枝の隙間から流れる空気や木漏れ日のような光影が日常に流れこむ自然現象を可視化し、私たちの視野を広げてくれます。日常で見過ごされている自然物や自然現象を再構築し、空間を描き出す作品群。彼らはフォンタナの時代に主張されていたような個性の強いアーティスティックな表現を、シンプルに素材を洗練させた―誰にでも再現可能、だからこそ鑑賞者と共有可能な―ものに昇華させ、「空間概念」を軽やかに現代にシンクロさせています。彼らの作品が日常空間の中に置かれるとき、一見するとそれらは生活に馴染む自然物やインテリアとなりえるかもしれません。しかし、その作品は常に「空間の切れ目」としてそこに在り、ふとした瞬間に私たちを外の世界へと誘います。
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松延 総司 | Soshi Matsunobe
1988年熊本県生まれ、2008年京都嵯峨芸術大学短期大学部卒業。2023年ポーラ美術振興財団在外研修員としてフランスにて研修。現在、滋賀県在住。「線」「影」「無意識」「地」など捉えどころのない事物を主題とし、それらがどのように人々に知覚され、存在しているのか、その法則や特性を抽出/再構築するような作品を制作している。近年の主な展覧会に、「not a house」(MBL Architectes、パリ、2024年)、「VOCA展2024 現代美術の展望」(上野の森美術館、東京、2024年)などがある。上野友幸 | Tomoyuki Ueno
東京芸術大学大学院を修了後、2009年からベルリンと神戸を拠点に国内外で活動。DAAD(ドイツ学術交流会)奨学生、ポーラ美術振興財団在外研修員としてベルリン芸術大学を修了し、2017年よりクンストラーハウス・ベタニエンにて一年間のレジデンスに参加。2018年にはモスクワ・ビエンナーレ・フォー・ヤングアートに、2023年にはVOCA展に選出され、2024年はギャラリー住吉橋(堺)とGalerie Martin Mertens (ベルリン)で個展を開催している。
SUCHSIZE 2024 autumn「Common trees」
会期:2024年10月4日(金)〜11月30日(土)のうちの金・土曜
会場:SUCHSIZE
時間:13:00〜18:00
出展作家:松延総司、上野友幸
料金:入場無料
主催:SUCHSIZE
松延 総司トークイベント
日時:11月30日(土)16:00〜17:30
会場:SUCHSIZE
料金:入場無料(ドネーション制) ※先着15名
大阪市西成区山王町1-6-20