展覧会ステートメント
フィクションとノンフィクションの間で生きている私たち。
想像の世界は、現実の世界に支えられ、そして、現実の世界もまた、想像の世界に支えられているのではないでしょうか。
実際の記憶がつぎはぎされた想像の世界は、多くのメタファーを持って私たちの日常に潜む意味を教えてくれる。
私たちの日常というものは、こんなフィクションとノンフィクションの入り混じった境界線のわからない物語にあふれ、そこで紡がれる記憶が未来につながっているのかもしれません。
中畑と平尾のアウトプットには、いずれも漫画というメディアが関係してきます。中畑は、想像のストーリーが元に、平尾は、目の前に存在する日常のストーリーが元になって作品制作に活かされています。
中畑の自宅には、彼が頭の空想世界の中で思い描いたキャラクターが描かれた大量のドローイング帳が山積みにされていました。彼の作品は、10年以上にも及ぶキャラクターのドローイングが元になっています。
そのキャラクターたちは、彼の頭の中からドローイングノートの紙の上に生み落とされます。そして、2次元のそれらは、彼の手で掘り出されて3次元の立体として、ストーリーと躍動感を纏って立ち現れます。平尾未来は、難聴の母と過ごしてきました。そんな身体的ハンデがある人との向き合いを通して見える彼女の日常は、ユーモラスかつ社会的な目線にあふれています。
そんな日常から着想を得て描かれる彼女の作品は、鑑賞者に日常を鮮やかで豊かな視点で見ることの喜びや面白さを与えてくれます。
1986年 福岡県生まれ
2012年 東京造形大学彫刻 卒業
2014年 多摩美術大学大学院彫刻 修了
中畑は、フィクションという手段を用いて中庸(=ちょうどいい)を実現しようとしている。
自身が日記のように綴っている言葉やドローイングを再構成することで、人間らしさ溢れる想像の世界を描き出し
そこに登場する人物を木彫によって身体化することを通して、現実の世界に立ち上げる。
このように木彫という方法を用いて、フィクションの世界と実世界とを繋ぎ合わせることで、極端に走りがちな 現代社会の中で失われていく人間らしさのありかとともに常に変化する時代の中での「ちょうどいい」を模索している。
平尾 未来/Hirao Mirai
1996年東京生まれ。多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業。
埼玉を拠点に活動。
「日常」から着想を得た作品を中心に制作活動中。
モチーフは具体的だったり、はたまた抽象的だったり、さまざま。
絵の具やオイルパステルを中心とした絵画で表現することもあれば、自身の生活を漫画にすることもある。
モチーフ、表現方法に関わらず、自身の視点を通して見る日々の何気ない瞬間を切り取り、そこから生まれた感情、考え、思いを表現したい。
2022年からは障害者福祉の現場で働き始めた。
個性豊かな利用者さんとの日常、また立場に関わらずお互いの個性を認め合う温かな現場の雰囲気も、作品に取り入れることができないか模索している。
2024年の夏より、親元を離れ人生初の一人暮らしを始めた。
一人で生活することの楽しさと退屈さを噛みしめながらも制作を続けていくと、作品との距離が縮まり、今は共に生活をしているような気持ちになっている。
そうした、いくつかの始まりを通して変化した自身とその表現を本展示で感じていただけたら幸いです。
Group Exhibition「⽣まれることと⼀⼈歩きすること」
出展作家:中畑良孝、平尾未来会期:2025年1⽉11⽇(⼟)〜 2⽉9⽇(⽇)
会場:Marco Gallery 1F
時間:13:00〜18:00
定休:⽉・⽕曜、祝日 ※⽔曜はアポイントメント制
大阪市中央区南船場1-12-25
竹本ビル 1F